衝撃の事実
ここから泉まで1kmちょっと。
周辺の地形を把握する傍ら、雑談で暇を潰す。
「それで、肝心の魔力は強化できたのか?」
「もちろんだ。ゾンビ単体から得られる魔力は然程でもないが、数で稼いでいる感じだな」
「へぇ~、人間の俺にはよく分かんねぇけど、皆が強くなってるならOKかな」
「何を言う。戦闘に参加した者は皆、活躍に応じて魔力が増加している。それは人間であっても同じだ」
「俺も? いやいや、お前みたいに活躍できる気がしねーよ」
「自分の才能という物は、往々にして気づかないこともある」
才能ねぇ。
喧嘩の才能ってことか?
「ロクなもんじゃねぇや」
吐き捨てるように呟いた言葉は虚空に放たれ、点在する廃墟の隙間風が運んでいく。
考えてみれば、魔界の方が性に合っていると言えなくもない。
「天涯、泉が見えてきたぞ」
「あ、あぁ」
気の抜けた返事で答えた後、ラケルは水浴びをすると言って、服を脱ぎ始めたのだが――。
「俺も軽く汗を流……流して……お、おい。おいおいおいおい、待て待て待て待てぇい!!」
「どうした? お前も少なからず返り血を浴びている。この機会に洗い流しておけ」
「お……前、お前、女だったのか!?」
ラケルは裸を見られているにも関わらず、恥ずかしがったり隠すことは一切せず、普段の会話みたいに平然としている。
そこまで堂々とされると、逆にこっちが恥ずかしくなって目を背けてしまう。
「それが何か? 驚くことではないだろう」
「驚きしかねぇよ! 今まで散々イケメンとか、女子にモテるとか言ってきたのに、何で黙ってたんだ!?」
「私は気にしていないが?」
「俺が気にすんだよ!」
間違いない。
小さいが、確かにある。
魔界の女は肌を見られても気にしないのか?
いや、エルーは視線を向けられただけで隠していた。
そうなるとラケルが特別の特級で、特殊な考えの持ち主なのだろう。
「い、いいか。まずは早く体を洗って、すぐに服を着てくれ」
「お前は水浴びをしないのか?」
「あと! 俺はあとで良いから!」
駄目だ、まずは落ち着こう。
ラケルの水浴びが済むまで廃墟の探索をするが、全く身が入らない。
同じ場所をグルグル回り、自分が口にした発言を振り返る。
「イケメンとかモテモテとか……それに、女の好みまで聞いちまった! ファム先生の唇が焼きたてのマシュマロ級だったとか、連れションに誘ったりしたんだったああああ!」
思い返してみれば、トラウマレベルの黒歴史発言が津波のごとく押し寄せる。
初めての友達ということで、ちょっとだけテンション高めだったのも、事態の悪化に拍車をかけた。
せめて女だと知っていれば、もう少し発言に気をつけたのに……。
「なんだよ、なんなんだよ! んもぉぉぉぉおおおおん!」
「待たせたな」
「んもぁああ!」
背後から突然話しかけられ、驚きのあまり廃墟の中を転げ回った。
本当、今日の俺はアホみたいだ。
「ところで水浴びをしている間、このような物を見つけたのだが」
「え、あ、何? これって――女物の下着じゃん。別に珍しくもないだろ?」
「下着? 人間の防具か?」
マジかよ……。
そういえば魔界では人間の道具に関する知識が乏しく、妙に無関心だったのを思い出す。
多分、力が全ての魔界においては、生活を便利にするという発想がないのだろう。
「こ、これはだな……こうやって着けて、胸とか脇の肉をカップに納める為の物なんだよ」
まさか男の俺が、女に下着の使い方をレクチャーするとは思わなかった。
ラケルも興味を持ったのか、真似をしてみるが全くサイズが合わない。
「これでは敵の攻撃を防げないだろう?」
「いや、だから防具じゃなくて――」
直後、天啓にも似た衝撃が走る。
「なぁ、ちょい手伝ってくれねーか?」
◇◇◇




