表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボーダーフリー  作者: ちゃりネコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/27

ゾンビの襲撃に備えよ!

 俺達は幸運にも、小高い丘の上でコンクリート製の廃墟を見つけた。

 皆は見知らぬ岩屋だと言って気味悪がったが、俺にしてみれば懐かしさすら感じる人工物だ。


「絶対大丈夫だから! ここならゾンビの襲撃にも耐えられるぜ」

「こいつの言うことなんて信用できるの? 別の場所にした方がよくない?」

闇兎(やみうさ)、君の意見も分かるよ。だけど、もう日が落ちてしまった。今夜はここで一晩過ごそう」

「は……はい! ラケル様と同じ場所で眠れるだなんて、それだけで最高の夜だわ!」


 本当、そろそろ泣いても許されると思う。

 あまりに露骨な対応の差に、スケさんとデュランのコンビが俺を哀れむ。


「浮世の時勢など気にするな。我ら不死者にとって、一時の情事など(ちまた)の夢物語に等しい」

「あ、ありがとうよ。まだ死んでねーけどな」


 スケさんの気遣いが心に()みるぜ……。

 それぞれの候補生はグループに分かれ、自分達が担当する防衛ポイントを決めた。


「俺、酔虎(スイコ)、ラケル、ヘンリー、ラルヴァは1階の正面玄関を守るぞ」

「スケさん、デュラン、雪影、グリムフォードは裏口を頼む」

「残りのメンバーは2階で援護ってわけね。」


 霧になれる闇兎(やみうさ)に偵察と警戒を任せ、羊子(ヨーコ)を始めとした非戦闘タイプの候補生は2階で待機する形にした。

 時間が許す限り窓を木材で塞ぎ、少しでも拠点を強化しておく。


「よく聞け天涯(てんがい)。ゾンビは痛みを感じない不死者の特徴を持っているが、それ以外に特筆すべき能力はない」

「ってことは、入口さえ守っていれば2階は安全なんだな」

「脅威はゾンビだけと決まったわけでは――」

「正面! すっごい数だよ!」


 偵察に出ていた闇兎(やみうさ)の報告が割り込む。

 メンバーに緊張が走ったのも(つか)の間、周囲に亡者達の(うめ)き声が溢れる。

 拳が砕けるまで扉を殴りつけ、あらゆる窓から侵入を試みようと足掻(あが)く。


「来たぞおおおお!!」

「総員、戦闘配置につけ! 闇兎(やみうさ)は2階で待機!」

「あーあ、これが全部美女だったらなぁ。今夜はゾンビの群れとデートかよ」

「ヘンリー! 右窓が突破されっぞ!」


 足よりも太い木材が叩き折られ、飢えたゾンビが大挙して押し寄せる。

 ヘンリーは(ひょうひょう)々とした態度で手元の糸を操り、事前に仕掛けておいたトラップを発動させた。

 直後、拠点の外に吊るしてあった岩が崩れ落ち、多数のゾンビを巻き込んで窓を塞ぐ。


「ここは盗賊の住む家だぜ? ノックもなしに入るんじゃねーよ」

「ナーイス! さあ、どんどん来やがれオラアア!」


 窓から顔を出すゾンビの群。

 手にした大型ハンマーで次々と頭を叩き割り、拠点への侵入を防ぐ。

 いかに不死の化物とはいえ、頭さえ潰してしまえば目標を失い、同士討ちを始める個体が出てくる。


「こっちは時間稼ぎのディフェンスだ。そっちは任せたぞ、ラケル!」


 最も防御の薄い正面扉はラケルが待ち構え、不用意な亡者達を瞬時に肉塊へと変えていく。

 一見して素手で圧倒しているように見えるラケルだが、奴は自身の骨を鋭い刃に変化させ、恐るべき速さで体外に露出させているのだ。

 正面玄関の猛攻をラケルが防ぐ傍ら、恐怖心を持たないゾンビはあらゆる経路から侵入しようと試みる。

 敵は暴力的な物量を頼りに、防衛ポイントを徐々に圧迫しつつあった。


「あー、ヤバくねぇか? 俺、デートの予定を思い出したよ」

「どこも予約で一杯だろーが! しっかり相手しやがれ!」


 ヘンリーは隙あらば逃げる雰囲気を漂わせ、まるで働く気のない酔虎(スイコ)はゾンビの手が届かない高所で欠伸(あくび)をする始末。

 単体の脅威は大したことのないゾンビも、数百体が一斉に襲ってくるともなれば話は別。

 裏口からも応援を要請する怒鳴り声が響き、いよいよ2階への撤退が現実味を帯びる状況に陥ってしまう。


「ラケル! ラケール! 畜生、向こうも手一杯かよ!」

「騒がしい」


 それまで無言を貫いていたラルヴァが動いたかと思うと、華奢(きゃしゃ)な身体を眩い光が包む。

 人形めいた美しさを備えた少年は、近寄りがたい冷気を全身から放ち、秘められた魔力を爆発させる。

 陥落間近の拠点に無数の魔方陣が浮かび上がり、次の瞬間には激しい業火が燃え広がった。


「ラルヴァ!? すげぇ……すげぇじゃねぇか!」


 瞬く間に炎はゾンビの群を焼き払い、態勢を立て直す貴重な時間を稼いだ。


「今だ! 残ったゾンビを押し返せ!」

「あーあ、ベッドの外で汗かきたくねぇなぁ」


 (いびつ)な月が傾き、永遠とも思える夜が明けた頃、ゾンビの群は太陽を嫌って姿を消した。

 あとに残されたのは、目を背けたくなる肉塊の山と、泥のように疲れ果てて眠る候補生だけだった。



 ◇◇◇

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ