魔界の掟と魔力ランキング
ラケルがリーダーになったことでクラス全体がまとまり、暗殺の被害に遭う候補生も出なくなった。
学園生活にも慣れた頃、ファム先生は耳馴れないイベントを口にする。
「皆さ~ん、クラス対抗戦まで残すところ一ヶ月で~す。そこで~、クラス別魔力ランキングを発表しちゃいま~す」
「あの~。前から聞こうと思ってたんですけど、魔力って何?」
途端に教室全体がザワつく。
闇兎は露骨に眉をひそめ、まるで便所の害虫を見るような目で蔑む。
今のって、そこまでされるレベルの質問だったの?
「貴様は本気で……いや、私が説明しよう」
「お、おぉ。頼むわ」
候補生で俺を人間だと知っているのは、ラケルと酔虎だけ。
その為、魔者なら誰もが心得ている質問を答えてくれた。
「魔力とは魔者が持つエネルギーの総称だ。強い魔者ほど強力な魔法や能力を操り、活動レベルによって常にエネルギーを消費する」
「生きてりゃ腹が減るのと同じか」
「ま、まぁそういうことだ。魔力を補充する方法は主に2つ。他者を殺害して魔力を吸収するか、直接魔力の受け渡しを行うかだ」
「そういや裏入学の時、魔力がどうこう言ってたな」
納得すると同時に、どうして学園内で暗殺が横行しているのかも理解した。
「次期魔王となるには強大な魔力が要る。それでなくとも、我々は互いに殺し合いをしなければ生きていけない運命なのだ」
「流石、魔界と呼ばれるだけはあるねぇ」
「なにそれ。まるで関係ないって口調ね」
闇兎の鋭い指摘に冷や汗をかく。
聞いたところによると、人間は殆ど魔力を持たない代わりに、《《とても旨い》》と言われているらしい。
つまり、魔界は人間にとって、腹を減らした猛獣の檻と同じというわけだ。
「疑問も解消したところで~、魔力ランキングの発表で~す。気になる私達のクラスは~――堂々のFランクよ~!」
「Fはファーストって意味だよな? それって最高ランクだろ。やったじゃん!」
「バッカ、最低って意味よ!」
「にゃは~♪ 皆まとめて晩飯にゃ~」
ちょっとした勘違いだったのに、強烈なバッシングの嵐が巻き起こる。
「待ってくれよ。このクラスにはラケルがいるのに、どうして最低ランクなんだ?」
「それは~貴方がいるからよ~。1人でガッツリ平均値を下げてるのが原因ね~」
「信じらんない! この疫病神!」
「酷ぇ! だって仕方ないだろ? 俺は――」
寸前で言葉を飲み込み、甘んじて罵詈雑言を受け入れる。
ここは一つ、経験豊かな淑女に助けを求めるべきだろう。
「せ、先生~! 俺達はどうすりゃいいんだよ~」
「あらあら~、このままだと皆殺しコース確定ね~」
時々思うのだが、ファム先生はもう少し発言に気をつけた方がいい。マジで!
しかし、彼女は担任としての責務を果たす為、一つの打開策を提示する。
「そこで先生は考えたの~。候補生同士の共食いをせずに、魔力を強化する方法をね~」
「それってアレか、皆で修行するとか?」
コバルトブルーの瞳が妖しい光を放ち、艶やかな唇に冷たい笑みが浮かぶ。
彼女はそれっきり質問を打ち切り、ただ一言だけを告げて準備を促す。
「今から緊急の林間合宿を行いま~す♪」
◇◇◇




