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ボーダーフリー  作者: ちゃりネコ


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12/27

薄氷を踏む日常

「まだ見つけらんないのか? もっと気合い入れて探せ」

「お前なぁ、昨日みたいに都合よく見つかると思うなよ」


 翌日、酔虎(スイコ)は報酬のチュールを要求するので、『忘れられた庭』を朝から探し回っていた。

 ここは古今東西の残骸が集まり、その気になれば何でも手に入る魔界のゴミ箱だ。

 少なくとも、俺はそう認識している。


「お前も魔者の端くれだろ。 “ 山積みのガラクタから目的の物を探し当てる能力 ” とかねぇのかよ」

「にゃはー♪ バッカじゃねーの?」


 終始こんな感じで酔虎(スイコ)との会話は進み、護身に使えそうな道具をいくつか拾っておく。

 残念ながらチュールは見つけられず、不満を垂れ流す猫妖怪を(なだ)めて学園に向かう。


「お、お、俺の名前は、久能 天涯(てんがい)です!」

「そろそろ機嫌を直せよクソ妖怪。それと、次に自己紹介(あお)りやったら二度とチュール探さねぇぞ」

「これくらいで(キレ)んなよ高坊(クソガキ)


 酔虎(こいつ)と話をしていると猫嫌いになりそうだ。

“ 猫は喋らないから可愛い ”

 貴重な知見を得つつも、クソ妖怪の(あお)りは留まるところを知らない。


「ところでさ、あの担任をどう思う?」

「ファム先生のことか? どうって……そりゃ最高だぜ! 美人で優しくて、しかもキスで怪我を治してくれるとかエロ過ぎだろ」

「本当……バカだわぁ。いや、若いって素晴らしいな。うんうん」

「はぁ? 意味わかんねぇよ」


 哀れみを含んだ言葉を聞き流すと、学園ウルティムの校門が見えてきた。

 昨日と何ら変わらない光景。

 だが、教室に入った途端、明らかな違和感に気づく。


「な、なんだよ……どうなってんだ!?」


 窓際一杯まで在ったはずの机が、今日は半分以下にまで減っていたのだ。

 ドアの前で困惑していると、背後からラケルが話しかけてきた。


「この程度で騒ぐな。昨日の裏入学式をもう忘れたのか」

「昨日? けど、あの後は皆で余興(レクリエーション)を――」


 嫌な予感が言葉を区切る。

 あの時、半数近い生徒は開始前に帰宅しており、以降は姿を見せていない。


「まさか……闇討ちされたってのか?」

「学園ウルティムの校則(ルール)は弱肉強食。それは校外であっても同じだ」


 無慈悲な現実を叩きつけられ、しばし絶句する。

 更に異様だったのは、他の生徒達も特に気にした様子はなく、ごく普通に現状を受け入れて会話を楽しんでいた。

 彼らの()()が、緊急事態を日常であるかのように錯覚させる。


「……羊子(ヨーコ)はどこだ! おい、羊みたいな女の子を見なかったか!?」

「いきなり何よ。私が知るわけないでしょ」


 目についた生徒に(たず)ねて回るが、誰も知らない、見ていないとだけ答える。

 同じクラスメイトだというのに、ここまで無関心になれるものなのか!?


「言っただろう、私達は同じ目的を共有する敵同士だ」

「俺は……そこまで割りきれねぇ。お前や羊子(ヨーコ)を殺すだなんて……考えらんねぇよ」

「だったら強者の餌になるしかない。それが嫌なら帰れ」

「だから帰れねぇんだって――」

「は~い♪ 生き残った皆さん、おはようございま~す」


 お決まりの帰れコールに反応する間もなく、トートバッグを抱えたファム先生が元気な声で教卓に立つ。

 改めて教室を見渡しても羊子(ヨーコ)の姿はなく、生徒数は20名程しかいなかった。

 朝の挨拶もそこそこに、行方不明となった生徒達の所在を(たず)ねるが……。


「前回も同じような感じだったわ~。だから心配しないでね~」

「前って……2000年も前の話だろ!? 俺は今の話をしてるんだよ! 羊子(ヨーコ)が……小さな女の子が行方不明なんだ!」

「あの羊ちゃんのこと~? だったら、()()に居るわよ~」


 大きなトートバッグを開くと、白い巻毛に包まれた羊子(ヨーコ)が寝息を立てていた。


「……ッッ、はぁ~~」

「いつの間にか職員室のロッカーで寝てたのよ~。可愛いわね~」


 安心しきった様子で眠る姿をみて、一気に力が抜けてしまった。

 もしかして、これを毎日繰り返すのか?


「とてもじゃねぇが、神経もたねぇよ……」

「あら~、だったらクラスを統一してみたら~?」

「統一?」

「そうよ~。クラスを代表するリーダーがいれば、他のクラスから受ける暗殺を減らせると思うわ~」


 魔界の事情に疎い俺の為に、ファム先生は自己紹介の機会と、『クラスリーダー』の説明を始めた。

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