第1章: 赤いゲート
「これは私の新しい小説です。ぜひ読んでください!」
灼熱の昼下がり、アクシオン学園の広場は活気に満ちていた。
学生たちは訓練し、語り合い、競い合い、その場の魔力は渦巻くように満ち溢れていた。
その中心に立つのは、一人の少年――リオネル・スチュワート。
長く黄金に輝く髪がそよ風に揺れ、鋭い金色の瞳が静かに訓練場を見据えていた。
喧騒の中、彼が歩くたびに奇妙な沈黙が広がった。
彼の名は重く響く。
それはただ最強のギルドマスターの弟であるからではなく、過酷な運命によって変えられた人間だからだった。
「……あいつだ」
「前とは雰囲気が違う……」
「あの目……本当に二年前と同じ人間なのか?」
囁かれる声、疑惑の視線、分析するような空気。
だが、リオネルは気にしなかった。
この学園に、彼の興味を引くものは何もない――そう思っていた。
その時までは。
「リオネル・スチュワート」
彼の前に立ちはだかったのは、セリーナ・ファルスタインだった。
—
「リオネル・スチュワート……」
その声には、落ち着いた自信と隠しきれない好奇心が滲んでいた。
セリーナ・ファルスタイン――アクシオン学園屈指の実力者。
銀色の長い髪に、燃えるようなエメラルドの瞳を持つ少女。
堂々とリオネルの前に立ち、背後には彼女を見守る学生たちの姿があった。
「久しぶりね」
リオネルは応えなかった。ただ静かに彼女を見つめる。
彼にとって言葉は不要だった。
だが、セリーナのような人間が無駄話をするとは思えない。
「……随分変わったわね」
彼女は首を傾げ、彼の金色の瞳を覗き込むように見つめた。
「でも、一つだけ変わっていないものがあるわ」
「それは……失うことを知った者の目」
彼の奥深くに眠る傷に触れたと悟ったが、それでも彼女は退かなかった。
むしろ、彼の反応を待っているようだった。
だが、リオネルは何も言わなかった。
そのまま彼女の横をすり抜け、立ち去っていった。
—
訓練場
太陽が頂点に達する頃、訓練場には多くの学生が集まっていた。
その中央に立つのは、アクシオン学園の強者の一人、マルコ・レッドマン。
「リオネル・スチュワート……お前がどれほどの実力か、試してみようじゃないか?」
挑発的な笑みを浮かべるマルコ。
学生たちは期待に満ちた目で二人を見つめ、ざわめきが広がる。
リオネルは言葉を発さず、静かに訓練場に足を踏み入れた。
彼には証明するものなどなかった。
だが、拒む理由もなかった。
「さあ、本気で来いよ」
マルコが不敵に笑う。
次の瞬間――彼の姿が消えた。
圧倒的な速度でリオネルへと迫るマルコ。
誰もが激しい戦いを予想した。
だが――
全ては、一瞬で終わった。
マルコは何が起こったのか理解できなかった。
冷たい金属の感触が首筋に触れ、彼の体は凍りつく。
黒き刀――妖しい魔力を帯びたカタナが、わずか数センチの距離で止まっていた。
リオネルは、一歩動いただけだった。
静寂が場を支配する。
一部の者は、何が起こったのかすら理解できていない。
「……試合終了だ」
リオネルは刀を収め、その場を去った。
言葉を失ったマルコを残して。
—
赤いゲートの出現
その夜、リオネルが学園の中庭を歩いていた時だった。
突如として――
空気が凍りついた。
鳥のさえずりが止まり、世界が静寂に包まれる。
嫌な予感がする。
空を見上げた瞬間、赤い火花が舞い散るのが見えた。
最初は小さな光だった。
だが、それは瞬く間に広がり――
現実そのものが裂けた。
血のように赤い巨大なゲートが出現したのだ。
不気味な脈動を繰り返し、まるで生きているかのように脈打つ門。
恐怖に駆られた学生たちは動けず、膝をつく者、震える者もいた。
だが、リオネルだけは違った。
彼は静かに見つめていた。
金色の瞳が、ゲートの赤い光を映し出している。
彼は、これまでに多くのゲートを見てきた。
だが、これは――違う。
これは――終焉の始まりだった。
「読んでくれてありがとうございました!感想をお待ちしています。」