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崩壊する王都と不穏な影

 それから更に時が経ち……シュナイド国内は、妙な現象が起こるようになっていた。


 突然、国内で見たこともないような強大な魔物が現れ、街を蹂躙していくのだ。

 シュナイド国軍の力によりなんとか持ちこたえているものの、このままでは国の存亡が危うい。日々魔物の被害は広がっているし、その騒動のせいで国境の守りも日に日に薄くなっている。


 これまで攻め込む側だったシュナイド国に恨みを持つ国も多い。いつ他国から攻撃を受けてもおかしくないと、全国民が戦々恐々としていた。


「原因は結界の弱体化だろう! 今すぐに国の結界を張り直せ!!」

「し、しかし……損傷した結界を張り直せる力を持つ魔術師がおらず……担当していた者も行方が分からなくなっています」

「元々あの結界を張った、アルハード家の者だったか……その者もとうに亡くなっている……くそ、どうにかならんのか!」


 王都中枢は大混乱に陥っていた。



(まずい、まずいまずいっ……!!)



 そしてそれは、シュナイド国のトップも同じであった。

 王子であるヘイデルを含め、皆が国の危機に慌てふためいていた。それに加え、ヘイデルは一つの事実を知っている――


(け、結界は確かアリエス・アルハードが担当していたはず……! 奴を追放したから結界が弱まったんだ!)


 図らずも真実に辿りついた彼は、一目見て分かるほど落ち着きを失っていた。


「……と、とにかく今すぐにアリエスを連れ戻さなければ……! しかし、どうやって……」


 独り言をぶつぶつと呟きながら廊下を行ったり来たりする彼は、かつての傲慢で不遜な面影は一切見られない。父親に叱られることを恐れる、幼稚な子供のようだった。


 そんな情けないヘイデルの様子を観察していたケミィ・ロッソは、ギリィッと親指の爪を噛んだ。


「どいつも、こいつも……! アリエス・アルハードのブスがそんなに恋しいっての!? ヘイデル殿下もあんなに無様に慌てて……!」


 常に自分が一番でないと気が済まないケミィにとっては、アリエスを巡る王都の騒ぎ自体が許しがたいものだった。

 しかし、もう一つの重要な事実を思い出す。


「でも……あいつを見つけ出せば、きっとバン様にまた会える……あぁ、バン様……今ごろ貴方はどこにいらっしゃるの?」


 苛ついていたケミィは、バンの美しい面立ちを妄想して心を落ち着けた。


「きっと不自由をされているわ。あのクソ女のせいで……! あたしが助け出してあげる。もうあんなみっともない殿下なんてどうでもいいわ。バン様さえ手に入れば……!」


 魅了の魔法のせいとはいえ、愛するケミィに知らぬ間に振られてしまったヘイデルは、今もアリエスを見つけるために奔走していた。

 そんな哀れな王太子を尻目に、ケミィはこれまで以上に邪悪な笑みを浮かべた。



「この手は使いたくなかったけど……愛しのバン様のためだもの。少しくらい頑張らないとね」


 そう言いながら取り出したドス黒い表紙の本。魔法書だろうか。


 そこには、たった一言『禁術』と刻まれていた。

読んでいただいてありがとうございます!

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