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~4~ 職業選択の大切さを知る

 さてと。


 覗き見おにーさんを幻惑で別方向に誘導し、切りのいいところで自分を見失わせる。

 よ~し、自分は屋根の上から彼の尾行を開始だぜぃ。


 スキル幻影、幻を展開している現場に居れば、見せる幻をコントロール出来る。

 これ、本当に使えるスキル、ダークモンクにしてよかったぁ~。


 周囲にプレイヤーがいるなら、MAPでそれとわかるマークとか表示されないのかなあ。

 向こうが偶然、こっちを見つけたってことは、無いだろ。


 自分が何かを見落としている……?


[ソロプレイ≡]


 もしかして


[ソロプレイ▽

 ・マルチプレイ

 ・ソロプレイ(現在選択中)]


 これか。

 あのおにーさん、自分がソロプレイヤーだから、マルチバトルには出来ないシステムの縛りで討伐参加は出来なかった、のかも?


 え〜と、ヘルプは、あ、あった。


[※MAPに表示されるソロプレイヤーへのマルチプレイヤーからの干渉不可

 ※プレイヤーキル:マルチプレイヤーがソロプレイヤーをキルする行為は禁止]


 ナルホド、逆は?


[※ソロプレイヤーはマルチプレイヤーへの、干渉不可]


 ソロに徹しろ、と。

 プレイヤーキルするには、マルチプレイヤーにならないとか、一旦切り替えたら戻せない?


[・ソロプレイとマルチプレイはランク200以上から切り替え可能

 ※切り替え後、四六時間は切り替えられない]


 ううむ、プレイヤーキルは楽しそうだけど、現状はソロプレイだな。

 他プレイヤーとのレベル差も不明だから、切り替えた途端、キルされては困る。



 覗き見していたおにーさん、マンションに一人暮らしっぽい。

 おにーさんは自分にまかれた後(幻覚だけど)、暫く周囲を探していたけど、自分が見つからないから諦めて帰っていった。

 あの人、帰る前にMAPを見てたけど、すぐ近くの電柱の上にいた自分は表示されてなかったのかな?


 あ、これか。


 [幻夢※発動中、発動しているプレイヤーは、MAPでは非表示になる]


 そりゃそうか、MAPに居場所が表示されたらスキルの意味が無い。


 自分は屋根やら電柱やらの上を伝って(跳躍、便利〜)、おにーさんをつけさせて貰ったわけだが。

 おにーさん、カーテン開けっぱなしで居るから、部屋の位置がバレバレ。

 マンションの高い階だからって、カーテンも閉めずに、不用心だな。


 自分がいる向かいのビルの屋上が、おにーさんの部屋より少し高い位置で、彼からは夜の闇で作られた死角になる。


 魔女と殺り合っている時、おにーさんを発見した。

 だから、一瞬、気を取られて、脚をあのクソ魔女に喰われたんだが!!!

 思い出したらムカついてきた、覗き見おにーさんを殴りたい!!が、我慢我慢我慢。



 ゲームの先輩っぽい、おにーさんのランクと職種とか知りたいなぁ、明日もノルマあるから、帰って寝るか。


 必要なら向こうから、声を掛ける気がする。

 こういう感、わりと当たる。






 翌朝。


 ピンポーンピンポーンピンポーン



 はいはいはい、朝から誰よ、お母さんは夜勤で、まだ病院だっ!

 はいはいはいはいはいはいと階段を駆け下りる。


 インターフォン越しに確認すると、昨日のおにーさん!?


「ど、どちら様ですか〜?」

「この声は昨日の君だね!

 早急に話があるのだが、少し良いか?」

「今、ですか?」

「俺もそろそろ、ノルマに行かないとならないから、手短にするから、頼む」

「どうやってここを?」

「MAPにセーフゾーンが出るだろ?」


 くっ、そうか、プレイヤーの住処のあたりは簡単に付くのか……!


「怖いのでインターフォン越しで、どうぞ」


 おにーさんは数秒、押し黙る。


「わかった

 俺の名はタナカ、プレイヤーネームはカナタだ」


 もしかして、逆さにしただけかい!

 ゲームあるあるだけど。


「教えて欲しい

 君はどうして、魔女を倒せるのだ?」



 ん?



「攻撃して倒す、よ?」

「俺は攻撃手段を持たない」

「なんで?」

「剣士なのに剣が無いから、だ」



 職種選びから試されているのか、このゲームは。

 それはどのゲームもある程度はそうだが、武器を買えるシステムが無いこのゲームでは、職種選びで詰むのか。



「初期装備は無かったの?」

「無い、モンスター報酬で出る事が稀にあるらしい」

「タナカさんは剣士?」

「そうだ」


 という事は、モンスター報酬が出ないと詰むのか。

 クソゲーだな。


「タナカさん、ノルマはこれまでどうやって?」

「マルチバトルだと数人で挑むから、君ほど大変ではないが……

 モンスターは何とか、木刀で倒せている」

「ん?」


 剣士なのに木刀?あれ、刀だよね?


「学生の時、修学旅行で買った」


 あ~、洞爺湖とか文字があるやつ?

 剣士だから、刀系では本領発揮しないだろうな。


「自分、格闘系の職業だから、武器無しで戦えるんで、お役には立てないかと」

「まっ、待ってくれ!」

「ソロプレイなので、これから一人でノルマをやらないと」

「俺は、今日、多分死ぬから、君に伝えておくよ」



 ノルマ熟せないとランクダウンで死ぬ、実際に死ぬのだろうか?



「マルチプレイに切り替えてはだめだ」

「切り替えるつもりはないです」

「そうか……、生き抜けよ」


 インターフォン越しに、おにーさんは寂し気に笑うと、玄関に背を向けた。


 自分は、その背を見えなくなるまで見ていた。







 今日のノルマをこなし、自分はおにーさんのマンションへ行ってみた。


 やっぱり、生きてんじゃん。


 昨日のバトル、脚を食われた直後から幻惑を使った。

 それは、覗き見おにーさんに自分の手の内を晒すのは以ての外、だからだ。

 あの時の彼には、スキル幻夢によって、事実と違う自分と魔女のバトルが見えていた。

 こんなデスゲームをしている大人なんか、信用出来るわけがない。

 でも、喰われた脚が生えているとバレたら面倒臭い事になりそう。



 気を取り直そう、うん。

 今日はノルマに加えて、レベリングしたからねぇ、新しいスキル増えたんだぁ。



『ヒカリ

 ランク180

 HP91500/MP14030

 ・称号/蜂への災厄・魔女の呪いを弾く者・魔女喰い

 ・スキル/身体強化レベル201・跳躍レベル265・クリティカルレベル288・炎拳レベル152・氷拳レベル129・毒拳レベル90・毒無効レベル80・マーキングレベル10

 ・殲滅系スキル

 暴食+レベル110/誘爆レベル191/幻夢8/強奪5/ランク不足の為非表示/ランク不足の為非表示

 ・憤怒系スキル

 怒気レベル3/憤怒レベル2/ランク不足の為非表示/ランク不足の為非表示/ランク不足の為非表示/ランク不足の為非表示]




 ふふん、凄いね、わたし。

 明日も頑張ろう。

 家に帰ろうと立ち上がる。




「君、魔女に食われた脚が生えているのは、スキルかい?」



 !!!!!


 気配、無しかよ!

 第三の目、やはり、面倒でも常時開いておかないと、駄目か、歩き難いのに。


 さっきまで部屋に……とマンションの部屋を横目で見る。



「あれ、マネキン」


 えー、古典的な手に引っ掛かった。自分、ちょっと慢心してた。


「生きていて、驚いた?」

「おにーさん、嘘つきっぽかったんで、死んでないと思ってた」

「いいや、嘘つきじゃなかったよ、弟は」

「え」

「弟は、レベルダウンする余地が無くなって、消滅した」


 まじか、そう言えば、話し方と声が少し違う。


「弟が君に伝えて欲しいって」

「?」


 おにーさんに遺言される程、親しくないんだけど。


「ありがとう、って」

「? なんで?何もしてないのに?」

「本当は、弟が倒す魔女のエリアだった

 何故か、君が後から魔女エリアに入って来て、その魔女を討伐してしまったんだ」

「え?」

「システムのエラーだったのか、救済措置だったのか

 君が魔女を倒して、彼はその日のノルマをクリアした事になった」

「……」

「僕が、このゲームの内容をよく知らずに、弟にも薦めてしまったんだ

 簡単に儲けられるゲームがあるって

 そして僕達は、同時にマルチモードでゲームを始めたのさ」


 彼は、ふっ、と夜空を仰いだ。


「弟を死なせたのは僕なのさ」


 やばい、こういう嫌な展開は好きじゃない。


「弟はあの日、一日だけ生き延びて、産まれてくる子供の顔を見られた

 僕からも礼を言うよ、君のおかげだ、ありがとう」


 こんな時、どう返せばいいのか、自分にはわからない。


「あ、あなたも、プレイヤー?」

「そうだよ」

「そう」


 そろそろ、帰りたい。


「僕は昨日まで、マルチプレイヤーだったんだ」

「そう、なんですか」

「マルチプレイヤーはね、ランクの奪い合いなのさ、自分ではノルマを熟せない、なら、ランクを奪えばいい、ってね」


 それ、初耳。


「弟から、君の話を聞いてね、もしかして、ソロの方がランクを上げやすいのかと思ったんだ」

「何故?」

「マルチバトルは与えるダメージが、参加者の合計値だろ?」


 なるほど、ソロだと一人でダメージを与えるから、ランクアップ効率はいいのか。


「それに、報酬も奪い合いにならない」


 マルチ、こえぇ。


「ソロになって、どうです?」

「魔女がUR武器を落としてくれて、凄く楽になったが、落ちてなかったら厳しいね」

「よかったですね」


 この人、ランク200を越えてるって事か。

 ソロプレイに変更出来たんだから、そうだよなぁ、強そう。


「職業を聞いてもいいですか?」


 気になる。


「弓使いから始めた、そこからちょっと進化した、かな」


 今の職業は教えないってことか。

 自分も言わないけど、万が一、ラストがバトルロワイアルだったら、手の内は隠したい。

 こんな時、鑑定スキルが欲しいなぁ。


「そうですか」


 自分はつま先をコンクリにコンコンとして、


「じゃ、自分はこれで」


 と立ち去ろうとする。


「ああ、じゃあね」



 ばくり。



 暴食ってやっぱりチート。

 背中を見せた途端、槍を手に持ちジャンプして、上から刺し殺そうなんて、子供に大人がする事かよ。


「やっぱり、大人は信用できないな」


[暴食+と強奪の効果により、プレイヤースキル・写し見、を強奪成功]


 お?

 嬉しい誤算、殲滅スキルは連動して効果出るのかな?

 写し見?

 あ、あいつ、双子の振りしてただけか。


 それに、そうじゃないかと思ってたけど、ソロプレイヤー同士なら、キルは可能ってことね。

 あいつ、それでソロに切り替えたのか。


 ①マルチ勢を駆り尽くした

 ②残りのマルチ勢はあいつの手におえない強さ


 どっちかなぁ?

 それとも、他に何かあるのか。



[UR武器の暴食+により、新しい武器が生成されました

 ヒカリ専用武器/サンダルフォン]


 おお~!

 こ、れは、やべぇ、厨二心が疼く!!


 よっし、明日はこれを使いこなせるように、ノルマとレベル上げ、頑張るぞー、おー!


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