~1~ ゲームスタート
お布団に洗い立てのシーツ装着、オッケー
枕カバー交換、オッケー
通信速度、オッケー
電源、オッケー
フルダイブゲーム環境、オッケー
待ちに待った夏休みだ。
両親に文句を言われない様に、期末テストは高成績!
頑張った、自分は頑張った!!
そして勝ち取ったのだよ、その権利を!!
「ふふふふふ、ふっ、はははははは!!!!!自分は成し遂げた!!!!」
ゴロンと寝転び、ボスッと枕に頭を乗せた自分は、ゲーミングヘッドを両手で持ち上げる。
「いざ、嗜好の世界へ!」
と言っても、まだどのゲームにしようか決めてない。
んと……
目の前に浮かぶ、ゲームパッケージを見比べながら、どれにしようかと悩む。
マイナーなゲームでもいいから、ソロプレイで楽しいゲームは無いかな?
幾重も表示されているゲームパッケージを、指先で横に流し、奥の方のゲームを漁る。
こういう画面はおススメが前に出てきて邪魔、オンラインで人と絡むゲームは面倒、や、ほんと、面倒。
これは……ソロプレイ可、知らないタイトル
知らない製作会社だ
ゲーム内容は
現実世界に現れるモンスターや魔女を倒し、スキルとランクをアップさせよう
討伐すると金が貯まるよ!
※討伐後、稀にレア武器やレアアイテムを、報酬として受け取れる事があります
よくあるゲームかぁ。
現実世界って事は東京が舞台なのかな、それ、自分の現実世界じゃないし。
「ブランク埋める肩慣らしに、これ、やってみようかな」
春休みにプレイしたゲームはほんと、面倒だった。
フルダイブだから、実際の肉体の反応速度がアバターに反映されるのは、当たり前って、わかってない輩がいる。
プレイヤーキラーを名乗る弱者の群れ、全員ボコ殴りにして、あいつらのレアアイテムもレア武器も全部奪って、武具屋に売り払って、スッキリはした。
けど
「ほんと、面倒くさい」
プレイヤーネームはどうしよう
※注意
・プレイヤーネームは後から変更出来ません
・プレイヤーネームは次の世界で使用します
次の世界?
ゲームに階層とかステージ設定でもあるのかな?
何処にも書いてないな
アバター設定が無いぞ?
まさかランダム設定とか言わないよね??
まあ、いっか、どうせソロプレイゲームだし。
職種
剣士・クンフー・槍使い・アサシン・召喚士・陰陽師
※ランクアップすると職種は進化します
陰陽師ってなんだ、それなら忍者も入れてよ、忍術とか使いたい。
どう進化するのかなあ、武器ドロップも考えると剣士?
でもなぁ、陰陽師、気になる、だがしかし!!!!
自分はボコ殴りのクンフー、一択!!!!!
「ソロプレイゲームだし、プレイヤーネームは推しの名前にしようかなっ!」
自分の今の最押しは、某アニメの、敵サイドの天野光梨。
主人公をブチのめして、ゴミを診る様に、蔑みの眼で見下した、あの目がたまらん!
アニメ二期、光梨の過去回、神。
あの設定を知って、自分は堕ちるしかなかった、天野光梨という沼に、ブクブクブク。
なので、敢えてカタカナで、ヒカリ、にしよう。
それではぁ~、ゲームスタート。
ヴゥン。
「あ、あれ?」
画面が真っ黒、まじか。
え、ウエイト状態とかじゃなくて?
十分以上経った。
うんともすんとも言わない。
いやいや、ほんとに!!
自分のゲーム三昧の夏休みはどうなる、の!?
がばっ!
自分は勢いよく起き上がり、フルダイブから神経切り離すボタンを押しながら、ゲーミングヘッドを外すと、考えられる再起動を全て試した。
けれども、それらの行動は全て無駄だった。
「っ、だぁぁぁぁ……、修理なの?直るの、いつぅ?」
泣きたい。
泣き、た、……なんか視界に、見えるこれは、何?
『ヒカリ
ランク1
HP100/MP80』
は?
浮かぶ文字に手を伸ばしても触れない。
地味に邪魔。
「なんだこれ」
▼MENU▼
「メニュー?あ、なんかでた」
・MAP
・所持アイテム/ポーション×3
・称号/なし
・スキル/身体強化レベル1・跳躍レベル1・クリティカルレベル1・炎拳レベル1・氷拳レベル1
ゲーム開始前に読んだ説明文に
『現実世界に現れるモンスターや魔女を倒し』
って、あははは、まさかアニメじゃあるまいし?
左右に頭を動かす、消えない文字達。
MAPってもしかしてモンスターの場所とか出たりして?
わぉ、出たよ。
暑過ぎて、外には出たくない。
自分のいる場所が、家の敷地?が檸檬色になってる、これは……
[檸檬色はセーフゾーン
※モンスターや魔女は侵入不可能
※プレイヤーキル不可
※HP1迄ならダメージが全回復する]
ほほう、家はセーフゾーンなのか。
HP0になると死ぬのか、へえ。
MAPの右上にある表示は、なに?
[モンスター
0/6
タイムリミット00:15
※討伐数/一日に倒さなければならないモンスター数
※表示中のモンスター討伐残り時間]
「十五分!?」
こういうノルマの類は、やっとかないとダメなやつだ。取り敢えず、行こう。
暑い、なんかもう、人類死ねよって、地球が言ってる暑さじゃん。
MAPにあった切替えタブ、ナビに切り替わって最短ルート案内開始されたけど、どう見ても人ン家。
角を曲がると目的地まで10メートル、モンスターがいる気配しないなぁ。
と、曲がると居たわ、
おいおい、なにあれ、家の軒下にでっかい蜂?
全長1メートルの蜂、最早、昆虫博士なら生け捕りにしたいレベル(自分は違うけど)。
いやん、目が合った(眼球ないからわからんが)
[ポイズンビィを討伐して下さい/残り時間00:10]
制限時間はモンスターをMAPで見つけてから!?
飛んでいる獲物を、どうしろと?
ブゥーン
ポイズンビィの尻から、でっかい針がニョキリ。
「刺す気、満々じゃん!!!」
取り敢えず、避ける、避ける、隙を見て
えーっと、スキル使う時は、っとぉ!!!
「危な!」
横から刺しに来たポイズンビィを避けようとジャンプしたら5メートル程飛んだ。
なるほど、感覚で使うのか。
「このまま、炎拳ッ!!」
ぶぉっと拳から炎が出て、ポイズンビィの頭を殴った。ポイズンビィはアスファルトに打ち付けられ、ぐちゃりと頭が潰れた。
プスプスと黒く燻り、そのまま数秒でエフェクトを出しながら消滅した。
「やりぃ」
柄にもなく、ガッツポーズを決めてしまった。
[ランクが2になりました
以下のスキルがレベルアップしました
・スキル
身体強化レベル2/跳躍レベル2/炎拳レベル2
ポイズンビィの討伐報酬は5万円です
本日の討伐残数が5になりました
引き続きモンスターを討伐して下さい]
討伐報酬は金じゃなくて、お金だった!
現金はどこに、あ、所持円ってこれか。
日本円なのかな、数字だけって事は……
[具現化したい金額を入力して下さい]
ん~、五万位?
所持金額の下に入力スペースがある。
¥50,000、と入力し、支払いボタンを指で突く。
すると、宙にお札が出た。
「おっと」
慌てて一万円札を掴んだ、ホンモ、ノ?
万札を普段持っていないからわからぬー。
あ、コンビニ行って、セルフレジで通れば本物確定?
二十メートル先に、行きつけのコンビニがある、いざ。
「ふふふっ、アイス、んまぁ〜!
さぁて、今日は、モンスター、ボコ殴り祭りだ」
懐があったかい。