“死神”視点 死神出陣
テラエ王国東部某所、廃村の廃屋……
「失礼します、わ……」
“番犬”が咄嗟に放った言葉に私は“殺意を籠った視線”を送った。
「ゴホン……失礼しました、“主”」
「……どうした?」
「はッ、例の一行がフェールポルド辺境伯の居城へと入りました」
「……そうか」
フェールポルド辺境伯領は豚人族との最前線と言う事もあって今までの様な襲撃はやりづらい。
“偉大なる壁”周辺の街道には頻繁に巡回部隊が巡回をしているからだ。
「……辺境伯領での襲撃は無理か」
「如何致しますか?」
「……貴様の配下はどれだけ残っている?」
「譜代の者との事なら四名、傭兵崩れ共なら二十名ほど」
「……出せる者はすべて出せ、次でケリをつける」
「おお……主自ら」
私の決定に“番犬”は感嘆の声を上げる、が……
その視線が“私自身を見ていない”事を私は知っていた。
「……貴様は配下を纏め、すぐにリュヌブレーヌへ向かえ」
「ははッ! “主”の仰せのままに」
“番犬”はそう言うと踵を返して、私の居る廃屋を後にした。
「……フン、“主”に尻尾を振る事しか知らぬ“駄犬”の分際で」
部屋の中で一人、私は侮蔑の言葉を零していた。
「……で、覗き見とは感心せんな」
「おや、お気づきでしたか?」
お道化た声を響かせながら男が一人、部屋の隅の暗がりから染み出す様に現れた。
それは白い肌で銀髪の優男で、全身を黒い衣で覆っていた。
男は陰気臭いこの場には不釣り合いな笑みを浮かべていた。
「中々“良い報告”が無いので様子伺いに来ました」
「……それは“催促”か?」
「まあ、そうですね」
男は笑みを深めながら私に指を三本立てた。
「先ずは“虎”」
そう言って指を一本折る。
「次に“百舌鳥”」
更にもう一本指を折る。
「幾ら“天に座する主”が寛容であっても、これ以上は……ね?」
「……次が“最後の機会”だと言うのだろう」
「その通りです」
案の定、私に“釘を刺しに来た”という訳か。
どの道、私に後は無い……。
「あぁ、そうそう……貴方が探しているモノに関してですが」
「……何か分かったのか?」
「ええ、貴方の依頼完遂を確認後お渡しする準備をしておきますね」
その言葉を聞いて、私は鮫の様な笑みを浮かべた。
「それは依頼通り、“小娘の首”と引き換えで受け取る。 準備をしておけ」
「ええ、畏まりました」
私は“慇懃に一礼する”男に背を向けて兜を被り、愛用の死神鎌を手に取った。
あの小娘には恨みは無いが……すべては私の目的を果たす為。
もし恨むなら、“自分の生まれ”を恨む事だな。




