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テラエ王国戦記 ー月の姫と鴉の騎士ー  作者: 黒狼
第一章 月の姫と騎士達
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フェールポルド辺境伯領へ

 港町に傷の治療の為に滞在して数日後、ルドルフとトリスタンが動いても問題ないぐらいまで回復したので次の目的地であるヴァンブレーヌ伯領へと向かう事になりました。

 前もって到着が遅れる事と到着する日時を使者を送って伝えていたので問題なくお役目を果たせると思っていました。


「申し訳ございません、ルーナ嬢。 ヴァンブレーヌ伯である兄は昨日領を起ち、ユピテル帝国へ向かいました」


 到着した私たちを待っていたのは、ヴァンブレーヌ伯の弟君である代官と伯の不在を告げる言葉でした。

 何でも帝国との貿易で問題が起こり、その対処の為に帝国へと向かわれたそうです。


 急用でご不在なら仕方がありません。

 代官である弟君に父からの書簡を預かってもらってお暇する事になりました。




 私たちはヴァンブレーヌ伯領を北上、最後の目的地であるフェールポルド辺境伯領へと向かう事になりました。

 フェールポルド辺境伯領は北のフルグル山脈と南のマールス山脈の間にある盆地に設けられた領地で、対豚人族アブルムの最前線となっている領地です。


 ヴァンブレーヌを出て数日……マールス山脈の北端が見えて来る頃に“ソレ”は見えて来ました。


 “ソレ”は山脈の切れ目から続く“広大な壁”でした。


「わぁ…………」

「すげぇな……」

「これが“偉大なる壁グラン・ミュール”……」


 “偉大なる壁グラン・ミュール”……それは200年以上前に起きた豚人族アブルムの“大侵攻”後に建造が始まり、約150年かけて完成に至ったフルグル山脈とマールス山脈の間に築かれた長大な長城の事です。

 “偉大なる壁グラン・ミュール”完成までは王国東部の全領地の力を対豚人族アブルムに注ぎ込まなければ抑えられないほどであったそうです。



「姫様」


 壁に見惚れていた私たちに馬車の屋根に立っていたエンネアが私を呼びました。


「エンネア、どうしましたか?」

「前方に“武装した集団”が近づいて来てる。 数は数十から百ぐらい……全員、馬に乗ってる」

「野盗……では、なさそうですね」

「辺境伯の軍かもしれません、私が確認に行ってまいります」

「わかりました、シャルリーヌに任せます」

「はッ」


 そう言うとシャルリーヌは、リュヌブレーヌ宮中伯家の旗を掲げて馬を走らせました。

 シャルリーヌは向こうの兵と二、三言言葉を交わすと、その内の三人を引き連れて私たちの元に戻ってきました。

 兵たちは私から少し離れた場所で馬を止めるとその場で下馬して私の前に進み出ました。

 その中で隊長だと思われる男性が私の前で跪いて頭を垂れました。


「拝謁致します。 前リュヌブレーヌ宮中伯 ギャスパル様の御令嬢、ルーナ姫様で間違いございませんか?」

「はい、前リュヌブレーヌ宮中伯 ギャスパルの娘、ルーナです。 貴方は?」

「申し遅れました、私は……」


 そう言うと隊長と思われる男性は、被っていた帽子を脱いで改めて礼を取ります。


「私はフェールポルド辺境伯にお仕えする騎士でアントワーヌと申します。 軍では百人長の役職についております」


 そう言ってアントワーヌと名乗った百人長は私に対して恭しく一礼しました。


 彼は礼儀正しく穏やかで、誰もが見惚れる程の“美丈夫”と言っていい人物でした。

 ……ですが、ただ一点……こんな事を言うのは、憚られるのですが……。


「如何なさいました?」

「ああ、いえ。 アントワーヌ卿の見事な所作に感心していたのです……」

「そうでしたか、そう言っていただけるとは光栄です」


 もしかしたら大変なご苦労をなさったのかもしれません……。

 頭部の……“髪”だけが、残念な事になっていたのです。

 彼の背後に控えていた部下の二人も視線で『お察しください』と、言っている様でした。


 私は後ろに控える臣下たちに『これ以上は詮索不要』と視線を向けました。

 皆も心得ていた様で無言で首を縦に振っていました。



 その後、アントワーヌ卿の提案で彼の部隊が私たちの護衛に就いてくれる事になりました。

 申し訳ないとも思ったのですが、『領都に帰還するついで』との事なのでお言葉に甘える事にしました。


「ルーナ姫様、各隊配置に就きました」

「はい。 では、領都までよろしくお願いします」

「はッ」


 アントワーヌ卿が腕を振り下ろして全隊に合図をしました。


トピックス:魔剣、魔鎧



 魔剣、魔鎧とは?


 剣や鎧に魔法結晶、魔法回路を埋込み魔法で強化を行った武装の総称。

 魔剣、魔鎧と正式に呼ばれるものはその中でも上位の力を持つものに限られている。

 殆どの場合、その力、希少性から持ち主を選別するプロテクトが施されている。

 尚、剣以外の武器でも呼称は魔剣、鎧以外の防具でも呼称は魔鎧とされている。



 魔剣、魔鎧


 魔剣、魔鎧と呼称される武装の中では一番多く出回っているもので、大半は一族で代々受け継いでいるものか古代魔法文明の遺跡で発掘されたものである。

 現在に残る魔剣、魔鎧の製造法は断片だけが一部の魔術師に秘匿されているだけであり実質、失伝している。



 聖剣、聖鎧


 神々より祝福を与えられた魔剣、魔鎧でテラエ王国では十星教会の星神の祝福を与えられたものを指す。

 現在、確認されているものは、王権の象徴である“聖剣 オーブ”と、教会を守護する聖騎士団の最強の騎士八人に与えられる位である“八騎”が身に着ける事を許された八つの聖鎧“聖星八騎”のみ。



 呪剣、呪鎧


 比較的近年に開発された魔剣、魔鎧の一種。

 古代魔法文明時代の魔剣、魔鎧と遜色の無い性能を現代の魔法技術で実現したもの。

 ただしリスクが高く、所持者の魔力や生命力、またはその両方を多量に吸収する性質を持つ。

 その性能とリスクから大半の呪剣、呪鎧は王国の宮廷魔術院により禁忌に指定されて封印されているが、極少数がそれを逃れ個人所有されている場合がある。

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