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テラエ王国戦記 ー月の姫と鴉の騎士ー  作者: 黒狼
第一章 月の姫と騎士達
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トリスタン視点 鷲馬の騎士対百舌鳥

 僕はリュヌブレーヌ宮中伯に仕えるカランコエ男爵家の三男坊だ。

 とは言っても、三男坊の僕は将来に大きな責任を持っている訳でもないので、幼馴染のルーナ様の騎士見習いとして仕えている。

 僕はシャル姉やトリス姉、レオ兄の様に“ルーナ様大好き! ルーナ様命!!”って訳じゃないけど……主君を、親友を、義妹をられそうになった……。


 それを黙っていられるほど僕は薄情じゃないッ!!


 僕は愛騎の鷲馬ヒポグリフエステルに飛び乗ると、ルーナ様を狙い撃った奴に向かって飛び出した。


 エステルに断崖絶壁擦れ擦れを飛ぶように指示しながら、僕は断崖の上を見渡していた。

 海に浮かぶ船へ断崖絶壁の上から攻城兵器アーバレストを撃ち込むなら、断崖のギリギリに攻城兵器を設置してると思ったからだ。


「……あった!」


 僕の居る位置の遥か前方に断崖から攻城兵器らしきものの先端が見えた。


「エステル、あそこだ!!」


 エステルは僕の指示に従って攻城兵器の真下まで飛ぶと、そこで翼を大きく羽ばたかせて真上へと舞い上がる。


 エステルは僕を乗せて飛べるようにはなったけど成体という程ではない。

 短時間の騎乗であれば問題は無いけど長時間の騎乗や、騎乗したままの戦闘に耐えられるほどではなかった。


「いいかい、僕は断崖の上に降り立って奴に強襲をかけるから、エステルはそのまま上空に飛び上がるんだ」


 僕はエステルにそう言い含めると、すぐに飛び降りれるように身体の位置をエステルの後ろ脚の方へと移動させた。


 恐らく奴は攻城兵器の巻き上げをしてるか、巻き上げを終わらせて発射体制に入っているはず……そこを強襲すれば仕留められるはず。 仮に仕留められなくても、次弾の発射は阻止しないと!


 そうやって考えている間に断崖から突き出た攻城兵器が間近に迫っていた。


 僕はエステルが断崖の上に飛び出した瞬間にエステルから手を放し、空中で背中の短槍を抜き放った。






ったッ!」



 攻城兵器の脇に弩弓クロスボウを構えた爺さんが鮫の様な笑みを浮かべていた……。


「なッ!?」


 “待ち伏せされていたッ!!”と僕の頭に過った瞬間、弩弓の引き金が引かれた。


 マズいッ!!


 僕がそう思ったその時




 突然、僕の背中に衝撃が走った。


「ぐあぁッ!?」


 突然の事に小さくうめき声を上げながら、崖の端に“叩きつけられる”様に着地した。

 そんな状態の僕の頭上スレスレを弩弓の矢が掠めた。


「外しただとッ!?」


 自身の渾身の一射が外れた事に爺さんが驚愕の声を上げた。


 何が起こったのかよくわからないけど…………今だッ!!!


 僕は本能的に左手に握った短槍を強く握って振り上げると、弩弓を撃ち込んで来た爺さんに目がけて短槍を投げつけた。

 それと同時に素早く身を起こして、残った右手の短槍を構えて投げた短槍を追う様に爺さんへと駆け出した。


「チッ!」


 僕の投げつけた短槍を躱せないと見た爺さんは、咄嗟に手に持つ弩弓を盾にして短槍を防いだ。


「もらったぁッ!!」

「餓鬼がぁッ!!」


 仕留めようと駆け寄っていた僕に、爺さんが短槍が突き刺さったままの弩弓を投げつけて来た。

 僕は咄嗟に足を止めて、短槍で払って弩弓を退けた。


「やれやれ、うっかり愛用の弩弓を使い潰しちまった……」


 爺さんはそう零しつつ、僕から視線を逸らさずに距離を空けた。

 僕は爺さんを睨みつけながら、足元に落ちた弩弓から刺さった短槍を引き抜いた。


「まさか空中で騎獣に“てめぇを踏み台にさせて”矢を躱すとは思いもよらなかったぜ……末恐ろしい餓鬼だな」

「“踏み台”……?」


 どうやら僕はエステルが飛び上がるときの踏み台にされたからこそ弩弓の矢を躱せてた様だった。

 ……エステルに救われた形だな。


「こんな子供にやり込めらるとは……な」


 そう言うと爺さんは再び、鮫の様な笑みを浮かべて腰に下げていた“小型の弩弓”と“長方形の小さな木箱”を手に取ってその二つを合体させた。

 爺さんがその弩弓についたレバーを引くと小箱の中から矢が装填された。


連射式弩弓リピーター……そんなものまで持ってるのか」

「ほう、なかなか物知りな餓鬼だな。 こんな整備が面倒な武器えものを持ってる奴なんぞ早々おらんだろうに」


 爺さんは連射式弩弓を僕に向けたまま、着込んでいた外套を脱ぎ捨てた。


「ワシは“百舌鳥トルキーダートル”のレンケだ。 小僧、名は?」

「……ルーナ様の騎士、カランコエ男爵家のトリスタン!」

「良い名だ……その名、ワシの胸に刻んでおこう」

「冗談じゃない……百舌鳥のレンケ、僕の手柄首になってもらう!!」


 爺さん……レンケに言い返すと、僕はレンケに向かって不敵な笑みを浮かべた。


「がははははは……餓鬼がッ!! 吠えおったなッ!!!」

「頑固ジジイ、目にもの見せてやるッ!!!」


 レンケが連射式弩弓の引き金に指をかけたと同時に、僕は短槍を手に駆け出した。

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