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テラエ王国戦記 ー月の姫と鴉の騎士ー  作者: 黒狼
第一章 月の姫と騎士達
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モンターニュフォール公爵 ステファン

 “猛虎”ザカリアスの率いる野盗達の襲撃を辛くも跳ね除けた数日後、私たちは次の目的地であるテラエ王国東部最大の都市であるモンターニュフォールへと到着しました。

 内海に接する巨大な港湾都市であり、テラエ王国よりも大国であるポラリス帝国への海の玄関口でもあります。


 先の戦いでの消耗の補填もしなくてはならなかったので、私たちは街に入った時点で二手にわかれる事にしました。

 レオナール達に物資の調達や武具の修繕を任せ、私はシャルリーヌ、リーズ、ジャスミン、ルドルフを伴ってモンターニュフォール公爵の城へと赴くことになりました。



 私が城へ向かうとすでに私が到着している知らせが届いていた様で、すぐに謁見の間へと通されました。

 そこに居たのは、ふくよかな体躯で穏やかな表情を浮かべた初老の紳士でした。


「突然の訪問をお許しください。 前リュヌブレーヌ宮中伯 ギャスパルの娘ルーナと申します」

「ようこそ、儂はモンターニュフォール公爵 ステファン。 ルーナ嬢、遠路遥々よくお越しくださった」


 私はお父様から預かっていた書状を取り出して公爵閣下へと差し出しました。


「こちらは父より公爵閣下へと宛てた書状です」

「確かに」


 私が差し出した書状を公爵閣下は受け取ると、私に軽く会釈をしてから書状に軽く目を通しました。


「ふむ、間違いなくギャスパル殿の書状ですな。 ルーナ嬢、お勤めご苦労様」

「ありがとぅございます、お勤めを無事に終える事が出来て安堵いたしました……」





 無事に使者としてのお勤めを果たした私を公爵閣下はお茶会にお招きしてくださいました。

 私はご厚意に甘えて、お茶をいただく事にしました。


 謁見の間から城の中庭に場所を移してお茶会が開かれる事になりました。


「そういえばルーナ嬢、先程配下の者から旅の途上で野盗の襲撃に遭ったとお聞きしたのですが?」

「はい、私を護ってくれている騎士達の尽力により犠牲者を出さずに済みました。 ここに居る二人を始め、私の臣下たちは私の誇りです」

「ほっほっほっ、その様に申されるならルーナ嬢は良き臣下に恵まれている様ですな」


 公爵閣下は朗らかに微笑まれました。


「ところでルーナ嬢、次の目的地はどちらになりますかな?」

「はい、次はポラリス帝国との国境に接するヴァンブレーヌ伯領です」

「ヴァンブレーヌ……陸路ではかなり遠回りになりますな」

「船を調達できれば良いのですが、馬車二台を乗せられる様な船を手配するのは簡単ではない様なのです」

「ふむ……」


 公爵閣下は暫しの思考の後、ご自身の側仕えを呼んで何事かを小声でお話されていました。


「では、早速手配を」

「畏まりました」


 公爵閣下はご自身の側仕えに何事かの指示をお与えになった後、再び私の方への向き直りました。


「さて、ルーナ嬢」

「はい」

「実の所、儂は貴女のお父君であるギャスパル伯に少々御恩がありましてな」

「お父様に……ですか?」

「ええ、公爵家を継ぐ前に王都で務めていた頃ですから三十年近く前になりますか」


 お父様は先王陛下の家宰として、長い間傍近くに仕えていました。

 どうやら公爵閣下は、その時にお父様と交流があった様です。


「そこでお父君へのご恩返しとして、そのご息女であるルーナ嬢にお力をお貸ししたいと思うのですが、よろしいですかな?」

「えっと……“お力をお貸しいただく”と、言いますと?」

「何、簡単な事です。 儂が個人で所有している船でヴァンブレーヌ近くの港までお送りいたしましょう」

「まあ、よろしいのですか!?」

「元々、儂が公務で使っている船なので、外交事でもなければ使いませんからな」

「ありがとぅございます! 公爵閣下のご厚意に甘えさせていただきます!」


 私たちは公爵閣下のご厚意により、船をお借りする事ができました。

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