労い
ウィルバードが野盗の首領“猛虎のザカリアス”を討ち取った事によって、街道の戦いは決しました。
ザカリアスを始めとする野盗たちは全滅……いえ、誰一人降伏する事なく討ち死にしました……。
私たちは街道の脇に野盗たちの亡骸を葬りました。
葬り終わる頃には日が暮れかけていたので、野盗を葬った場所から少し離れたところで野営する事になりました。
「とりあえず……レオとウィルバードは負傷しているので野営の準備は免除。 ヘンリは二人の手当をお願い。 ジャスミンもヘンリの手伝いをお願いします。 ルーナ様の護衛は私がしますので、他の者は野営の準備を」
シャルリーヌによって的確に役割が振り分けられていきます。
「シャルリーヌ、私はどうすれば良いのでしょうか?」
「えっと、ルーナ様は……」
今までテキパキと指示を出していたシャルリーヌが言葉を濁しました。
「皆が働いてる中で私だけ何もしないというのも……」
わがままだとは思うのですが、皆が働いてる中で一人だけ何もしないというのも居心地が悪いのです。
「私から提案差し上げてよろしいでしょうか?」
「ルドルフ、提案とは?」
「ルーナ様には“我らの主君”としての仕事をしていただくのはどうでしょう?」
「“主君”としての仕事……ですか?」
「差し当たっては、此度の戦いの“功労者”に労いのお言葉をいただく事でしょうか? 労いのお言葉ならば“治療中”の者でもいただく事ができるかと」
「ああ、なるほど……それは“主君”としては大事なお役目ですね」
ルドルフの提案にシャルリーヌは“目から鱗が落ちた”様な表情をしていました。
確かにそれは“皆の主君”である私にしかできない事です。
私はルドルフの助言の通りに“主君としての務め”を果たす事にしました。
街道脇の広場の中央で焚かれた焚き火の傍らでレオナールとウィルバードの治療が行われました。
レオナールは腕や脚に幾つかの切り傷があるだけでしたが、ウィルバードの方は背中に痛々しい傷跡がありました。
槍の柄で防いだとは言え巨大な戦斧の投擲をくらい、馬上から投げ出された為です。
「レオ君の傷はそこまで深くなさそう」
「で、では、レオナール様は私が治療いたしますね」
「ウィルバードさんは上着を脱いでうつ伏せに寝てください」
「承知しました」
ヘンリエットとジャスミンの手によって治療が施されていきました。
レオナールの方は多少傷跡が残る程度で初歩的な癒しの術で治療が完了しました。
一方でウィルバードの方は、戦斧の投擲と落馬という二度の打撃のダメージが大きいようでした。
傷そのものは治療できたものの、しばらくの間は痛みや違和感が残るのだと言う事です。
二人の治療が完了するのを待って、私は二人に向き合いました。
「レオナール、ウィルバード」
「「はッ」」
二人はその身を正すと、その場で跪きました。
「この度の戦いでは二人の奮戦に助けられました。 おかげで一人の犠牲を出す事も無く済みました、ありがとうございます」
「ルーナ様……」
「もったいないお言葉です」
私は二人に感謝の言葉を述べました。
レオナールは誇らしげに、ウィルバードは畏まって私の言葉を受け取ってくれました。




