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テラエ王国戦記 ー月の姫と鴉の騎士ー  作者: 黒狼
第一章 月の姫と騎士達
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?????視点 憎悪の瞳

 テラエ王国東部某所、山奥の廃砦……


 そこは“オレ達”の活動拠点の一つだ。

 ある日、東部各地に散っていた各部隊の部隊長が廃砦に集められた。


 オレ達を呼び集めたのは“組織”の中でも王国東部を任されている奴だ。

 本名は知らないし、知る気も無いが奴は“死神モルス”と呼ばれていた。


「オレ達を呼び集めるとは、何があったよ?」

「……口を慎め、貴様の気安い態度は気に障る」

「へいへい……相変わらず“統括者”様は気位の高いこって」

「……ふん」


 相変わらず辛気臭ぇ野郎だ。

 もっとも、こんな“後ろ暗い”組織に属している奴なんて大なり小なりこんなもんか。


「……斥候より連絡があり、“例の小娘”に動きがあった」


 “例の小娘”ってのは、前リュヌブレーヌ宮中伯の末娘の事だ。

 何故だか知らんが、“組織”のお偉方はその小娘が邪魔であるらしい。


「……前宮中伯の使者として“例の小娘”が各東部諸侯の所領を巡るとの事だ」


 へぇ……大事な末娘をわざわざ外に出すのか、馬鹿なのかそれとも、肝が据わってるのか。

 ただの平和ボケした隠居って訳では無いって事か。


「で、どうするんだ?」

「……無論、る」


 まあ、舐められてるのか、罠なのかは知らんが見逃す手は無いわな。


「……それと」


 そう言って、普段は仏頂面の“死神モルス”の奴がニヤリと口角を上げやがった。


「……“例の小娘”は臣下に“不落”を加えたぞッ!」

「“不落”だとッ!? “クラテールのルドルフ”をかッ!?」

「……それだけではない。 野盗狩りの頃の奴の配下だった“紅駒”と“銀矢”も供にいるぞ!」


 “不落”に“紅駒”に“銀矢”とは、思いの外面白れぇ連中が揃ってるじゃねぇかッ!

 ただ、護衛の餓鬼共を叩きのめして、小娘を処すだけかと思いきや、とんでもねぇ獲物を用意してきやがったなッ!!


 オレや“死神モルス”だけじゃねぇ、この場にいる部隊長全員が俄かに沸き立ってやがった。

 ここにいる連中はオレを含めてかつての“アルビオンとの戦争”で戦い足りて無い連中ばかりだ、気持ちも分ろうというものだ。


「……これは戦争ではなく暗殺だ。 お前らそれは分かってるな?」


 てめぇでオレ等を乗せておいて、冷や水をぶっかける様に水を差してきやがる。

 まあ、派手にやり過ぎると次に差し障るからな、そこはしょうがない。


「応よ」

「……“ティグリス”、一番手は貴様の隊だ」


 おうおう、真っ先にオレの隊を指名してくれるとは、奴にしては気が利いてるじゃねぇか。

 オレはそれを聞いて、獰猛な笑みを浮かべた。


「……欲に釣られて女共を連れ帰ろうとするな? 皆殺して、持ち帰れるものはすべて持ち帰れ」

「応よ、キッチリ皆殺して来るぜッ!!」


 オレは愛用の二本の戦斧を手に取ると、廃砦を後にした。


 やっぱ、皆殺しはいいッ!


 戦場に目を向けようともしない“為政者おえらがた”も

 綺麗事ばっかり並べる“騎士イヌども”も

 護られる事しか能が無いくせにオレ等を見下す“民衆クズども”もッ!!!


 血に汚れる事を蔑む奴らは等しくぶっ殺してやるッ!!


「“ティグリス”のザカリアス、出陣るぞッ!!!」

トピックス:テラエ東部の諸侯



 モンターニュフォール公爵


 東部地域の南を所領とする東部貴族の取り纏め役。

 南の内海に面し、隣国との貿易で莫大な富を築いている。

 その富を東部の守護神であるフェールポルド辺境伯へと投資し東部の平穏を確保している。



 フェールポルド辺境伯


 東部地域の東の国境線を護る諸侯。

 王国有数の保有戦力を誇る対アブルムの最前線。

 フェールポルド辺境伯マティアスは未だ三十代という若年でありながら天才的な軍略家として知られ、王国有数の英雄と称えられている人物。



 リュヌブレーヌ宮中伯


 東部地域の中央を所領とする諸侯で代々、王家の家宰を務める家柄。

 その役割から当主が所領を常に留守にしており、先代当主や当主の嫡子が代理で納めている。



 ヴァンブレーヌ伯爵


 東部地域の南東の国境地帯を所領とする諸侯。

 大国ポラリス帝国と国境を接しており、帝国との陸の玄関口となっている。



 ソワレフォレ伯爵


 東部地域の北西を所領とする諸侯。

 西は王国中央と北は森を挟んで王国北部と接しており、陸路の中継地点となっている。

 ソワレフォレ伯ドミニクの正室は前リュヌブレーヌ宮中伯ギャスパルの次女である。

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