初めのお話
ブクブクブ……
あちらこちらから気泡があがる。
ここは海の底。
人間たちが決してこられない神秘な所。
そこで、またひとつ…物語がはじまろうとしていた……。
“ …これでよし……これでまたひとり兄弟がふえた”
1人の神が今自分の手の中にいるものに目をやりポツリと呟いた。
そのものは彼が何を言っているかまだ理解できるほど覚醒していないが今、自分に命を与えられたという喜びに胸をおどらせ、まだ開いたことの無い口を一生懸命動かした。
“ ……ぁ……りが……とぉ………”
この胸の中の喜びが伝わってくれとまだまだ拙い言葉で何とか音をつむぎ出した。
まさか礼を告げられるとは思っていなかった神は驚き、目を丸くするもいとおしさに笑みを浮かべるとそっとそのものの頭を撫でる。
“ どういたしまして…そうだ、お前の名前を決めていなかったな……セル、セルにしよう…これからはセルと名乗るといい…そして………”
「…ん……あれ、また寝てた…?…」
目が覚めたセルは寝床にしている珊瑚礁から起き上がると今まで見ていた夢のことを思い出す。
(懐かしい夢……あの日、ただのヒトデだった自分に神様自ら人型に変化させてくれた……でも、あのあと何か言ってた気がするんだけど…何だったかな…?)
いつもこの夢を見た時に頭を悩ませるのだがどうしても思い出すことが出来ず、ただただ首を傾げるだけだった。