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玉子焼きと孫

作者: あみあみく

玉子焼き簡単そうなのに難しいですよね。

きれいに黄色くて厚みがあって甘いの作れませんもん。

読んだ後作ってみたくなる文章めざしました。

妻の作った玉子焼きを食べそこねる夢を見た。


甘くてふわふわの玉子焼き。


ご飯を食べ、みそ汁を飲み、小松菜のおひたしを食べた。


いよいよ、というところで目が覚めた。


「夢に出てきたときくらいは最後まで食わせろよな」


仏壇に手を合わせながらぐちる。


もう二年は食べてないな、妻の玉子焼き。


甘くてきれいに黄色いちょっと厚めの見た目。


俺が作るとあんなにきれいな見た目にならないし、ほどよい甘さにならない。


よく孫と妻が並んで台所に立っていたっけ。


「よし! 作るか」


今日も玉子焼き作りにチャレンジする。


始めたのは一ヵ月前だ。


その日も今日と同じ夢を見た。


最後まで食わせてくれなかったものだから気になってしょうがなかった。


玉子焼きなんて簡単だろうと思ってた。


卵を割るだろ。


砂糖を入れるだろ。


混ぜるだろ。


焼く。


これで完成!


なのになんでこんなに焼き目がついてて甘すぎるんだ!


こうして、俺の朝の習慣は終わる。


暇だ、今日は日曜日か? 時間の感覚がない。


年金暮らしになり、仕事をしなくなるとこんなにやることがないのか。


ピンポーン


そういえば、今日は孫の芳也がくる日だった。


俺の部屋は本だらけだから芳也はたびたび本を借りにくるのだ。


玄関までのろのろと歩いていく。


「薫じいちゃん、本借りにきたよ~。あれ? 何か作ってたの?」


靴をととのえ、上がると最初にその言葉をいった。


「おう、菫ばあちゃんの玉子焼きを作ろうとしてたんだ」


失敗したけどな、というと台所借りるよときたもんだ。


いいけど、と返すとテキパキと洗い物をすませた。


そして、玉子焼きを作り始めた。


手際がいい、俺よりも。


妻に似た横顔を見ながら感心する。


「調理学校に通ってるだけのことはあるな、将来はコックだっけ?」


「僕は和食だよ、卒業したら食堂を開こうと思ってる」


じゅううう


卵の焼ける音がする。


あっという間にできた。


見た目は妻の玉子焼きと同じだ。


まずは一口。


美味い。


はしが進む。


ご飯が欲しい。


みそ汁も。


皿は空になった。


芳也はお茶を出す。


「菫ばあちゃんの玉子焼き僕も好きだよ」


「そうか」


「僕がこの道を目指すきっかけ、菫ばあちゃんの玉子焼きなんだ」


それは初めて聞いた。


「玉子焼き美味かったぞ、菫には負けるけどな」


芳也が食堂を開いたら最初の客になろうと思う。


その後はまっすぐ帰って仏壇に報告するからな、菫。

玉子焼きつくりたくなりましたか?

読んでくれてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 夢にまで出てくるなんて、よっぽど美味しかったんでしょうね。甘すぎる原因……多分、調味料をお砂糖しか入れていないことでは……。
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