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最低なことした君が好き。

作者: あるまじろう

 結婚式をした一週間後に、男のインスタグラムで彼女と結婚したことを知った。私にはなんの報告もなかった。結婚式をする三日前に男は家に来ていた。


 男は浮気男であり、私が男にとって体のいい女だった。話を聞いて、体を貸して、そういう関係だった。だからこの突然の報告に驚きはしたものの予想できないことではなかった。私にとって信じられなかったのは男がそのインスタグラムを更新した後すぐに連絡をよこしたことだった。


 「今から行ってもいい?」


 男のへらへらとした顔が浮かんだ。けして顔がいいわけではないのに自然とひかれてしまう顔、見た目は真面目で角ばった顔で良いところといえば瞳がきれいなことくらいであろうか。だが私はその男の笑顔を思い出すとついつい体が反応してしまう。


 「いいよ」


 男から連絡が来て返信をするのは早かった。自分でも馬鹿だと思った。こういうのは駆け引きなのだ、いや所帯持ちの男に駆け引きもなにも今更ないか。


 さてと今から部屋を掃除して、いやその前に風呂に入っておこうか、酒のストックはあったっけ。あいつが泊まるなら今日夕飯作らなければいけない、ここのところコンビニ飯だったから腕が鈍っていないだろうか。


 そんなことを考えながらごみを片付け始めた十分後、チャイムが鳴った。早すぎでしょ、まだなんにも準備整ってない。チャイムが鳴った後、扉の鍵が回される。合鍵を渡していたから開けるのは自由だ。


「お邪魔しま~す。うわっ荒れてる。どうしたの?なんか嫌なことでもあった?」


 そういいながら男は近寄って私を抱きしめた。違う女の香りが鼻を通り抜けた、ラベンダーとハーブの混ざったオーガニックな香りだった、きっとあの彼女の匂いなんだろう。


「今、おまえが結婚報告したのをインスタで見て瞬間荒れた。さっきまでは綺麗だったから。」


 私は苦し紛れの言い訳をしながらも男のうでを引き寄せた。きっとほんの数時間前まではあの彼女を抱きしめていたのだろう。匂いが染みついている。


 彼女、いい香りだな。私はどんな香りがするんだろう。


「いやぁ話しても話さなくても会うのは変わらないからさ、別にいいかなと思ったんだけど、報告した方がよかった?」


 男はそう言いながら私の首筋に鼻をうずめる。まだ風呂に入ってないのだから勘弁してほしい。


「結婚して一週間で他の女に会いに来るってどういう神経してるの?」


 部屋はまだ全然片付いていなくて、化粧品やコットンやらが散らばっているし、鼻をかんだ後のティッシュも机の隅に置いてある。空になった昨日の夜食べたコンビニ弁当がプラスチックのごみ袋からわずかにはみ出している。


「こういうの絶対嫌がるだろうなと思って。」


 そういいながら男は私の顔を寄せて唇にキスをした。数時間前まで彼女とした唇でである。完全なる間接キスであり、私は男の予想通りかなり嫌がっている。


 嫌がっているのに男のなすがままで征服されていく様に頭の中の失ってはいけないものがどろりと溶け出していく。きっとすくって舐めたところであいつのアレと一緒で苦くて飲めたもんじゃないんだろう。


 最悪だ。嫌いになりたい。


 男が動いている間にぼんやりとインスタグラムに映った彼女の笑顔を思い出す。凄く可愛いというわけではないけれど笑った顔が春の訪れみたいで可愛かった。男は普段どんな会話を彼女としているのだろう。


「好きだよ」


 男は私の目を見て言う。嘘つけ絶対そんなこと思っていないだろう。

大きな瞳に私の顔が小さく映し出されるのが見えた。どんな顔しているかわからないけれど、男の思う


私の顔になっているのだろうか。


「好きだよ。」


 あとこんな茶番がどれくらい続くのだろうか。



 好きだよ。


 ずっと私は本当だったんだけどなぁ。


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― 新着の感想 ―
[一言] こういう男リアルでも沢山いるんだろうなぁ…
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