間章 III 愚者
ゴミをぐしゃぐしゃにしてゴミ箱へ。
しかしこれは更なる崩壊の引き金に過ぎなかった。
米国は大国だ。
土地も火薬や核も大量にある。
少なくとも、それらを巡って戦争が起きる程度には。
米国が滅んだのなら、それら資源はどうなるのだろう。
各国は援助という名目でこぞって兵を挙げた。
旧米国内で起きた小競り合い。
その火種が徐々に大きくなる。
最初は数人での言い合いだったものが、殴り合いへ発展する。
殴り合いの規模が大きくなり、部隊規模になってくる。
すると、殴り合いに銃を持ち込むヤツが出てくる。
向こうも銃を持ち出し、銃撃戦にまで発展。
こんな風にどんどん規模が大きくなり、やがて旧米国内での争いから国同士の戦争になる。
旧米国内だけでなく、様々な場所が戦禍に巻き込まれていき、たどり着いたのは第三次世界大戦だった。
アインシュタインはこう言ったという。
「第三次世界大戦がどのように行われるかは私にはわからない。だが、第四次世界大戦が起こるとすれば、その時に人類が用いる武器は石とこん棒だろう」
第三次世界大戦で核が使われ、文明が滅ぶというのだ。
よもや、その予言通りになるとは。
それから数年後。
最早争うことに疲れた人類が次にしたのは群れることだった。
知識と集心力のある人の元に他の人が集まって来るのだ。
しばらくすれば殆ど集団の形は出来ていた。
そのときできた集団は二つ。
帝国と、王朝だ。
帝国はもともとある程度賢い者達が集まって暮らしていた所へ、他の者が入れてくれと頼みにきたのだ。
そのため、初期メンバーと後から来た者の立場の違いはあったものの、激しい身分差なども無く、平和な集団だった。
帝国という名前は、後から入った者の一人が、初期メンバーをふざけて帝と呼んだことに起因する。
一方、王朝は付き合いのあった友達同士が、一人をリーダーとして組織を作り、そこに人を呼んで規模を大きくしていったもので、初期メンバーがリーダーの事を王と呼んでいたため王朝となった。
その後、初代王は自らの子供に反逆を起こされ死亡。
その子供がリーダーとなった。
以降、その王は初代王の頃の集団を古王朝と呼び、自らの代からの集団を新王朝と名乗った。
結局、私はこのどちらにも馴染めず、逃げる場所を探した。
一人が怖かった。
当然、逃げる場所など何処にもありはしなかった。
そこで、コールドスリープという逃げ道を選んだ。
それから800年程が過ぎ。
戦乱の音で目を覚まし、今に至る。
間章はこれで終わりです。
次回 第981次戦争 I 失われた技術