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戦争屋  作者: l⊥l [+]
間章
5/7

間章 I 既知との遭遇

一番長い。

この前の戦争で活躍した結果、敵国に目をつけられた様だ。

人の少ない路地を歩いていたら、突然降ってきたのだ。

刺客が、降ってきたのだ。

大方その辺の屋根に潜んでいたのだろうが、あれは怖かった。


さらに敵はいきなり正拳突きを繰り出してきた。

顔面に迫り来る拳をいなす。

しかしこれはフェイント。

迫り来る本命の後ろ蹴りをバックステップで避け、更にナイフで一撃入れる。


が、ナイフを喰らってもダメージの入った様子は無い。

あぁ、機関銃が使いたい。

せめてサブマシンガン、いや、この際拳銃でも構わない。

手榴弾を持ってはいるものの、この距離で使えばこちらまで死にかねない。

距離をとろうとしてもすぐに近寄られてしまう。


私が狙われるとしたら直接戦闘をせずに殺せるスナイパーだろうと思っていたが、まさか体術使いを寄越すとは。

こちらはナイフを持っているものの、これは毒すら塗っていない本当にただのナイフだ。

銃ってかなり有り難い物だったんだな。


と、そんなことを考えながらも敵の正拳突きの軌道をそらし、そのまま一本背負いの様に投げ飛ばす。

直後、脳が極大の危険信号を発し、半ば本能的に首を横に倒す。

それでなんとか助かった。

こいつ、投げ飛ばされながら銃撃ちやがった。


まぁ良い。

その銃、貰おうじゃないか!!


手首にナイフを突き立て、もぎ取るように銃を奪い取る。


しかし、その一瞬。

銃を手に入れた直後の刹那の間。

……私は油断してしまった。


その隙に後ろに回られた。

敵の蹴りを横に転がるように避け、その勢いを殺さずに体勢を整え、発砲。

しかし敵もそう簡単にやられてはくれない。

敵が私がしたのと同じ様に首を横に倒して弾を避ける。


矢張り強い。

こいつまさか……

戦争屋?


「そうだ。お前と同じな。」

どうやら声にでていたらしい。敵から返事が返ってきた。


それにしてもナイフが通らないなんて人間とは思えない強靱さだ。

「まさか、人間とは思えないなんて言葉をあなたの口から聞くとは。機関銃の悪魔、ナイフの死神と名高いあなたの口から。」

「誰が、悪魔だ!誰が死神だ!こんな世界で、人を殺さずには生きていけないこの世界で、誰が望んでこんなことやりたいと思う?」

彼女の口から言葉が溢れ出してくる。

それに対して軽く返す敵。

「それで?だからなんなんです?」


言葉とナイフ、突き蹴りの応酬が交わされる、その中で。

ある瞬間、拳とナイフがぶつかり合い、互いの力が拮抗する。

しかしそれも刹那の間だけ。


二人が後ろへ跳ぶ。

そしてまた同じ様に打ち合う、と敵は思っているだろう。


しかし、私が愚直に打ち合う訳がない。

この瞬間を待っていたのだ。


懐から手榴弾を取り出し、ピンを抜く。

敵の顔が徐々に驚愕、そして恐怖に塗り潰されていく。


手榴弾が爆発し、爆風が顔に強くあたる。

爆煙が晴れるのを待たずに手榴弾をもういくつか投げ、敵に止めをさす。


煙が徐々に晴れ、敵の死体が確認できる。

念のため本当に死んでいるか確認する。

本当に死んでいる。


この戦闘は終わった。

なかなか厳しい闘いだったが、勝ったのだ。

しかし、矢張り戦争屋は強い。

敵国にいる戦争屋の情報を調べるべきだろうか。


茂みに隠れた観測者に発砲しながら考える。

観測者とは、暗殺をするときに、勝った場合はそれが分かるように。

負けた場合は、何故負けたのか対策をとるためにいる。

当然、素直に情報をくれてやる意味は無いので、こうやって始末する訳だ。


彼女は知らない。

観測者は他にもいることを。


彼女は知らない。

彼女が知っているのは普通の人間に対する暗殺のセオリーでしか無いことを。


彼女は知らない。

次は彼女への対抗策が練られた、更に厄介な敵が来ることを。



しかし敵も知らない。

彼女のナイフはあくまで補助にすぎないことを。


敵は知らない。

この戦闘のデータが殆ど参考にならないことを。



双方が互いを知らぬまま、終わらぬ戦乱の次の戦闘が人知れず幕を上げようとしていた。

次も間章、過去編です。

この世界で何があったのか。

次回 間章 II 過去語り

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