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八十七話 やっぱりでした!!!

 マッパは穴の入り口で一人、仁王立ちしていた。


 鈍い動きだった灰色スライムたちは、そんなマッパを見て、明らかに動揺している。

 

 体を震わせたり、スライム同士で何かしらコミュニケーションをとるような仕草……中には、怯えていたり、身を隠そうとする者さえいた。


「……マッパ」


 埋まっていた白骨は、ここにいたスライムの誰かのものであろう。


 掘った際、ピッケル持ちの灰色スライムは呆然としてしまっていた。

 白骨があったのが、ショックだったはずだ。


 その白骨は、形からして神話に出てくるドワーフのもの。


 目の前のマッパも、このドワーフでないかと俺たちは考えていた。


 とすれば、このスライムたちはドワーフのなれの果て……マッパの仲間だった可能性もある。


 周囲を一瞥いちべつするマッパ。

 それを見て怖気づく灰色スライムたち。


 洞窟の入り口にあった遺骨で、ドワーフのものと思われたのはマッパのものだけ。


 ……海に沈む前は、あの入り口はいわば山の山頂付近だったはずだ。


 そんな場所に一人……もしかして、このマッパ……ドワーフでもすごい奴なんじゃ。


 ピッケル持ちの灰色スライムが、シエルに身振り手振りで何かを伝える。


 すると、シエルは床に自分の粘液で文字を書き始めた。


「これは……バーレオン文字」


 シエルはバリスから文字を学んでおり、最近はこうして文字で何かと伝えてくれたりする。


 俺は、シエルの書いた文を読んでいく。


 その内容は、


「……なんだこの子供? どうして裸なんだ!? 誇り高きドワーフが裸なんて、恥ずかしいからやめろ! まだ小さいとはいえ、親は何を考えている! ……と言っている」


 どうやら、スライムたちはただマッパが裸であることに驚いていただけのようだ。


 怯えているのはやばそうなやつだと思っているのだろう。身を隠しているのは恥じらっているのかもしれない。


 フーレが隣で言った。


「やっぱ、マッパがおかしいだけじゃん!」


 タランも手をあげて、それに同調する。


 灰色スライムたちもぴょんと跳ねて、マッパを叱るような仕草を見せた。


 マッパは何故か恥ずかしそうに頭をポリポリ掻く。


「……やっぱドワーフは裸を好むような種族じゃなかったんだな」


 安心する一方、俺はある言葉が引っかかった。


「……子供? マッパが子供だって言ったのか?」


 シエルは俺の言葉を聞くと、すぐに灰色スライムにジェスチャーを見せる。


 灰色スライムがそれに答えるように何回か跳ねると、シエルはまた床に文字を書いた。


 文字は一文字……数字で七。


「七……歳? 生まれてから、七年ってことか?」


 こくりと体を縦に振るシエル。


「間違いないのか? 俺たちと同じ一年……それが七回ってことか?」


 シエルがうんうんと体を揺らすと、マッパは己の体を自慢するように腰に手を添えた。


 俺はフーレとタランと顔を合わせる。

 そしてマッパを見て、思わず声を上げた。


「「……七歳っ!?」」


 この世界にリヴァイアサンが本当に存在するのを知ったのと同じぐらい、俺たちは衝撃を受けるのであった。

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