表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/279

八話 新しい機能が追加されました!!

 【洞窟王】の機能である助言者の言葉に、俺は首を傾げる。


 ら、ランク2?


≪ランク2にアップしたことで、新たな機能が追加されました≫


 とにかく、【洞窟王】でできることが増えたようだ。

 それで、新たな機能というのは……


工房ワークショップ機能を追加しました。インベントリ内の採掘物を加工、合成できます≫


 本当か?! すると、鉄鉱石を普通の鉄にできたりする? 


 鉄に加工できれば……

 もっと大きいピッケルを作ったり……

 軽いピッケルを発明したり……

 格好いいピッケルを生み出せる。


≪鉄鉱石を鉄に……製鉄と認識。製鉄が可能な工房ランクに達していません≫


 なんだ……それじゃあ、何ができるんだ?


 肩を落とす俺に、助言者は続ける。


≪……現時点で可能な加工と合成の品目を表示します≫


 すると、俺の頭にそれらの品目が浮かんだ。


◇工房品目


 石材

 砂

 大理石材


 え? それだけ?


 拍子抜けする俺だが、説明を聞くと、石材だけでも奥が深かった。

 

 石材を作るためには、採掘物の岩を消費する。


 その際、大きさや形を自分好みに指定できるらしい。


 通常、インベントリの岩×1は、1㎏という単位の石材に相当するという。

 例えばこれを2㎏の石材にして、更に大きなものをつくることもできるのだ。

 形も、真四角から細長、球や円柱など様々な形を選べた。


 自分の頭に思い描いた、複雑な形も作成可能だ。

 つまり、石像やおしゃれな柱なども作れる。


 とはいえ、俺のセンスでは大したものは作れそうもないが……


 まあ、とにかくだ。

 これならもう、何かを作る時に不揃いの岩を慎重に積み上げる必要もなくなる。


 大理石材も、石材同様に自由なものを作れる。


 また、砂も岩からつくれた。

 だが、石灰岩や鉄を消費して色や手触りを変えることもできるらしい。

 

 加えて、この作った石と砂を合成することで、砂利を作れるという。


 石材と砂かと、最初はつまらなく思った。

 しかし、工夫次第では島の面積を拡げることだってできる。


 そもそも、加工に人手が要らないということが、何よりの強みだろう。

 ただ岩を四角にするだけならまだしも、柱にするのは結構な時間が掛かるはずだ。


 そして助言者は、もう一つの機能を説明する。


≪また、彫刻デザインカット機能を追加しました。採掘の際、自由な形に成形できます≫


 今、採掘した後の場所は、ごつごつとしている。

 だが、これを使えば、壁や地面を平坦にできる。

 もちろん、意図的に傾斜をつけることもできるだろうし、階段にすることも可能だ。


 つまり、上陸の難しいこの島の岩場も綺麗にでき……


≪【洞窟王】による機能、効果付与は、現在は洞窟内のみでしか発動しません。工房機能、及びインベントリからの取り出しは、洞窟外でも可能です≫


 そうですか……まあ、十分でしょ。

 砂をいて、なだらかにしたっていい。


 いずれにせよ、これらの機能も加わったことだ。

 ちょっと島の改造計画を練ってみるか。

 

 ……っと、その前にこいつらのことを忘れてたな。


 新たにテイムした蜘蛛の魔物たちが、じっとこちらを見ている。


「ああ、悪い悪い。俺はヒールっていうんだ。とりあえず、俺は地上に戻るよ。もしよかったら皆にも紹介するから、付いてきてくれ」


 って、通じるわけないか……


 まあ興味が湧いたら、勝手に出てくるだろう。


 テイムスキルは、従魔がテイマーへ危害を加えようとするのを禁止する。

 また、同じテイマーの従魔同士が互いを傷つけることはない。

 命令に従うか従わないかはテイマーと従魔の関係次第だが、この二つはスキルが強制していることだ。


 だから、この蜘蛛がゴブリンやスライムを攻撃することは不可能。


 現に、スライムのシエルは、蜘蛛の頭に乗ったりして戯れている。

 蜘蛛も、そんなシエルの柔らかい体を長い前脚で軽くつつくだけだ。

 テイムスキルの制約ということ以上に、互いに興味があるらしい。


 俺は元来た道を戻る。

 元々一掘りのつもりだったし、ランクとやらがアップしたから今日はもういいだろう。


 空洞を出て振り返ると、そこにはとことこと付いてくる蜘蛛たちが。

 どうやら一緒に来るらしい。


 だが、この坂道。

 子はまだしも、親は狭そうである。

 

「あー……ちょっと、待っててくれ」


 俺はさっそく新しい彫刻機能を試すことにした。

 

 ピッケルで坂を少し掘り下げ、道を広くしながら登っていく。

 その際に、中央を階段状、脇をなだらかな斜面にしながら。


 これで蜘蛛も通れるし、俺も少しは歩きやすくなるな。


 そうして入り口に着くと、まだゴブリンたちが輝石を囲んでいた。


「おお、大将! 徐々に近くなる、ピッケルの心地よい音色が聞こえましたぜ! 俺もやっぱり一掘り行こうかと思ったところです」


 エレヴァンがにっこりと俺に振り向く。

 だがすぐに、その顔は恐怖へと変わった。 


「え……え? うっ、うわあああああああああっ!?!?」


 エレヴァンだけじゃない、リエナやバリスも怯えている。

 あ、後ろのやつか……


 振り返れば、赤く光る眼がいくつもあった。

 言うまでもなく、タランたち蜘蛛の目だ。


「た、大将っ!! 後ろ! 後ろ!!!」

「落ち着け、エレヴァン。こいつらは、今しがた俺の仲間になったやつらだ」

「な、仲間っ?! こいつらがですかい?」

「ああ。掘った先に空洞があってな。そこにいたんで、仲間にしたんだ」

「そ、そうでしたか……すみません、俺、蜘蛛が苦手で」


 ほっとエレヴァンは胸を撫で下ろす。

 リエナとバリスも、なんだと安心した様子だ。


 一方のスライムたちは、タランの頭に乗ったシエルの真似をしようと、蜘蛛たちに向かっていた。


 そんな中、バリスが不思議そうに呟く。


「……それにしたって、驚きましたぞ。彼らはケイブスパイダーかと思いますが、まさかここまで大きな者たちがおるとは」

「とすると、大陸のケイブスパイダーはもっと小さいってことか?」

「いかにも。普通はワシとそう変わらぬ高さです」


 バリスが言うには、俺の腰ほどの高さが、普通なのだそうだ。

 それでも大きいと思うけどね……


「俺はケイブスパイダー自体、今日初めて見たからなあ。確か、洞窟や廃坑にでる魔物だったっけ」

「ええ。非常に凶暴で強力な毒をもっています。吐き出す糸は鉄よりもかたく、よく伸びると言われておりますな。我々ゴブリンもよく洞窟を隠れ家にしましたが、彼らに殺された人間や魔物の骨はよく見ました」

「へえ……」


 結構怖い奴じゃないか。

 しかし、タランたちは普通より大きいのに、随分と簡単に俺に従ったな……


「ゴブリンの間では、洞窟の奥に土があったら気を付けろとよく言われております。その土は実はケイブスパイダーの……その……」


 バリスは知恵者だから、言葉を選ぼうとしてるのだ。

 土の正体は、この蜘蛛たちが排出したものなのだろう……


「だいたいわかるよ……空洞の下は一面、それだったからな」


 まあ、匂いもないし、実際本当の土みたいだった。

 蜘蛛の出したものだし、あまり気にしなくてもいいだろう。


 バリスは頷く。


「そうでしたか……ですが、それは朗報ですね」

「え?」

「彼らのそれは、地上の土よりも良く作物が育つと言われております。太陽が無くても小麦が育つなどと言われているぐらいです。さらに蜘蛛糸を混ぜ込んでおるので水が抜けにくく、砂漠でも育つとか」

「ほう。でも、なんでわざわざ蜘蛛糸を混ぜるんだろうな?」

「ケイブスパイダーはキノコを自分で栽培するのですよ。人間や魔物の肉も食べますが、主食はきのこです」


 人の肉も食べるか……


 リエナは挨拶がてらに、お腹空いてませんかと焼き魚をタランに差し出している。

 

 するとタランは遠慮することもなく、一瞬で焼き魚を口の触角で掴み取った。

 それを見たタランの子供たちも、リエナに群がり魚を求める。


 リエナは少し怯えるが、すぐにあたふたと新たな焼き魚を用意しに行った。


 キノコがあれば生きていける。

 だが、肉や魚は嫌いじゃないということか。


「なるほど……だから、あんな隔絶された中でも、あいつらは生きてこれたんだな」


 そしてバリスが朗報と言ったのは、この島でそんな土が手に入るということだ。

 

 前も言ったが、この島は岩がむき出しの島。

 土がないので、植物も生えない。


 そこに少量とはいえ、質の良い土が手に入ったのだ。

 種子があれば、何かを育てることもできるだろう。

 

 まあ、その肝心の種子が、果物のものぐらいしかないのだが……

 だいたいの果物は木が育つまで数年、収穫を待つ必要が有る。


「とりあえずは簡単な畑を作ってみるか……あ、土地もセットで広げてないと……」


 新たな機能とケイブスパイダーのおかげで、やれることが一気に増えたな。


 蜘蛛糸も上手く加工すれば、繊維が作れるはずだ。

 そこから、服や魚網も作れるかもしれない。


 とにかく採掘したいが本音だが、共同生活である以上、皆のことも考えないと。


 まあ、とにかく今は……


「とりあえず、歓迎会だな。狭い島だし、皆で仲良くしようぜ。 ……リエナ、手伝うよ!」


 俺は魚を取って、リエナと一緒に焼き魚を作り、ケイブスパイダーたちと交流を深めるのであった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ