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六十七話 魔法が効きませんでした!?

 赤い光は、すぐに点ではなく線になった。


 俺たちに、無数の赤い光線が向かってくる。


「攻撃してくる!?」


 焦るフーレだが、俺の周りにはシールドが展開されており、すぐにその光線は隔てられた。


「こいつら……ゴーレムか?」


 俺は火魔法のファイアを無造作に赤い光に向け放った。


 火炎が赤い光の主たちに着火し、周囲の状況が照らされる……すると、


「え? 岩が浮かんでいる?!」


 フーレの言うように、この無機質な空間には浮遊する岩が無数にいた。


 岩というよりは、随分と丸く球のよう。

 色は真っ黒で、中央のくぼみのような場所から赤い光が漏れている。


「すごい数だ……しかも、なんでこいつら浮かんでいるんだ?」 


 数十……百近くの浮遊する岩……これもこの地を守るゴーレムの一種なのだろうか?


 そうこうしている内に、俺の火魔法は浮遊する岩を包み込んだ。

 が、彼らはその火を纏ったまま、再び光線をこちらに向けてきた。


「火は効かないか……なら」


 俺は次に氷魔法フリーズを放つ。


 火が効かないなら、凍らせるまでだ……

 観察もしたい、そう思ったのだ。


 白い冷気は浮遊する岩の大半を包み込み、彼らを凍りつかせた。


 やったというフーレの声が響く。


 しかし、氷は瞬く間に光るくぼみに吸収されてしまう。


 そればかりか、赤い光が青い光へと変わり、今度は青い光線を出してきた。


「まさか、こいつら……」


 青い光線は俺の張ったシールドにぶつかり、そこで氷となる。


「……こいつら、俺の魔法を跳ね返してきた?」

「ヒール様、私も!」


 隣にいたフーレも両手を前にして、雷魔法を岩に放つ。


 が、それも岩によって吸われてしまう。

 今度は黄色い光に変わると、俺たちに黄色い光線を向けてきた。


「こいつら、私たちの魔法を真似してる?」

「ああ、決まりだ……しかもこいつらは、俺たちの魔力を吸収している」


 魔力を探知するスキルで、俺たちの魔力がそのまま彼らの身に宿っているのが見える。


「じゃあ、こいつらに魔法は効かないってこと?」

「いや……俺の持ってる魔力をぶち込めば」


 だが、シールドを張りつつ戦わなければいけない。


 なので攻撃にはあまり魔力を集中できない。

 それならまだしも、あまり魔力を吸わせ過ぎて、逆にその魔力をぶつけられたらどうなるか……


 安全第一と皆と約束したんだ。ここは撤退も……うん?


 俺のピッケルが揺れた。

 目を下に向けると、シエルがつんつんと俺の片手のピッケルをつついている。


「どうした、シエル? ピッケルがどうかしたのか?」

「もしかして、ピッケルであれを叩けってこと?」


 フーレが言うと、シエルは体をうんうんと縦に振った。


「なるほど、岩相手ならピッケルってことか……よし。やつらを直接叩こう。十五号、入り口は任せた」


 十五号は頷いて、入り口の前で盾を構える。

 入り口にはシールドを張っておくが、念のためだ。


「それじゃあ、フーレ、タラン……あと、マッパ」


 いつの間に、マッパも金槌を手に横並びになっていた。


 そして自信満々な顔を俺たちに向け、深く頷いた。


 マッパも戦うのか……? いや、力はあるのは知ってるが。


 シエルが俺の肩に乗るのを確認して、俺は皆に言った。


「皆の周囲にシールドを張る。だけど、あまり離れすぎるな……行くぞ!」

「了解!」


 俺たちはピッケルを振り上げ、岩へと近づく。


「うおおおおっ!!」


 壁を掘るよりも強く、俺は浮遊する岩にピッケルを振り下ろした。


 すると、岩はばらばらと音を立て、崩れ落ちる。


 ミスリル製のピッケルのおかげか、【洞窟王】の力か。

 いずれにせよ、これなら……


「いける……!」


 俺はすぐに隣の二体目にピッケルを振りつけた。


 またも一撃で崩れる岩。

 よし、これなら採掘するのとなんら変わらない。


「他の皆は……」


 俺は岩と戦いながら、横目で皆の様子を確認する。


「えいっ!!」


 フーレは多少苦戦しているようだ。

 三回ほどピッケルを振って今、ようやく一体倒した。


 タランもその四本のピッケルで、次々と岩を砕いていく。


 と思えば、すぐにぴょんと飛び跳ねて新たな岩の集団に切り込んでいった。

 シールドを張っているので心配ないのだが、軽い身のこなしで光線を華麗に完全に避けている。

 

 ……タランが戦うところ、初めて見たな。


 いつも温厚に見えたタランだったが、戦闘の時は人が違うというか、なんか別人だ。

 いや、人ではないのだが、今はその見た目に見合った動きを見せている。


 今のところ、俺たちの中で一番岩を倒しているのはタランだ。

 

 俺も負けられないな……それでマッパは……あれ?


 マッパのやつ、どこいった? あ、あそこか。


 少し離れた場所で、複数の岩から光線を向けられている場所があった。


 あまり離れすぎるなと言ったのに……


 俺はピッケルで岩を薙ぎ払いながら、マッパのほうへ向かう。


 すると、徐々にマッパの姿が見えてきた。


 そこには、崩した岩を物色するマッパの姿が。


 やはり、戦闘をしにきたわけではなく、単に岩を見たかっただけか。

 と思えば、目にもとまらぬ速さで浮遊している岩を金槌で粉砕し、それをまた物色する。


 岩にも違いがあるのだろうか?

 そういえば、こいつらは何でできてるんだろう。


 一見、黒い岩でできているようだが、ガラスのように見えなくもない。

 

 そしてその中でたまに、金色の石と水晶のようなものも見える。


 崩している内に分かった事だが、この岩の中央には金の石と水晶が埋め込まれているようだ。

 

 光線を発しているのは、恐らくこの金の石か水晶か。


 金色の石……魔物を進化させる昇魔石か、魔力を宿らせることができる魔導石のどっちかだろう。

 この場合、魔導石の可能性が相当高そうだ。


 とすると、これもゴーレムの一種か?


 よく見ると、黒い石と紛れるように見覚えのある青い石も見える。ゴーレム作成の際使う、偽心石で間違いないだろう。


 これはむしろ僥倖ぎょうこうと言うべきか。

 新たなゴーレムが作成できる。しかも、魔導石で魔法を身に着けたゴーレムを、百体近くも。


 水晶は……分からないな。

 戦いが終わったら、調べよう。


 周囲を見ると、百体近くいたはずの岩は、もうずいぶんと減っていた。

 

 俺は十体ほどしか倒していない。

 もうだいぶ奥に行ってしまったタランが、殆ど倒してくれたようだ。


 俺は近場にいた最後の一体を倒す。


 フーレも周囲の岩は倒し終わったらしい。


 マッパもいつの間にか、水晶を十個程宙に浮かせ、悠々とジャグリングしていた。


「よし、こっちのほうはいいな。タランももう数体……と、終わったか」


 タランも奥のほうで最後の一体を倒し終えたらしい。

 俺に四本のピッケルを振っている。


「タラン、さっすが!」


 フーレもそれに応えるように手を振り返した。

 俺もピッケルを掲げ、タランの健闘を称える。


 しかし、その時であった。


 タランの後ろ側の天井が開き、そこに巨大な浮遊する岩が現れるのであった。

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