表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
63/290

六十三話 地下の秘密を聞きました!

「……もちろん。俺は掘るよ」


 俺が答えると、シエルはふふっと笑った。


「……お聞きするまでもなかったですね」

「まあ、ヒール様の生き甲斐みたいなもんだからね」


 フーレもにやにやとそう言った。


「お前ら、人を採掘バカみたいに言いやがって! まあ、言われても仕方ないけど……」


 採掘が生き甲斐なのは本当の事だ。

 そしてシエルに頼まれなくても、俺は掘り続けていただろう。


 しかし、こうやって掘ることで、むしろ俺には別の心配があった。


 それは今までこの地下に住んでいた者たちの許しもなく、遺構を掘り、そこを漁ることについてだ。


 俺はシエルに訊ねた。


「……だけど、本当にこのまま掘って良いのか?」

「ええ。それが私たちの願いでもあります」


 シエルはそう言って、俺の前に光の球を浮かべた。


 光はやがて、木の枝のような形へと変わっていく。


「……これは?」

「隕石が落ちる前の、私たちの都市の地図です。今ではだいぶ変わってしまってると思いますし、そもそも、最初から通路がなく移動に転移石が必要な場所もありました」

「転移石……あ、この前のワイナリーで手に入れた石のことか」


 確か、転移石同士の間で移動できる石だ。

 

「はい。そうすることで、私たちはこの狭い山の中を移動していたのです。そして一番下の部分をご覧いただけますか?」


 シエルの声に、俺は立体図の下の部分を見る。


 そこには、たくさんの通路と巨大な空間が。

 

「ここに、私たちの人口の大半が存在していました。そこに、都市の制御装置もあります」

「制御装置?」

「ええ。都市の全てのゴーレムを操り、私たちの冷凍保存した体を解凍する装置もそこに」

「じゃあ、シエルの体も……」

「はい。体自体はこの墓石の中ですが、そこで装置を押せれば……でも、別に私たちはこのままで構いません。申し上げたいのは、そこにある装置を何とかしない限り、地下にいるゴーレムたちはヒール様を襲い続けるということです」

「なるほど……でも、ここのゴーレムはどうして」

 

 俺は壁沿いに待機するゴーレムを見て、そう訊ねた。


「この場所では、一切の戦闘行為が禁止されているのです。とにかく、掘り続けるのであれば、まずはその制御装置に向かうのが安全だと思います」

「分かった。場所としては……このまま更に下のほうだな」

「はい。本来は階段が無事であれば簡単にいけたのですが……私も地中を探しましたが、崩れてしまっているようで」

「分かった……それと聞きたかったんだけど、タランは知り合いなのか?」

「ええ。私がお会いした時は、もっと小さかったと思いますが……ここでは様々な種の最後の砦として、人間以外の住処もありました」

「なるほど。じゃあ、タランもその時代の生き残りだったわけだな」


 俺が言うと、タランは体をこくりと縦に振った。


「そうだ……それについてですが、私が知る限り皆様平和的な方でした。でも、長い年月でどうなってるか……」


 タランたちケイブスパイダーは俺と会った時、襲ってこなかった。

 だが、皆そうであるとは限らない訳か。


「会ったら襲われることもあるってことか……分かった」

「申し訳ございません。現在では何も把握できておらず……また、何も役に立つようなものも……」

「大丈夫だ。それに掘るのが俺の楽しみでもあるし……」


 掘っていたら未知の発見がある。それが俺の楽しみだ。


 まあ戦闘は嫌だけど……


「ふふっ。ヒール様ならそう仰ってくださると思いました。あっ……そろそろお話しするための魔力がなくなってしまいそうです……」


 次第に光に包まれるシエルは、透明な両手を俺の右手に近づける。


「ヒール様……これからもご一緒にいさせてくださいね」


 シエルは完全に光になると、やがていつものスライムの体に戻っていった。


「シエル……ああ、これからもよろしくな」


 俺の声に、シエルはぴょんと飛び跳ねるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ