表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/290

六十一話 お墓を発見しました!

「よし、今日は誰が一番掘れるか、勝負だな」


 洞窟の最奥まで下りて、俺はタランとフーレを前に言った。


「うん。負けないよ!」


 フーレがそう答えると、タランもピッケルを力強く握って応じた。


 アースドラゴンの商人ロイドンが来た翌日、俺たちは洞窟にいた。


 ロイドンが通ってきた道と洞窟の境目は、分かりやすいように石材で装飾してある。


 いわば外界との門のような場所なので、バリスが言うには一応見張りを置いてくれるらしい。


 そして昨日、ロイドンから購入したドラゴンの卵は、世界樹の下にもうけた石造りの家に置いてある。


 中にはキラーバードの羽毛布団を敷いており、暖炉のようなものがあってとても暖かくしてある。

 これは、ドラゴンを孵化させるための施設だ。


 ファイアードラゴンのものが一個、ワイバーンのが三十個。

 それだけのドラゴンが島の仲間になってくれれば心強い。だから、なんとしても孵化させたいのだ。

 

 誕生しそうになったら、俺が対応できれば俺が、もし駄目ならリエナが親として立ち会ってもらうことになってる。


 まあ、ロイドンの話だと、この島の誰が親でも問題はないと思うが。


 そして俺は……今日も採掘というわけだ。


 あの時掘っていなければ、ロイドンとは会えなかった。この島では、掘れば掘るほど、何かが起きる……はず。

 まさか地下で、ドラゴンの商人と会うことになるとは思わなかったが。


 だが今日は、ただ採掘するわけじゃない。

 フーレとタランとちょっとした競争をするのだ。

 

 横並びになり、そこから同じ方向に掘っていく。

 そして昼まで掘り続け、誰が一番深く掘れるかを競うのだ。


 今日、リルとメルは世界樹の上に遊びに行ってる。

 だから、俺も今日は本気が出せそうだ。


 フーレは、俺とタラン、そして回収係のスライムが位置に着いたことを確認すると、元気よく叫ぶ。


「よおし、それじゃあ……スタート!」


 瞬時に俺はピッケルを振り下ろす。


 と同時に、両隣からも岩が砕かれる音と、ピッケルが打ち付けられる音が。


 少しでも油断すれば負けてしまう……俺は一心不乱にピッケルを振った。


 しかし、俺もだいぶ掘れるようになったな……


 もちろん、最初掘った時も結構掘れると思った。

 素人の俺の一振りで、岩がまるでガラスのように簡単に割れたのだから。

 

 しかし、今は自分の体の何倍もの容量が掘れるのだ。


 そういえば、俺の【洞窟王】のランクは3だったな……そろそろ4になるか? それとも採掘だけじゃ上がらないのかな?


 そんなことを思いながら、五分は掘っただろうか。

 

 突如、ピッケルが堅い壁に弾かれた。


「なんだ? まさか、またどこか部屋みたいな場所か?」


 以前掘り当てた祭壇のあった部屋や、ワインが保管されていた場所。

 それらと同じく、明らかに何者かによってつくられたような壁があったのだ。


 俺がピッケルを振るのをやめて少しすると、両隣からも音が響かなくなった。


 そして左右の岩壁ががしゃんと崩れた。


 そこからフーレとタランが現れ、俺の前にある壁を見た。


「やっぱ、ヒール様のところも。とすると、タランのも?」


 フーレの問いにタランは、こくっと胴体を縦に振った。


「とすると、それだけ幅があるってことか……シエル。スライムに、バリスへ報せてきてくれるよう頼めるか?」


 シエルは回収係のスライムにぴょんぴょんと跳ねる。

 スライムはそれに応じるように、地上へ向かった。


 フーレが言う。


「また、前のゴーレムみたいなのが中にいるのかな?」

「どうだろう……魔力の反応はないみたいだけど」


 俺は目を閉じ、壁の向こうに意識を集中させた。


 しかし、そこに魔力の反応はない。


「いきなり入って、何かされるってことはないみたいだな」

「じゃあ、入ってみる?」

「ああ。だけど慎重にいこう。俺がシールドを張るから、フーレがぶち抜いてくれるか?」

「わかった!」


 フーレは頷くと、思いっきりピッケルを壁に振り下ろした。

 

 だが一度では壊せないので、続けて、二度三度と壁を叩く。


「これでどうだ!」


 フーレの力強い声が響くと同時に、壁ががしゃんと崩れた。

 

 がしゃんといっても、本当にガラスが割れたような……


 抜いた穴の向こうから漏れ出た光に、俺は思わず目を閉じた。


 恐る恐るゆっくり目を開くと……


「え……なに、ここ?」


 俺達の前に青々とした草原が広がっていた。


 この洞窟の地下で、色とりどりの花と、長方形の水晶が至る所から立っている。

 外? いや、そんなわけない……繰り返すが、ここは洞窟の地下。今俺達がいるのは、海の下のはずだ。

 

 だがそこまで遠くない場所で、ガラスのような壁が見えた。よく見ると、天井もガラスのようなものが張られている。

 

 ガラスの向こうからは太陽のような光が漏れており、まるで地上に設けられた温室のようにも思えた。


「きれい……」


 フーレは顔を上げながら、そう呟いた。


「ああ……まるで、外にいるような」


 しかし、ここはどこだと言うのだろうか?


 意外だったのは、シエルはともかくタランが何も驚いた様子でなかったことだ。


「タラン。お前はここを知ってるのか?」

 

 タランは静かに首を縦に振る。

 いつも動きが激しく、感情表現豊かなタランだが、ここでは非常に静かであった。


 そしてまるで、ここは特別な場所だと言わんばかりに、その場で静かに立っていた。


 しかし、フーレの方は元気よく訊ねた。

 

「ヒール様。あの透明なのって、水晶かな?」

「かもな……だけど、自然のものにしては、随分と整い過ぎてる」


 大きさに多少の差異はあれど、形も均一、間隔も一定。

 明らかに誰かによって造成されたような場所であった。


 そして水晶の前には、もれなく摘まれたばかりのような綺麗な花が供えられている。


 フーレは俺に言う。


「掘ってみる?」

「いや……多分、あれは」


 この厳かな雰囲気……様式は違えど、あれは墓の一種だろう。


「ここは墓地か。タラン、そうだな?」


 タランはコクリと頷く。


「そうか」


 これで確定した。


 この地下には、仲間の死を悼むような生き物が住んでいたのだ。

 

 これは推測でしかないが、あのワイナリーや祭壇も、ここに眠る彼らの種族が作った可能性は高い。

 

 とてもじゃないが、お墓は荒らせないな……ちょっと見て回らせてもらうぐらいにするか。うん?


 突如、壁の一部が引き戸のように開閉した。


 そしてそこには……


「ゴーレム?!」


 以前も見た、巨大な鎧に身を包む者達がいるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ