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四十五話 鳥の骨を掘り当てました!!!

「ああ、楽ちん楽ちん!」


 鉄の馬車を下りるフーレのあとに俺も続く。


「楽なのもそうだが、本当に速いな……歩いたら二十分は掛かるはずなのに、四、五分で着くなんて」


 マッパの作った鉄の馬車は、はやくも俺たち採掘者の足となってくれている。


 今までは一台だけだったのが、その後ろに数台牽引されており、さらに多くの者たちを輸送できるようになった。

 また、マッパの指示を受けているのか、線路はさらに魔物たちによって拡張工事が行われている。


 操作はマッパではなく、数名のゴブリンが行なっているようだが、乗り心地は快適そのもの。

 最初は速すぎると感じたものが、慣れればこういうものだと思えるようになった。


「これでもっと採掘できる時間が増えるね、ヒール様!」

「ああ、そうだな! それじゃ、今日も頑張るぞ!」


 俺の掛け声に、魔物たちは皆おうと声を上げた。


 そうして今日も採掘がはじまった。

 各々が思い思いの場所に向かい、ピッケルを振るう。

 昨日あれだけ冷凍庫を拡げてもなお、皆意気揚々と採掘していた。


 かくいう俺も、昨日の疲れはどこへやら今日も元気にピッケルを振り下ろした。


 昨日のカニ鍋のおかげだろうか。

 あれで、疲れがどっかへと吹っ飛んでいった。

 毎日食べたくなるぐらいだ。


 まあリエナが食べさせてくれたのもあるのかも……おかわりはふうふうと冷ましてくれたし……


「えへへ……と、いかんいかん!」


 俺はにやつく顔を、真面目なものに戻す。


 洞窟の中とはいえ、誰が見ているかも分からない。

 一応皆、俺を領主として見てくれているのだ。

 ……まあ、何をいまさらというほどには醜態をさらしている気もするが。


 どのみち、今の俺の近くで採掘をしているのは、コボルトの赤ちゃんリルぐらいなものだ。


 最初はぎこちなかったリルの動きも、だいぶ様になってきた気がする。

 今では、自分のその体より大きい岩を掘り出せるほどにはなったのだから、成長も早い。


 俺がそう感心しながら眺めていると、リルは何かに気が付いたように、手を止める。


「うん? 何かあったか、リル?」


 リルは小さな黒い鼻を高くして、くんくんと匂いを嗅ぐ仕草をする。

 何か異臭でも感じたのだろうか? 

 少なくとも人間の俺には、特に何も感じない。


 あちこちに向かって鼻を振るリルは、やがてある一方向を俺に指さした。


 指示された方角は、一見ただの岩壁。

 その方角から、魔力などの反応はない。


「その方向に、何かあるのか?」


 俺の問いに、リルはうんと頷いた。


 とにかく何か変わったものが、この向こうにあるのだろう。

 俺はリルの要請に応え、ピッケルでその方向を掘り進めていく。


 すると、二、三回掘った先で、おびただしい数の白骨が地面に落ちてきた。


 突然の光景に俺は思わずぞっとした。

 だが、骨を見つめていると、どうやら人の骨でないことは分かった。

 小さく細い骨……そして何より特徴的なくちばしが、これらの骨が鳥のものであることを窺わせた。


 キラーバードよりもずっと小型……

 たまに宮廷の庭園に飛んでくる鳩ぐらいの大きさのものだ。


 食用の鳥で骨だけ捨てられたか?


 いや、それにしては鳥であったとわかるぐらいに頭、羽の骨まで揃っている。

 頭や羽は、食用にする際、離して処理するだろう。

 生きた鳥がなんらかの理由で生き埋めになった可能性が高そうだ。


 特に腐臭もしないが、リルには異臭と感じたのだろうか?

 だが、リルは骨の間を掻い潜って、ある丸い物体を持ち上げた。


「なんだそれ? 石……いや、卵か?」


 厳密には卵の化石と言うべきなのだろうが、表面は白く鳥の卵そのものだ。


 しかし、地面に落ちて割れなかったのだから、それなりの硬さはありそうだ。

 リルはこれを持ち上げて、俺に手渡す。


「ありがとう、リル」


 俺はリルの頭をよしよしと撫でてやる。

 何が出たとしても、リルが俺に渡したくてやってくれたのだから単純に嬉しいことだ。


「しかし……見れば見るほど、綺麗だな……」


 見る角度を変えるだけで、きらきらと輝く卵。

 まるでこういった宝石があるかのように、シミがなく真っ白だ。

 しかも、化石とは思えないほど、つるつるとした手触りをしていた。


 単純に宝石として集めるのも良さそうだな……


 俺は周囲を見渡し、同じようなものがないか探す。


 しかし、同じものは見つからなかった。

 恐らくは卵だったような殻は、岩のように灰色で無残に砕けていた。


 触ってみると岩のようにざらざらで、近くには生まれるのを待っていただろう小さな雛の骨も見える。


「この卵だけ、特別だったのかもな……」


 だが、どうしてこんな場所に鳥の骨が密集していたのだろうか?

 野生にしろ飼われていたにしろ、何かの出来事でここに生き埋めになってしまったのは間違いなさそうだが。


 何の鳥かは気になるが……周囲にこれがなんなのかの手がかりが見つかるかもしれない。


「よぉし。それじゃ、この周囲を掘るか!」


 リルは俺の声に、「きゃん!」と可愛く吠えて応えてくれた。


 俺は卵の化石をコートのポケットに入れて、再び採掘に戻る。

 その後、特に周辺から目ぼしいものは掘れなかった。


 そしてもう少しでお昼という時、カミュから沿岸に来てという連絡を受けるのであった。

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