表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/290

四話 ゴブリンを救助しました!

「あぁー、気持ちいいー……」


 今俺は、洞窟の入り口でスライムを枕に寝ている。

 このスライム……シエルをテイムしてから、三日が経った日の夜だ。


 この三日間、俺はひたすら採掘に励んだ。

 結果……

 

◇インベントリ

 岩×4893

 鉄鉱石×71

 銅鉱石×89

 金鉱石×5.8

 銀鉱石×8.9

 石炭×88

 石灰岩×90

 ……

 ルビー×1.7

 サファイア×1.4

 クリスタル×19

 亀石×39


 とまあ、だいたいどの資源も初日の三倍に増加している。

 魔力を増やすクリスタルだけあまり増えていないのは、なるべくすぐに消費するようにしてるからで、もう500個近くは使ってるはずだ。


 だから、俺の魔法も非常に強力になった。

 今では海に雷属性の魔法を放つだけで、狙った大魚が取れる。


 水属性の魔法なら、5たる分の水を降らすこともできた。


 今の俺は中位魔法を軽々と使いこなせるようになったのだ。

 静電気だの、手汗だのと馬鹿にされていたのが今となっては信じられない。


 こうして俺は、早くも水と食料の問題を解決した。

 

 しかもありがたいことに、シエルは教えたことをすぐに覚えた。


 言葉は理解できないようだが、俺の手振り身振りを真似してくる。

 ベッドになってくれたり、洞窟内の移動に俺を乗せてくれたりと、至れり尽くせりだ。


 また、シエルの他にスライムを十体ほどテイムできた。

 しかし、彼らはシエル以上に意思疎通が難しく、好き勝手にそこらへんをうろうろしてるだけだ。


 一応名前は付けたが……正直、見分けがつかない。

 シエルみたいに動きがあれば分かり易いのだが。


 というより、このシエルが特別なだけかもしれないけど。

 

「シエル……その肩の所も頼む」

 

 俺は自分で揉んでほしい部分を手で示すと、シエルは体をうねらせて肩を揉んでくれる。


「あ~……そこ。そこだ……」


 とにかくだ。今俺はとてもこの島で快適に過ごしている。

 生命の危機を脱した上に、”採掘”という生甲斐が出来た。


 もちろん魚ばっかじゃ飽きるし、あれこれ魔法で工夫したいところだが……


 気が付けば俺はもう、採掘のことしか考えてなかった。

 希少な鉱物が、ピッケル一つでザクザク掘れてしまうのだ。

 こんな楽しいことは他にはない。

 というより、この島でできることって、現状それぐらいだからね。

 

 ……明日も掘るぞ!


 俺はひんやりとしたシエルの上で、気持ちよく眠りにつくのであった。


 ……うん? なんだ?


 頬をつんつんとされたので、俺は目を開く。

 起こしたのはどうやら、シエルのようだ。


 体を起こして外を見ると、まだ朝焼けの時間。

 波も穏やかで、気持ちの良い目覚めだった。


「シエル、おはよう……俺を起こしてくれたのか?」 


 シエルは体を伸ばして、矢印の先端のような形を海側に向ける。


「何かあったのか? うん? あれは……」


 岩場には難破したボートがあった。

 俺の乗ってきたものではなく、木片が散らかっている。


 そしてその周囲には、人ならざる者が三体ほど横たわっていた。


 緑の肌の者……ゴブリンか。


 周辺に大型船は見えないから、どこからか漂流してきたか。

 身に着けている毛皮もぼろぼろだ。


 ここも岩場とはいえ陸地だ。


 海を彷徨さまようよりは、はるかに安全。

 食糧や水も手に入るかもしない。

 そう考え上陸しようとしたが、波にまれたのだろう……


 ボートの壊れ具合を見るに、皆相当な速さで岩に叩きつけられたか。

 死んでいてもおかしくない。

 

 一応、生きてるか声を掛けてみよう。

 使える物を持っている可能性も有るし。


 こちらを襲ってくるかもしれないが……

 今の俺は中位魔法が使える。恐れることはない。


 俺は早速シエルを従えて、ゴブリンたちに向かった。


「……おーい、大丈夫かー?」


 こちらの声には誰も反応を示さなかった。

 よく見れば、皆血を流している。


 ……これはもう駄目かもしれない。


 一応、一体ずつ息があるか近寄って確認する。


 すると意外にも、三体とも息があった。


「……まだ、生きてるな」


 なんとか助けてやりたいが、相手は魔物のゴブリンだ。


 ゴブリンは部族を形成して生活するのだが、基本は人間と敵対関係にある。

 だいたいの人間はゴブリンを見たら殺せと教わるし、逆もしかりだ。


 しかし一方で、人間と友好的な部族もいるという。

 どちらかの区別は難しい…… 


 まあ、今の俺は中位魔法を軽々扱える。

 洞窟の中は真っ暗だし、道も複雑。

 採掘中に後ろから襲われるなんてことはないだろう。


 このまま見捨てて死なれたら、後々罪悪感でうなされそうでもある。


 俺はすぐに回復魔法リカバリーを、ゴブリンたちに掛けた。


 白い光がゴブリンたちを包む。


 流血は止まったようだ。

 息の調子も穏やかになったと思う。

 専門家じゃないのでなんとも言えないが、回復したのは確かじゃなかろうか?


 さてこの後だが……

 このままでは彼らは波に濡れてしまう。

 やがて潮も満ちてこよう。

 陽も強くなってくるし、洞窟に寝させてやるか。


 まずは……あいつが運びやすそうだな。


 ゴブリンの中で、一番小さい者をまず持ち上げる。

 人間の幼児のような大きさで、黒ずんだ緑の肌をしていた。

 体も丸っぽく、本当に軽々運べた。


 次に、先程のゴブリンより少し背丈の高い者を運ぶ。

 葉っぱのような緑の肌だが、皺も目立つので老人かもしれない。

 こちらもやせ細っていて、運ぶのは簡単だった。


 そして最後が困った。

 ゴブリンは小さいことで有名だが、この者は俺よりも背丈が高い。

 しかも筋骨隆々で、ゴブリンよりかはオークを思わせる見た目だ。

 

 どう持ち上げようか……うん?


 迷ってると、シエルが自分の体を広げ、この大きなゴブリンを洞窟まで運んでいった。


「いやあ。シエル、助かったよ」


 シエルはなかなか察しが早くなってきたようだ。


 こうして俺たちは、ゴブリンを三体洞窟の入り口に運び終えた。


 さて、どうするかな?

 俺は早く採掘に向かいたい……

 

 看病の必要が有るならさすがに行けないが、もう外傷も見当たらない。

 水と食料はあるわけだし、起きたら勝手に飲み食いしてくれるだろう。


 俺の手は自然とピッケルを握っていた。


「シエル……こいつらに何かあったら、教えてくれるか?」


 シエルは俺の声に頷いたりはしない。

 だから身振り手振りで、なんとなく伝えてみる。


 それが上手く伝わったのか、俺が洞窟を降りても、シエルはその場にとどまってくれた。


 ……これで心置きなく採掘ができるっ!

 

 俺は今日も、ピッケルで岩壁を叩くのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ