表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/290

二百五十三話 独立でした!!

 突如響いた声に、リンドブルムたちは一瞬で静まった。


 しかし、ルダだけは納得いかないような顔で言う。


「お言葉ながら、俺はまだ戦えます!!」

「我が言葉が聞こえなかったか? もはや、お前の敵う相手ではない」


 その言葉にルダは黙り込む。


 俺は言葉の主を探すが、どこにも姿が見えない。

 声も一方向というよりは、頭に直接響いてるようだった。


 それでも、ルダの話し方からすれば、何者かは想像がつく。


 ────ベーダーの王か。


 そんな中、レムリクが片膝を突いて言う。


「陛下。ご覧いただけましたか?」

「存分、にな。黄金像に乗る、凶相の覇王……まさか、こんな者がいるとは」


 その言葉に、バリスはあっと口を開いた。


 ベーダー王は、バリスを俺たちの長と認識しているらしい。

 どこか怯えているようにも見える。

 バリスは間違えを訂正したがっているようだが、これは交渉に寄与するかもしれない。


 俺はバリスに目配せし、ベーダー王へ言葉をかける。


「ベーダーの王。俺たちはベーダーを侵すつもりはない。シルフィウムへの不可侵と、亜人の保護を約束してくれればな」

「先ほども聞いたが、それだけではないのだろう?」

「ああ。先ほどルダに渡した書状にある通り、レムリクにこの地を任せてほしい」

「見返りに、お前たちは我が国と不可侵条約を結ぶと。我らに、名も名乗らぬ国と条約を結べと申すのか」

「すまない。失礼した。俺たちは、シェオールという国の民だ。以前、アモリス共和国の商人を通じて貴国に親書をお送りしたが、ご覧になってないかな」

「……シェオール? うん?」


 ベーダー王は急に黙り込む。


 一方で、リンドブルムの中から声が上がった。


「し、シェオール……ま、まさかそんな」


 声に振り向くと、そこにはよぼよぼのアーダーがいた。


 アーダーは顔面蒼白となり、声を震わせる。


「あ、あんな海の果ての島から、こんな場所まで……ど、どうかお許しを!!」


 どうやら、アーダーはかつてシェオールを襲撃したのを俺たちが恨み、ここに来たと思っているようだ。


 そんなつもりは全くない。


 それよりも、王はシェオールについて認識していると見て間違いなさそうだ。

 かつて助けたアモリスの商人ベルファルトから、俺たちの親書を受け取ったのだろう。


「俺たちは以前、貴国の者から受けた海賊行為を不問とし、貴国との不可侵をすでに提案している。両国間で恒久的な不可侵条約を結びたい。」

「そう、か……シェオール帝国のものであったか。これは失礼した、シェオール帝よ」


 その言葉が響くと、突如壮麗なミスリルの鎧に身を包んだ男が現れた。


 男はルダ同様、筋骨隆々の老年の男であった。

 他のベーダー人とは違って鎧に金の装飾がなされていることから、王に違いない。


 彼は、黄金像に乗るバリスに小さく礼をした。


 やはりというか、バリスの見た目が彼を怖がらせているらしい。

 皇帝なんて呼ぶのだから、相当恐れているのだろう。


 バリスは少し困惑しているが、傍から見るといらだっているようにも見えた。


 ベーダー王が額から汗を流すのを見て俺は続ける。


「……すでに我らの関係は戦争状態一歩手前だ。今更、儀礼は無用。それよりも、我らの提案について返事をいただきたい」

「そう、だな。貴国には海賊行為を不問としてもらった過去もある。もともと不可侵だけでは申し訳が立たぬと考え、謝罪の仕方を考えていたところだ」


 真意かは不明だ。

 返答しなくても問題ないと考えていたかもしれない。


「ここは、我も一国の王として誠意を見せたい。貴国との友好のためにも、ラング州を割譲させてほしい」


 ベーダー王は俺に顔を向けて言った。


 ラング州をシェオールの領地として献上するわけか。

 俺たちの戦力には敵わないと判断したのだろう。

 ラング州自体にたいした価値がないと考えたか、あるいは緩衝地帯が欲しいのかもしれない。


 とはいえ、俺たちは別に領地が欲しいわけじゃない。


 俺はこう提案した。


「では、レムリクをラングの王として認めてくれるか? そしてベーダーとラングの間でも、恒久的な不可侵条約を結んでほしい」


 ベーダー王は、それを聞いて即座に頷く。

 レムリクに顔を向けると、こう宣言した。


「ならば、私は今ここでラング州にかかわる全ての爵位を、レムリクに授ける。そしてレムリクをラング王として認め、国交と不可侵条約を結ぼう。また国内の亜人をはじめとする、ベーダー人以外の種族は、ラングに送る」

「父上、それだけでは足りません。どうか、ベーダーの全土で奴隷を禁ずる法を発布していただきたい」

「……約束しよう。一年のうちに実施する。それでいかがかな、シェオール帝」


 ベーダー王がバリスを見上げて言った。


 バリスは少し困惑しながらも、やがてこくりと頷く。


 ベーダー王には不満そうに見えたのか、バリスに深く頭を下げていた。


 こうして、ラングの独立が決まった。


 レムリクはラングの王となり、ラング王国はシェオール、ベーダー、シルフィウムとの間で国交と不可侵条約を結んだ。


 ともかく、ラング州での激戦は俺たちの勝利で幕を閉じた。

出店宇生先生が描く本作のコミック版6巻、発売中です!


カバー裏や巻末のマンガ、魔物図鑑など、今回も単行本でしか読めないおまけがございます!

6巻はコミカライズオリジナルのキャラや機構など、WEB版読者の方でも新鮮な内容となっております! リヴァイアサンに次ぐ迫力の戦闘シーンが多く、見どころがいっぱいです。

どうか読んでいただけますと幸いです!


カバーです!

挿絵(By みてみん)


商品情報です!(KADOKAWA公式サイト)

https://www.kadokawa.co.jp/product/322311000369

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術大学をクビになった支援魔術師←こちらの作品もよろしくお願いいたします!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ