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二百五十一話 再起でした!!

昨日3月23日、出店宇生先生が描く本作のコミック版6巻が発売しました!


出店宇生先生の発売記念画像です。

(先生からなろう掲載の許可をいただいております)

挿絵(By みてみん)

「マッパーー!!」


 ドラゴンに尾を叩きつけられ、マッパ像は吹き飛ばされてしまった。


 マッパ像がどこへ飛ばされたかも分からないまま、周囲は先ほどよりも激しい雷雨で包まれる。


 ドラゴンの真下であっても、横から雨と雷が遠慮なく降り注いできた。


「ヒール殿、背に!」

「ああ!」


 アシュトンは俺を背に乗せると、再び走り始めた。


 俺もヘルエクスプロージョンを撃ち続けるが、ドラゴンが態勢を崩すことはもうなかった。


 ハイネスに乗ったフーレは、魔法壁を展開しながら顔を青ざめさせる。


「体も頑丈になっているんだろうけど……雷も雨もさっきより強くなってる」

「もはや策は尽きた……ヒール殿。一度、レオールへ退きましょう」


 アシュトンの言葉に俺は頷く。


「ああ。今ならベーダーの軍勢も少ないはず。一度退いて、シェオールの避難が終わるまでの時間稼ぎを改めて考えよう」


 皆、俺の言葉に頷いてくれた。


「しかし、これでレオールまでいけるか!? これじゃあ一面海になっちまう!!」


 ハイネスは足元を見て言った。

 すでに水が、くるぶしの高さまで溜まってきている。


 アシュトンもハイネスも先ほどと同じようには走れない。


 そこに容赦なくドラゴンの雷が襲い掛かってきた。

 ドラゴンの雷撃は溜まった水をも通じて、俺たちに襲い掛かる。


 魔法壁とミスリル製の防具で感電は防げているが、走るほうはどうにもならない。


 さらに、少数ではあるがリンドブルムが俺たちのほうへやってきた。


「くっ! やはりまだ残っていたか!!」


 アシュトンはそう言うと、方角を変えて逃げていく。


 雷撃の精度は落ちてはいるが、水位はどこも上がっている。

 もはや周囲は湖になっていると言っていい。

 このまま走ってレオールまで逃げるのは難しそうだ。


「アシュトン。先ほど見えたが、まっすぐ行くと丘があるはずだ。そこに向かってくれ。そこで一度態勢を整えよう」

「面目ございませんが、そういたしましょう」


 アシュトンは悔しそうに言うと、丘の見えたほうへ走った。


 やがて、水の溜まっていない斜面が見えてくる。丘に到達したようだ。


 その斜面を少し登ったところで、俺はアシュトンから降りる。

 ピッケルで手早く穴を掘り始めた。

 それなりの穴ができたところで、インベントリの岩で入り口に隙間付きの壁を作る。


 雷撃は、相変わらず近くに落ちるが、真上というわけではない。

 ドラゴンとリンドブルムたちは俺たちを見失ったようだ。


 穴の中でフーレが一息吐く。


「ふう……まさか、ここまでの強敵とは」

「おそらくは、ベーダーの最終兵器だったのだろう。ルダをも取り込むとは」


 アシュトンの言葉にハイネスが頷く。


「俺たちとベーダーは、全力で戦争してるのかもな」

「そうとも言えるな。事実、我らも力や策を出し切った」


 アシュトンの言う通り、俺たちは全力で今回臨んだ。


 俺たちの魔法や力が効かないだけならまだしも、バリスの策も破れてしまった。


 俺の考えが足りなかった……


「皆、すまない。俺のせいだ」


 そう口にすると、リエナたちは首を横に振る。


「ヒール様のせいではありません。それに、私たちはまだ負けていません」

「そうだよ。生き残れば私たちは勝ちなんだから。レオールやシルフィウムの人たちもシェオールに来てもらえばいいんだよ」


 フーレの言葉に、アシュトンも深く頷く。


「命があれば再起できる。我らシェオールは皆、そうして立ち上がってきました」

「そうだそうだ。それに俺たちには魚の尽きない海と、無限の岩がある地下がある。俺らが得意なのは、戦じゃねえ。開拓だ」


 ハイネスも誇らしそうに呟いた。


 逆境を物ともしない彼らに俺は励まされる。


 同時に、俺も最初ひとりでシェオールに来た時のことを思い出した。


「……昔は、俺も明日まで生きられるかすら分からなかった。それと比べれば、今ははるかに恵まれている」


 食料や水を心配しなくていい。

 何より、こうしてたくさんの仲間に恵まれた。


 皆もそうだと言わんばかりに首を縦に振った。


 俺は再び皆に頭を下げる。


「……皆、弱気になってすまない。今は、俺たちでできることをやろう」


 そう言うと、皆もおうと答えてくれた。


 アシュトンは早速、俺に提案する。


「ではまず、我らは二手に分かれ、レオールとシルフィウムに向かうべきかと存じます。レオールのほうは避難が始まっていると思いますが、念のためにも行った方がいいかと」


 シルフィウムへも比較的すぐに到達できる。俺たちが通った峡谷には休憩所があって、そこに転移石が置かれているからだ。

 雨も、向こうまでは降っていないだろう。


 フーレは穴の入り口の隙間から外を見て言う。


「でもこの雨じゃ外には……ああ。地面掘っていけばいいんだ」

「俺がレオール。フーレはシルフィウム方向へ掘っていく……時間はかかりそうだが、それでいくしかないな」


 幸い、ドラゴンは俺たちを殺すことに躍起になっているようで、その場で滞空している。


 リエナは隙間から外を見て呟いた。


「この雨さえなければいいのですが……」

「うん。しかし、すごい魔法もあったもんだよね……こんな雨と雷を降らせるなんて」


 フーレの言う通り、本当に規格外の魔法だ。


 俺のいたバーレオン大陸では聞いたこともない魔法。

 大陸が違えば、編み出された魔法も違うのだろう。

 世界の広さを感じる。


 だがそんな時、リエナがえっと小さく声を漏らした。


「……雨が」


 フーレも隙間に顔をくっつけ声を上げる。


「雨が……止んだ!?」


 俺も入り口の岩をいくらかインベントリへと戻し、外の景色を眺める。


 目の前には、雨も雷も降らない、虹のかかる平野が映っていた。

出店宇生先生が描く本作のコミック版6巻、発売中です!


カバー裏や巻末のマンガ、魔物図鑑など、今回も単行本でしか読めないおまけがございます!

6巻はコミカライズオリジナルのキャラや機構など、WEB版読者の方でも新鮮な内容となっております! リヴァイアサンに次ぐ迫力の戦闘シーンが多く、見どころがいっぱいです。

どうか読んでいただけますと幸いです!


カバーです!

挿絵(By みてみん)


商品情報です!(KADOKAWA公式サイト)

https://www.kadokawa.co.jp/product/322311000369

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