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二百四十一話 決起でした!!

 ルダとの戦いの翌日。

 俺たちは早速、亜人の保護を開始した。


 ルダに先手を打たれる前に、亜人をレオールに集める作戦。


 副王としてのレムリクの命ではあるが、実権を握る総督とルダからすれば反乱以外の何物でもない。

 彼らが知れば全力で止めにくるだろう。

 故に時間が勝負だ。


 レムリクと俺たちは、まずはシアの村へと向かった。


「もちろん、協力するよ。私は」


 俺とレムリクがレオールに篭る計画を話したところ、真っ先にシアが名乗り出てくれた。その後すぐにシアの母親と数名の亜人も協力を申し出てくれた。


 しかし、大多数の亜人たちは複雑そうな顔を見せて頷かない。


 やがて村人たちが重い口を開いた。


「俺たちだって戦はごめんだ。食料も人手も用意できるわけがない。王子にも感謝している……でも、だからってあんたらだけでベーダー人に敵うとは思わない」

「そうだ。仮に俺たちに武器があったって倒せないだろう……失敗すれば、村の全員が処刑されるかもしれないんだ。そんな計画には賛同できない」


 群衆から同調するような声が上がる。


 やはり計画が成功するとは誰も信じられないようだ。


 例え大部分が賛同してくれたとしても、総督側への密告者が出てくる可能性もある。


 だから、この計画が必ず成功すると全ての村人に思わせなければいけない。


 俺は後ろに控える十五号に振り返り頷く。


 すると十五号ははるか遠くへと手を振った。


 それから十秒もしないうちに、轟音が近づいてくる。


 村人たちもそれに気が付き、空を見上げた。


「な、なんだ?」

「まさか、ベーダー人?」


 空にいたのは、巨大な翼のドラゴン。

 それが村に向かって高速でゆっくりと降りてくる。


 ベーダー人が来たと狼狽える亜人たちだが、近づくにつれドラゴンが生き物でないことを察した。


「大きい……ベーダー人じゃない?」

「このテカテカは……金属か?」


 亜人たちの察し通り、このドラゴンは人間ではない。


 偽心石を用いて作ったドラゴン型のゴーレムだ。

 体は魔防石と黒鉄でできている。


 また、同じゴーレムが他にも数体、村の上空へ飛来した。


 俺はレムリクに顔を向ける。


 レムリクはありがとうと小さく答えると、村人に言う。


「彼らは僕の配下だ。彼らがいれば、ルダ兄上や総督の軍勢にも負けない」

「王子にこんな部下がいたとは……まさか、そこの人間たちも」


 彼らはと言いかけるレムリクだが、俺はその言葉を遮って言う。

 

「そうだ。俺たちはレムリク王子を助けるため、このラング州に来た。ベーダー人に虐げられているのは亜人だけじゃない。人間もだ」


 俺の言葉に亜人たちはやはり納得したような顔をする。


 レムリクは何か言いたげな顔だが、この際利用できるものは全て利用するべきだ。

 州外にも同じ境遇の者たちがいると思えば、レムリクに他にも仲間がいると思わせることができる。


 事実、ベルファルトら奴隷にされた人間もいたわけだしな。


「それに人間じゃない。俺たちには、他にも仲間がいる」


 そう言って俺は、地鳴りのような音が響く後ろに振り返った。


 するとちょっとした山のような高さの巨大な鎧が歩いてきていた。


 それを見た亜人たちは大きく口を開いてそれを見上げる。


「なんだ、あの大きいの……」


 魔道鎧。黒鉄と魔防石、その他鉄などの金属も用いマッパらシェオールの職人衆たちが一晩で作ってくれた。


 俺自身不思議なことだが、ただ大きいというだけなのにあの魔道鎧を強そうに感じる。


 まあ搭乗者の何倍もの魔力を集めることができるわけだし、実際強いのだが。


 ともかく亜人たちは魔道鎧に恐れをなしたようだった。


 レムリクはそんな亜人たちに告げる。


「彼らがいれば、君たちを守れる……僕が副王としての権限を回復したら総督や兄上には都に帰ってもらう。もう、君たちを虐げさせたりはしない。どうか、君たちの力を貸してほしい」


 頭を下げるレムリク。


 それを見た亜人たちは、魔道鎧を見た時よりも驚くような顔を見せた。


 王子が奴隷同然の自分たちに頭を下げる。

 他のベーダー人なら到底考えられない行動だ。


 やがてシアがレムリクの前に歩み出る。


「私は誰が何を言おうと協力する。王子なら、絶対に私たちを助けてくれる」


 それにシアの母や他の亜人も続いた。


 少しの静寂の後、やがて村人の一人が大きな声をあげる。


「……俺もだ!! 王子についていく!!」

「死んだって構わねえ! 子供たちにこれ以上苦しい生活はさせたくねえ!!」


 声はやがて村中を包むかのように大きくなっていった。


「皆……」


 レムリクは心の奥底では自信が持ててなかったのかもしれない。

 自分の言葉は誰も動かせないと不安に思っていたのだ。


 しかし亜人たちは自分を頼り、力を貸してくれると言ってくれた。


 レムリクは一転、自信に満ちたような顔で村人に答える。


「……ありがとう、皆!! 僕は必ず、皆のためこの地に秩序を回復させる!!」


 村人の歓声は一際大きくなった。


 こうしてシアの村はレムリクを全面的に支援してくれることとなった。


 彼らは他の村の亜人にも連携を呼びかけてくれた。


 巨大な魔道鎧やゴーレムを率いるレムリクを見て、亜人の村々はレムリクにすんなりと従ってくれた。

 それから村人総出でレオールを目指し始める。


 結局、ラング州の亜人のほぼ全員がレムリクのもとに集まることとなるのだった。

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