二百三十八話 連携でした!!
「皆、いくぞ!!」
エレヴァンの掛け声に、俺たちは一斉に散った。
前衛はエレヴァン、アシュトン、ハイネス。
彼等は迫るリンドブルムへ接近していく。
俺とリエナとフーレは後方から魔法で支援する。
さっそく魔法の壁を展開し、リンドブルムの放つ雷魔法を防いでいった。
リエナが魔法の壁を展開しながら言う。
「周りは私たちにお任せください! ヒール様はレムリク様を!」
リエナとフーレでエレヴァンたちを守ってくれるようだ。
「頼む!」
俺はレムリクの支援に専念しよう──ってどこだ?
いつの間にかレムリクとルダの姿が消えていた。
何かが激突する音に顔を上げると、そこには腕を振り合う巨大なリンドブルムと光の竜──ルダとレムリクがいた。
互に腕をぶつけ合う音がまるで爆発音のように響いている。
ルダのさきほどの急降下はまるで隕石のような衝撃力があった。
腕を振るう力も相当なものはずだ。
ベーダー随一の戦士というのも頷ける。
だが、レムリクも負けていない。
少なくとも、俺の目には互角に渡り合っているように見えた。
しかし支援すると言っても、この速度じゃどうすれば……
二人ともとても目では追えないほどの速さで動いているのだ。
攻撃魔法を放てばレムリクに当たる可能性がある。
だから、レムリクの胴体に魔法の壁を展開するのでやっとだ。
しかし、それでも十分な支援になったのか、レムリクはルダへ積極的に攻撃を繰り出すようになった。
壁のおかげで多少の反撃なら受けて大丈夫だと判断したようだ。
このレムリクの猛撃に、ルダは守勢に転じるしかなかった。
やはり、レムリクも大したものだ。
だが、やがてルダはこちらに目をちらちら向けるようになった。
ルダは魔力の動きを掴める。
──俺の魔法に気が付いているか。
レムリクに攻撃が通じないとなれば俺を先に倒す必要がある。
だが、レムリクを振りきれるような状況でもない。
こちらを気にするせいか、ルダはさらにレムリクの動きに後れを取るようになった。
俺の存在がうまくルダの気を散らすことに寄与しているようだ。
「よし──うん?」
ルダの部下の内、一体のリンドブルムがこちらに突っ込んできた。
俺が邪魔だというのをルダの視線から感じ取ったのだろう。
彼らの連携に感心したが、こちらの連携も抜かりない。
「行くぞ、兄貴!!」
「おう!!」
アシュトンとハイネスが曲刀を手に、俺に迫るリンドブルムへ走る。
リンドブルムはそれを長大な尾で薙ぎ払おうとするが、リエナによって眼前に閃光を放たれる。
振られた尾はアシュトンの頭上で空を切る。
「今です、アシュトンさん、ハイネスさん!」
「助かる!!」
「承知!!」
アシュトンとハイネスはそのままリンドブルムに肉薄し、脚の腱に斬りつけた。
足に力が入らなくなったリンドブルムはその場でどすんと地に伏せてしまった。
目にも留まらない速さだった。
さすがシェオールでも一、二を争う俊足たちだ。
一方のエレヴァンは斧を捨て、仁王立ちで突進するリンドブルムを待ち受ける。
「そうだ!! お前らの魔法は俺たちには効かねえ!! 来るなら突っ込んできやがれ!!」
リンドブルムの雷魔法はリエナとフーレの魔法の壁で防がれてしまっている。
ゆえにリンドブルムのほとんどが、接近戦を仕掛けようとしていた。
フーレが心配そうな顔で叫ぶ。
「お父さん! 斧なしじゃ危ないって!!」
「まあ、見てろって!! ──おらっ!!」
エレヴァンはリンドブルムの頭突きを躱す。
それからすぐにリンドブルムの尾を掴むと、背負い投げにした。
勢いよく地面に叩きつけられたリンドブルムは、そのままピクリとも動かなくなってしまう。
まさか、あの巨体を背負い投げにするとは……
エレヴァンの怪力もたいしたものだな。
叩きつけられたリンドブルムだが、呼吸はしているようなので気絶してるだけのようだ。
俺が殺害を望まないだろうと、武器を使わないようにしてくれたのだろう。
「さっすが父さん!」
「けっ、こんなんじゃまだまだ暴れたりねえ!! もっと来やがれ!!」
エレヴァンは引き続き、迫ってくるリンドブルムを体技でねじ伏せていく。
アシュトンもハイネスも、リエナとフーレの支援を受けながら、多勢の敵を翻弄していった。
ともかく、皆うまく対応してくれているようだ。
一方のルダは──うん?
ルダはレムリクと距離を取るように空高く飛んだ。
戦況を見て勝てないと判断したか。
退いてくれるならこちらもありがたい。
レムリクは急上昇するルダを追うが追い付かない。
しばらくすると、レムリクはこちらに急降下してきた。
これで戦いも終わり──そう考えたが、レムリクは必死の形相で叫んだ。
「皆!! 一か所に集まれ!! 攻撃が来る!!」
その言葉にただならぬ気配を感じ取ったのか、リエナたちが俺のもとに駆け寄る。
俺も周囲に分厚い魔力の壁を展開した。
レムリクはそんな俺たちを守るように、上から覆いかぶさった。
その次の瞬間、巨大な閃光が走った。