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二百三十二話 約束を破られました?

 シアの村で一夜を過ごした朝、

 村の人たちが用意してくれた部屋を出て、レムリクとの待ち合わせ場所に向かう準備を整える。


 マッパはすでに起きていたようで、村の人たちの道具の修理や製作を始めている。

 驚いたのはまだ朝早いというのに、近くの村からも人が駆けつけていたことだ。


 道具の修理も制作も、一応食料との交換で請け負うことになっている。しかし実際は綺麗な石だとかどんなものでも対価として受け取った。

 もちろん材料は持ち込みだが、亜人たちにとっては破格なのだろう。


「マッパ。引き続き頼むぞ」


 任せろと言わんばかりにマッパは手を振った。


 十五号やゴーレムたちには、レオール山と転移門についてシェオールに報告するよう頼んである。

 シエルの回答次第では、転移門を開けてもよさそうだ。


「じゃあ、俺たちはレムリクに会いにいくか」

「はい!」

「今日も張り切っていこう!」


 俺はリエナとフーレと共に村を出てラングスへと向かう。


 道を歩きながらリエナが言う。


「それにしても面白い湖とは、どういうところなのでしょうね」

「どうせあの王子のことだから、私たちにお宝でも見つけさせるつもりでしょ」


 確かにあのレムリクがただの湖を案内するとは思えない。


「山ほどじゃないが、何が起きてもいいようにしておく必要があるな」

「足場が崩壊して落ちるみたいのは、もうごめんだしね……」


 そんな中リエナが訊ねる。


「昨日、手紙を書く際にヒール様のお考えは伺いました。しかし、どうやってレムリク王子にシェオールのことを打ち明けるかは悩みますね」

「いきなり、海を隔てた向こうから転移門でやってきたなんて言っても信じてもらえないかもしれないしな……シルフィウムのこともあるし」


 シェオールと協力関係を結ぶことにしたシルフィウム。

 レムリクがシルフィウムの森の民たちをどう思っているのかも聞いていない。


「……とにかくもっと話す必要があると思う。湖で魚でも釣ったら、それを昼ご飯にして一緒に食べるか」

「いいお考えですね。今日はレムリク王子と色々お話ししましょう」


 リエナの声に俺は頷いた。


 それから間もなく、ラングスが見えてきた。


 待ち合わせの場所は、以前と同じラングスの外に立つ枯れ木の下。


 しかしそこにレムリクの姿はない。


 フーレが周囲を確認する。枯れ木を一周まわって念入りに。


「木の裏に隠れているわけでもなし……今日は私たちのほうが早かったみたいだね」

「前と同じぐらいの時間に来たんだがな」

「他の場所ってことも考えられないし……まさか寝坊したりとか?」


 リエナがラングスのほうを向いて言う。


「まあまあ、すぐ来るかもしれません。待っていましょう」

「そうだな。別に急ぐ旅でもない」


 そうして俺たちは枯れ木の下で待つことにした。


 数分もすれば来るだろう……


 そう考え十分、三十分、やがて一時間が経った。


「来ないな……」


 俺が呟くと、フーレはあくびを響かせる。


「ふああ……本当に寝坊してんじゃない? あるいは抜けているから、待ち合わせ場所を間違えているか」

「初めての場所ならともかくそれはないでしょう……何か用事が入ったのでしょうか」

「それか昨日の転移門や黒鉄の道具がやっぱり欲しくなったとか……」

「そんなことをする方ではないでしょう。考えられるとしたら」


 顔を曇らせるリエナに、俺も一抹の不安がよぎった。


「ラングスの中で何かトラブルに巻き込まれたのかもな……」

「亜人を助けようとしてってことは考えられるね。でも、あの強さで捕まることあるかな?」

「寝込みを襲われたとか……あるいはレムリク王子より強い方が」


 リエナの言う通り色々な可能性が考えられる。


 もちろん心配しすぎかもしれない。


 だが、総督の息子ロダーに恥をかかせた後だ。

 簡単に引き下がるような相手じゃなさそうだったし報復されてもおかしくない。


「心配だな……もう少し待ってこなかったら、ラングスに入ってみるか」

「そうしましょう」


 リエナとフーレが俺に頷く。


 それから少し待ったがやはりレムリクは来なかった。


 俺たちはレムリクの安否を確認するため、ラングスへ入るのだった。

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