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二百二十三話 意外な強さでした!?

 レムリク王子を助けることにした俺たち。

 彼を追って街路を早歩きで進んでいく。


 すると、ロダーたちと思われる魔力の反応に動きがあった。


 レムリクを襲うつもりだ──


 俺たちの視界にも、レムリク、そして二十名ほどのフードの者たちが映る。


 フードの者たちが取り囲む中、レムリクはただ立ち止まっていた。


 レムリクは呆れるようにため息を吐いて言う。


「今なら黙っておくこともできるが……」


 すでにレムリクは、相手の動きに気づいていたようだ。


 しかし、レムリクを囲む者たちは一斉に抜剣した。


「仕方ない……なら、お相手しよう」


 レムリクはそう言うと、腰に下げていたミスリルの剣を手に取った。


 相手は二十名以上。

 とても敵わないと思うが……


 そんなことを考えている間に、戦端は開かれた。

 フードの者たちがレムリクへ襲いかかる。


 レムリクはミスリルの剣を構えると、その場で高く跳躍した。


「なっ!?」


 突如レムリクが消えたことに困惑するフードの者たち。

 中には勢い余って衝突し倒れる者たちもいた。


 レムリクはフードの者たちの後方へ着地すると、彼らの背に次々と剣を振るった。


「ぐはっ!」


 バタバタと倒れるフードの者たち。

 殺したかのように思えたが、出血はない。

 気絶させただけのようだ。


 レムリクはその後も、フードの者たちの攻撃を躱しながら一人ずつ敵を倒していく。


 一方の俺たちは、それを遠くから眺めていた。


「頼りなさそうに見えたけど、うちのお父さんといい勝負するかも……」

「アシュトンさんやハイネスさんの速さにも負けませんね」


 フーレとリエナはレムリクをそう評した。


 俺も、思わず彼の剣技に見惚れていた。

 王国の剣士でもあれほどの腕の者を見たことはない。


 剣などからっきしだった俺からすれば、天上の戦いぶりに思えた。


 だが、突如、周囲の建物から魔力の反応が大きくなるのを感じた。


「魔法──させるか」


 俺はレムリクの周囲にシールド魔法を展開する。


 間も無く、建物から火や雷、氷などの魔法が放たれる。

 しかし、俺のシールドによって全て防がれた。


 その後も俺は、魔法攻撃からレムリクを守った。


 一方でリエナとフーレは、建物の中のほうへ微弱な雷魔法を放つ。


 すると、魔法を放った者たちは次々と倒れていった。

 もちろん殺さず、気絶させただけだ。


 やがてレムリクの圧倒的な剣技の前に、フードの者たちは残る数名となった。


 そんな中、フードの者たちの困惑するような声が響く。


「ろ、ロダー様!」

「どういたしましょう!?」


 すると、一人のフードの者が怒声を響かせる。


「馬鹿野郎!! 俺の名を口にするな!!」


 あのフードの者がロダーのようだ。

 しかしレムリクもすでにわかっていたようだ。


「もとよりロダー殿であることは承知している。気にする必要はありませんよ」

「くっ──」

「もう一度、機会を与えましょう。このまま引き上げるというなら、この件は不問といたします」


 レムリクはここまでされても許すという。

 とても寛容──悪く言えば甘い男だな。


 しかし、ロダーのほうは腹の虫が治まらないようだ。


 周囲には野次馬が集まり始め、家の窓からは多くの住民が何事かと覗いていた。


 彼らの前で情けない姿は見せられないのか、ロダーは怒声を返す。 


「ふざけるな!! 俺はお前のような出来損ないとは違う!! ──うぉおおおおお!!」


 突如ロダーの体が光を放ち始める。


 光が収まると、そこにはかつて俺たちも見たリンドブルムがいた。


「ふはははは!! これが俺の真の姿だ!! 他の者よりも、大きいであろう」

「ロダー殿。許可のある場所以外での龍化は禁止されている。あなたは、法を幾つ破れば気が済むのですか?」

「法? このベーダーでは、強き者が法なのだ!!」


 ロダーはレムリクに答えると、体に大きな雷を纏わせる。


 龍化によってロダーは大きな魔力を宿せるようになった。

 そのために、雷自体からも強力な魔力を感じる。


 レムリクの俊敏さを見れば、あまり当たる心配はないように思える。

 しかし、あの雷が住居や住民に当たったら危険だ……

 怒りで周りが見えてないようだし。


 そんなことを考えていると、レムリクがこちらに声をかけた。


「旅の方々! どうか、周辺の保護を頼みたい!! 私には、魔法の盾は不要!」

「あいつ、ヒール様の魔法に気づいていたの?」


 フーレは首を傾げた。

 シールドは目に見えないのに、ということだろう。

 まあ、俺たちが魔法を使うのは目にしているから、魔法が防がれているのも俺たちのおかげだと判断したのかもしれない。


 ともかく、頼まれては仕方ない。


 俺は声を返す。


「任せろ!」

「ありがたい! ──これで何も心配いらない!!」

 

 レムリクはそう言うと、剣を構えてロダーへと走った。


「消し炭になれええええ!!」


 ロダーは叫び声を上げ、雷撃を放った。


 レムリクへ向かう雷──だけでなく、周囲にもやはり強力な雷が四散する。


 俺は約束通りシールドを展開し、建物や人々を雷から守った。


 一方のレムリクは石畳を蹴り、再び高く跳んだ。


 雷撃は外れてしまい、ロダーは慌ててその太い腕でレムリクを薙ぎ払おうとする。


 しかしレムリクは振られたロダーの腕を脚で蹴ると、一挙にロダーの後方へ跳んでいく。


「ちょこまかと!!」


 ロダーはそのまま後ろを振り返るが、その首の下にはレムリクの剣の柄があてがわれていた。


「少し痛みますが、お許しください」


 レムリクはそういうと、柄でロダーの首の下を突いた。


「──なっ!?」


 短い悲鳴を上げたロダーはそのままどすんと倒れ動かなくなった。

 

 リンドブルムの姿をしていたロダーは、そのまま人の姿に戻った。


 レムリクは残ったフードの者にこう命じる。


「屋敷に、ロダーをお連れしろ。総督閣下には、剣の稽古で倒れたと告げればいい」

「は、はい!!」


 フードの者たちはすぐにロダーを抱え、その場から去っていく。


「すげえ……」

「弱そうだと思っていたが、なかなかやるんだな」


 野次馬たちがざわつく中、レムリクはこちらに手を振る。


 リエナが俺に顔を向ける。


 どうしますか、ということだろう。


 レムリク王子は、思いの外、強者だった。

 洞察力も優れているから、こちらが手玉に取られる可能性もある……


 しかし、ロダーもその仲間も誰も殺さなかった。

 なるべく殺さない……俺もそうありたいと生きてきた。


 本音を言えば、先ほどまで以上に興味が湧いてしまったのだ。


 それに、彼となら、将来的にシェオールと何らかの協力関係も築けるかもしれない……


 俺はリエナとフーレの顔を見て、首を縦に振る。


 そしてレムリクのもとへ歩いていくのだった。

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挿絵(By みてみん)

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