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二百三話 王子でした!?

 魔動鎧で駆けつけたマッパは胸部から、ロープのようなものを伝って地上に降りる。


 俺たちも乗っていた魔動鎧の手を搭乗者であるハイネスに下げてもらい、地上に降り立った。


「何故、生きてらっしゃるのです!?」


 魔動機の中からそんな声が響いた。


 すぐに俺たちの前に、光が現れる。それは先程俺たちに姿を見せたドワーフの姿へと変わった。


 ドワーフの視線は俺たちではなく、こちらにとことこと歩いてくるマッパに向けられている。


「……何故、生きているだと? どういうことだ?」


 俺が訊ねると、ドワーフは声を震わせる。


「私のほうこそ聞きたい! ……この尻……裸をなんとも思わない威風堂々ぶり……この方は!」


 ドワーフは恍惚とした表情で声を上げる。


「我がゼンラーダ王国の──マッパーナ王子!」


 俺は思わず唖然とした。

 フーレとタランも、俺に今まで見せたこともないような驚く顔をしている。


「マッパー……ナ!? これ翻訳されているんだよね!? な、名前もってこと!?」


 フーレはすかさずドワーフに訊ねた。


「名前は名前だ。翻訳しようがない。マッパーナ王子は、マッパーナ王子だ」

「なんて偶然……」


 ドワーフは驚愕する俺たちに首を傾げる。


 だが、すぐにマッパの前に跪いた。


「殿下っ! あなたは、その……生きてらっしゃるのですか?」


 マッパはそのドワーフに厳しい目を向ける。


「わ、私は殿下を追放する立場にはございませんでした! ただのしがない酒場の主人の倅でございます!」


 しかしマッパはぎゅっと目を瞑ったまま、険しい表情を解こうとしない。


「ま、まさか人間の命を糧にしようとしたことをお怒りになっているのですか!? たしかにあなたは人間に同情的だった……人間を救ったから、父王の怒りを買ったのでしたね……」


 ドワーフはすかさず、マッパに深く頭を下げる。


「も、申し訳ございませんでした! ですが、あなたが戻られた今、あの石の製法を完全なものとすることができる!! より少ない犠牲で、仲間を皆復活させることができるのです!」


 あの石、か……


 ドワーフの言っているのは、死者を蘇らせる竜球石のことだろう。


 そしてドワーフの言葉通りなら……マッパは竜球石の完全な製法を知っていた。


 マッパは呆れたような顔をする。


「お、教えていただけないのですか!? 我らが復活した暁には、皆、殿下を王としてお仕えいたします!!」


 ドワーフの訴えにマッパは見向きもせず、俺に顔を向ける。


 地下を指さすのを見るに、さっさとアランシアの王族と貴族を連れ出そうということだろう。


 仲間を復活させられるかもしれないのに、マッパはそれには手を貸さない。


 当然だ。


 竜球石は生者の命によって作られる物……マッパはそんな物を作る男ではない。


 しかし、ドワーフは分からないといった顔をする。


「何故です!? 我らはあの地下にいる人間の先祖によって命を奪われた! 今こそ、彼らの命を代価に我らを生き返らせてください!」

「気持ちはわかるけど……そんなこと駄目だよ。どんなにあの地下の人たちがぐうたらでも。あなたたちを殺したのは、あの人たちじゃない」


 フーレはそう呟いた。


「お前たちに何が分かる!? 我らはやつらの先祖に未来を奪われたのだ!」


 しかしマッパはとことこと地下の入り口のほうへと進んでいく。


 ドワーフは絶望したような顔をするが、すぐに立ち上がりマッパを睨む。


「我らの頼みは聞いてくださらぬのですね……ですが、ここまできて諦めるわけにはいきません!!」


 ドワーフは再び姿を消すと、魔動機の腕をマッパに伸ばした。


「危ない!」


 俺やフーレはマッパを魔法で防ごうとする。アシュトンとハイネスも魔動鎧を動かそうとした。


 しかし、魔動機の動きは突然止まってしまう。


「──なっ!? な、なぜ魔動機が!?」


 マッパは、自分の乗っていた魔動鎧を指さした。


 見れば、その魔動鎧の頭には何か柱のようなものが出て、ぴこぴこと光を点滅させる。


「制御通信!? そうか、それは王家の魔動機……この聖域をコントロールできる……」


 どうやら、あの光によってドワーフは自身の操る魔動機を動かせなくなっているようだ。


 もともと宮殿らしきところに眠っていた鎧だ。王家の鎧だから、色々な機能が備わっているのだろう。


「……降伏いたします。どうか、地下の者はお好きにしてください」


 ドワーフは魔動機からそんな声を響かせるのだった。

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