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百八十話 巨大な像を持ち帰りました!

 アランシアの城壁が見えると、俺はほっと一息つく。


 もうすぐで地上に着く……やっぱり高い場所は慣れない。


 最初アランシアの城壁がにわかに騒がしいのを見て、俺は前進を停止しようとする。


 しかしヴァネッサたち守り人が魔法を放つと、城壁は静けさを取り戻す。どうやら味方であると、アランシアの見張りに信号のようなものを送ってくれたようだ。


 なのでこちらがアランシアの上空へ入っても、何かされることはなかった。


 とはいえ、街路のアランシアの人々は、何あれと声を上げている。

 それに対し、マッパは手を振ったりして皆を喜ばせるのだった。 


 そうこうしている内に、住宅区の上を通り過ぎ、リエナたちと別れた広場上空へと到着する。


 そこでは炊き出しがまだ行われていたが、俺たちに気が付いたのか、エレヴァンが俺たちが着地する場所を開けるよう言ってくれた。


 俺はフーレたちの乗る荷箱とヒヒイロカネと魔吸晶を降ろし、ゴーレムに膝をつかせる。

 それからゴーレムの手を足場に、マッパと共に広場へと降り立つのだった。


 リエナとアリッサ、そしてエレヴァンが俺たちを迎えてくれる。


「ヒール様、ご無事でよかったです。マッパさんは無事見つかったようですね」


 リエナは安堵するように言うと、微笑みを俺とマッパに向ける。


 俺も色々な意味でほっとした。それにリエナの顔を見ると本当に落ち着く。


「ああ。心配をかけた……」

「し、しかし、ヒール殿。あれは」


 アリッサは俺の後ろにある巨大なゴーレムを見て、顔を引きつらせていた。


 エレヴァンも何かを思い出したのか、苦い顔で言う。


「センスってもんが感じられねえ……おい、マッパ! また変なモノ作りやがったな!」

「え、エレヴァン。こいつは違うんだ。もとからあったんだよ」


 そういうがエレヴァンは本当かと、マッパに疑いの目を向ける。


 マッパはうんうんと頷く。


 俺はアリッサにも説明する。


「神殿群については知っているだろ? この巨大な像はそこで眠っていたんだ」

「なるほど。確かにあの神殿群にある壁画や銅像と似た体型をしている。そこの……上半身裸の方にも」


 アリッサはそれはともかくと、俺に頭を下げる。


「食料の件、本当に感謝する。民衆がここまで笑顔を見せるのは、一体いつぶりか」


 アランシアの人々は皆、至福そうな顔をしていた。ゴーレムに目を奪われる者も多いが、基本は皆、食事のことを話題にしていた。


 それを見て、アリッサは感慨深そうな顔をしていた。


 リエナが俺に報告する。 


「獲れたての魚も、すでにアランシアに運んでいます。すでに一万匹用意しましたが、バリスによれば、まだまだ輸送できるとか。この都市の地下倉庫の一つを冷凍庫にしたので、保存も可能です」

「もうそんなに進めてくれていたか」


 俺が不在でも、リエナとバリスは連携してアランシアへの食料供給を進めてくれていたようだ。


「いやはや、もはやどうお礼を言えばいいか……ヒール殿。私やアランシアの住民に出来ることなら、なんとでも言ってほしい」


 アリッサはただひたすらに頭を下げる。


「それならさっきも言ったが、俺たちもキノコとその栽培方法を教えてほしい……それともう作っているのか」


 振り返るとそこには、腕を自慢するようにポーズを取るエレヴァンと、アシュトンに抱えられ涙を流すハイネスが。


 さっき後ろでくじ引きがどうたらと聞こえた。

 きっとエレヴァンとハイネス、どっちが先に作るか決めていたのだろう。結果、エレヴァンが最初に作ることになったと。


 でも、エレヴァンにしろハイネスにしろ魔力は使えないよな。何かしら補助する装置が必要になりそうだが。


 俺はアリッサへの説明へと戻る。


「ごめん。あれは、いうなれば……大きな鎧だ。魔力で動かせるんだが、あの鎧に乗ると普通に魔法を使うより強力な魔法を使えるんだ」

「そんなものが、あの神殿に。王室の宝物庫にはあの神殿由来の武具がありましたが、このようなものは見当たりませんでした」

「あの男が見つけてくれたんだよ。守り人にも助けられた」


 俺の声に、近くに控えていたオーガスたちはとんでもないと首を横に振る。


 そんなときだった。

 突如、近くの城壁の上から太鼓が鳴る。

 あの城壁は、アランシアの王族が住む聖域とこちらのアランシアの民衆が住む地域を区切るため俺たちが築いた城壁だ。

 

 太鼓を鳴らしているのは見張りのケイブスパイダー。

 恐らく聖域側になにか動きがあったのだろう。


 その様子を見て、アリッサが俺に真剣な顔で言う。


「ヒール殿。聖域の者たちには私の口から、はっきりとあの城壁のこと、シェオールとの同盟のことを伝えてきます」

「ああ。俺も付いていこう」


 聖域に住む者たちもこれで考え直してくれればいいのだが。


 俺たちは早速、城壁の上に向かうのだった。

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