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百七十五話 封鎖されました!?

「はあはあ……逃げきれた」


 フーレは息を整えながら、ゴーレムたちが遠くなっていくことを確認する。


 途中、スケルトンたちがゴーレムを攻撃するが、ゴーレムは全く臆することなく走ってスケルトンを蹴散らしていった。


「骨は侵入者じぇねのかな。しかし、剣も魔法も効かねえとは……さすがマッパの仲間が作ったゴーレムってとこか」


 ハイネスは曲刀にひびが入ってないか確認しながら呟く。


 それを聞いたアシュトンは首を傾げる。


「仲間……だが先ほどのゴーレムは、追放者がどうこう言っていた。マッパ殿は……かつてこの地より追放されたのか?」


 ゴーレムが発した声は、俺以外にも聞こえていたようだ。

 アシュトンの言うように、ゴーレムは追放者リストなどという言葉を口にしていた。


 俺たちの誰もがマッパに視線を送った。


 マッパは真剣な顔で腕を組むだけだ。


 俺はまず、確認するようにマッパに訊ねる。


「マッパ……ここはお前の故郷なのか?」


 こくり、とマッパは首を縦に振った。

 ここはマッパの故郷で間違いないらしい。


「その故郷から、お前は追放された? そうか?」


 だがその言葉にマッパは、無言で立ち尽くす。


「マッパ。今頃俺たちに隠し事なんてしなくても……」

「待った、ヒール様」


 フーレはそう言って、マッパの肩を揺らした。しかしマッパは反応しない。と思っていたら、鼻から透明な風船のようなものが膨れ上がる。


「どうも……寝ているだけみたい……」

「た、立ったまま寝てるのか?」


 皆起きろと言ったり、フーレがマッパの髪の毛を色んな形にして遊ぶが、それでも起きない。


 ハイネスは呆れたように言った。


「疲れちまったんじゃないですかね……まあ、ともかくマッパは回収できたんだ。こんな危険なところ、さっさとおさらばしましょうぜ」

「そうだな。ここのことは気になるが、あんなゴーレムがいる以上長居は無用だ」


 俺が答えると、フーレがつまらなそうな顔で呟く。


「ええー。絶対、なんかお宝ありそうじゃない? マッパのおっさんだけが知っている場所とか、絶対ありそうなのに」


 オーガスたち守り人によれば、この神殿群のお宝は全て王族や盗掘者に持ち去られたという話だった。


 しかしマッパなら別の場所にある宝を知っているかもしれない。さっきのゴーレムだって、マッパが椅子を弄ったから出てきたんだ。

 守り人たちも先程はこんな敵は見たことないと言っていたし、今までは出てこなかったのだろう。


 アシュトンがそんなフーレに言う。


「確かに気になるが……だが、我らの攻撃がゴーレムに有効でない以上、探索は危険だ」

「まあ、そうだよね……というか、シェオールにお宝はいっぱいあるわけで……」


 フーレが言いたいのは、何が出てきてもシェオールの富ほどではないということだろう。


「うーん。まあ、あえて言うならあのゴーレムの鎧というか、装甲は気になるな。でもあいつらと戦わなきゃ別に必要は……って、おいおい!」


 ハイネスは言葉の途中で、声を上げた。

 その視線の先には、俺たちも通ってきた渓谷があった。その渓谷は、何やら大きな金属の扉のようなもので塞がれる。

 瞬く間に、他の渓谷も扉で閉じられてしまった。


「私たち、閉じ込められた!?」


 フーレが言うように、少なくとも地上から出る手段はなさそうだ。


「さっきのゴーレムがやったのか……出るだけなら、ケイブスパイダーたちの助けがあればどうにかなりそうだが」


 俺は言葉の途中で扉の上に巨大な人影が見えるの気が付く。


 恐らく先ほどのゴーレム……にしては数が多い。もしかすると、扉を閉めるだけでなく増援を呼び出したのかもしれない。


「こちらには気づいてないが、あの高さからなら歩くだけで見つかるな……アンデッドも襲ってくるし、気づかれずに出るのは少々難しい」


 とはいえ、終始俺がシールドを展開していけば何とか逃げられるはずだ。皆固まって進んでいけばいい。


 だがその時、守り人のオーガスが言う。


「ならば、そのマッパ殿が目を覚まされるまで、ひとまず地下遺跡のほうに逃げてはいかがですかな? 昔冒険者たちが使っていた休憩所がある。水も飲めるし、身を休める場所も。ここを降りてすぐの場所です」

「そんな場所が……でも」


 俺が言うと、アシュトンが呟く。


「マッパ殿なら楽に帰れる方法を知っているかもしれません。それに、何か欲しくて来たのやもしませんし」


 確かに、マッパがここに何しに来たのかも気になる。きっとシェオールやアランシアのためになるから、こんな強引にやってきたはずだ。もちろん、自分のためという可能性もあるが……


 また、守り人のオーガスとヴァネッサは顔を合わせ、恥ずかしそうに言う。


「正直に申し上げると、我らもカルラの回復を待ちたく……」


 守り人のカルラは先程から乗り物酔いのせいか、ずっとケイブスパイダーの上でダウンしている。


「分かった……とりあえずはその休憩所に行こう」

「かしこまりました、それではあちらへ」


 オーガスはケイブスパイダーに、屋根から蜘蛛糸を垂らしてもらい、それで神殿の下まで降りていく。


 周囲にはまだゴーレムはいないので、特に問題はない。

 皆無事に下りると、オーガスはある建物のほうへ向かって走っていく。


 だがその時、突如頭上に魔力が現れたことに気が付く。


《侵入者発見! 侵入者発見! 排除する!》


 空を見上げると、そこには翼を広げた鳥がいた。むろん、ただの鳥ではなく全身金属製だ。先程神殿の中で現れた人型ゴーレム同様、けたたましい警報音を鳴らしている。


「飛行型のゴーレム!? ヒール殿、ここは我ら兄弟に!」


 アシュトンはまたもやハイネスと共に殿を務めてくれようとした。


 しかし俺は首を横に振る。


「いや、試したいことがある……奴らの情報を知りたい。皆、先に行ってくれ!」

「……承知いたした」


 アシュトンは俺の意図を汲んでくれたようだ。

 ハイネスと一緒にオーガスらが避難した建物に向かう。


 どうやらフーレはその建物の入り口から、シールドを俺に展開してくれるらしい。

 ありがたい。俺はこっちに集中できる。


 金属製の鳥はまっすぐ、丸腰の俺に向かってきた。


 だが直前で俺はピッケルを手にし──鳥を叩く。


 瞬間、がしゃんという音とともに、鳥は崩れるのだった。


 やはりというべきか、ピッケルは有効だった。金属なら、これで崩せる。これも【洞窟王】のおかげか。


「よし! やっぱりこれは効くか! っと……」


 どうやら、他にも空からやってくるらしい。

 魔力がこちらに集まってくるのを察知した。


 俺は手早く鳥の残骸をインベントリへと回収すると、オーガスらの入った建物へ走るのだった。

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