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百七十四話 追放者でした!?

 神殿風の建物の階段を上り終え、俺達は建物の中に駆け込んだ。


「マッパぁっ!」


 俺の声が広い金色の空間に響く。


 金色の列柱が入り口からまっすぐ二列、建物の奥にほうに向かって並んでいる

 ……そして建物の最奥には、ひじ掛けに頬杖をついて座るふてぶてしい男が。


「マッパ! 何のつもりだ、こんな場所まで!?」


 先行していたハイネスはそうマッパに声を掛けた。


 だがマッパはにやりと笑みを返すだけだ。


「ちょっとおっさん! 皆にこんなに心配かけて、どういうつもり!?」


 フーレもそう声を浴びせる。フーレには珍しく、少し怒っているようにも見えた。


 皆心配していたからこそ、感情が高ぶっているのだろう。


 俺はそんな中、マッパに近づき声を掛ける。


「マッパ……ここは、お前に関係のある場所なんだな?」


 その問いに、マッパは目を瞑り深く頷いた。


「やっぱり……」


 つまり、マッパの故郷……


 街の至る所にあるドワーフの像と、高層建築を見れば納得だ。マッパはこの街で育ったのだろう。


 そしてあの玉座に座る姿……マッパはこの国の王族なのだろうか。

 偉そうに深く座る姿は、なんだか癪だが様にはなっている。


 それにもう一つ気が付いたことがある。


 左右の壁一面に、突如魔力の反応が現れたのだ。


「マッパ……まさか、俺たちを」


 殺すような男じゃない。


 だけど、捕まえようとしているのかもしれない。

 今までさんざん”マッパ”などと呼んでいたのを根に持って──いるわけないか。


「……おい、マッパ。俺たちに何を見せるっていうんだ? よっぽどすごいものなんだろうな?」


 俺が問うと、マッパはにやりと笑い、ひじ掛けにある四角い突起をポチっと押した。


 その瞬間、左右の壁が突如開かれる。


「こ、こいつらは!?」


 壁から出てきたのは、ドワーフを思わせる大きくずんぐりとした人型の者。

 全身を覆うきんぴかの鎧と斧を持つ、戦士風の者たちだった。

 大きさは縦横を見ても、普通の人間の三倍はありそうだ。


 それが十体ほど。ここの守護者たちだろうか。


 だが恐らくは生き物ではない。きっとゴーレムだろう。


 マッパは片手を上げ、彼らに合図をする。

 ゴーレムたちはそんなマッパに近づいていく。


 自分の前で規則正しく整列するゴーレムたちに、マッパは苦しゅうないとでも言わんばかりにご満悦の様子だ。


「マッパのおっさん、これ見せたかったの……?」


 フーレは呆れたように呟いた。


 自分の意のままに動く軍隊を見せびらかしたかったということだろうか……いや!?


 俺はすぐさま、マッパにシールドを展開する。


 ゴーレムが突如斧を振り上げたからだ。


 斧はシールドに弾かれ、鈍い音を奏でる。


 一方のマッパは、とても焦った様子だ。

 どうしてとでも言うように、椅子にある四角い突起をポチポチと連打していた。

 ゴーレムたちは自分の意のままに操れると思っていたのだろう。


 ゴーレムたちは頭の部分から赤い光を点滅させると、けたたましく音を発し始めた。


《侵入者を発見! 照会中……国籍不明、種族不明者多数……内一名は国家追放者リストにデータあり! 排除を開始する!》


 彼らの言葉は分からない。


 しかし彼らの発した音は、俺たちにそう告げた。何かの魔法だろう。


 だが今はこうしてはいられない。マッパを助けなければ。


 俺が何か指示を出す前から、アシュトンとハイネスは曲刀を抜いていた。


「けっ、やっぱまだまだマッパは子供だな!」

「我らが尻を拭いてやらねば!」


 二人は床を蹴り宙に飛ぶと、ゴーレムたちの首を落とす。


 同時に、フーレも炎の魔法でゴーレムを攻撃した。


「タラン! マッパを!」


 フーレの声にタランは天井に飛びつくと、マッパの頭上で蜘蛛糸を発射し、マッパの腹をぐるりと縛って吊るし上げる。


 だが、ゴーレムたちは手強かった。

 フーレの魔法は効かず、首を落とされたゴーレムは何事もなかったかのように斧でアシュトンたちを攻撃していく。


「こいつら、攻撃が効かない?」


 曲刀による攻撃はともかくとして、フーレの炎魔法なら彼らの鎧に使われているだろうオリハルコンは溶かせるはず。


 シールドの魔法でも展開しているというわけか? だが魔導石が使われているようには見えない。


 かつてシェオールの地下で戦ったゴーレムたちで魔法が効かない者たちがいた。

 彼らは魔防石という魔法を防ぐ石や、魔力を吸収する魔吸晶で俺たちの魔法を防いだ。

 俺たちはピッケルで戦うことで倒したが……


 今ピッケルを持っているのは俺だけ。そもそもピッケルが通用するかは、叩かないと分からない。

 

 それにフーレたちはともかく、守り人たちを守りながら戦うのは辛い。守り人のオーガスたちも加勢してくれるが、やはり彼らの攻撃も通用してないようだ。


 その間に、タランはマッパをこちら側に連れ戻すことに成功した。


「くっ……一度退くぞ! タラン! ここの屋根上に撤退する!」


 俺の声に、タランは頷くように体を縦に振る。

 そして他のケイブスパイダーたちと一緒に外へ走った。


「皆、一度外へ!」

「ヒール殿、殿しんがりは我らに!」


 アシュトンはそう言って、ハイネスと一緒にゴーレムの周囲をぐるりと一周するように疾走する。


「二人とも、助かる!」


 俺はそんな二人にシールドを展開しながら、外へ逃げた。


 そして入り口を出てすぐの場所に垂れていた蜘蛛糸を掴み、ケイブスパイダーたちに引き上げてもらった。


 守り人も一緒に、そして囮となってくれたアシュトンとハイネスたちも屋根まで上がってくると、俺たちはそこでほっと息を吐いた。


 ゴーレムたちは相変わらず警報音を鳴らしているが、俺たちが屋根にいることは分からないのか、都市の四方へ散っていくのだった。

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