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百七十三話 大神殿に到着しました!?

「すっごい! シェオールの地下よりも金ぴかじゃない?」


 フーレはケイブスパイダーの上から周囲を見渡すと、感嘆の声を上げた。


 俺たちは今、アランシアという国にある古代神殿群の中にいる。

 神殿、というよりは都市のような場所だ。

 馬車が六台は横並びで走れるような通路、十階建てはあろう高い建物、いずれも高い技術力が窺える。


 シェオールの地下の規模も立派だったが、ここは建物や道にオリハルコンが使われていて見た目にも豪華に見える。

 

 道路には傷一つ見えないが、今まで誰も切り出せなかったのだろうか。建物も解体されたような跡は見えない。


 だがその代わりというか、運べるような物体は何一つ見えない。釘の一本すら落ちていないのは、王族やら盗掘者がこの都市の物を根こそぎ持って行ってしまったのだろう。


「これだけのオリハルコンがあれば……」


 俺が掘りだし、マッパが加工する。

 そうすればアランシアの人たちも強力な武器を作れるようになるだろう。


 とはいえここは神殿。

 異教の聖地と認定されたとはいえ信仰対象にしてる人もいるだろうし、なかなか難しい話だ。


 そもそもマッパを無事に連れ戻さないと……


「……っと、魔力が一斉に動き出したな」


 俺たちに気が付いたか先行するマッパに気が付いたかは分からないが、この都市に点在していた魔力の反応が続々と動き出す。


 ハイネスは鼻を上に向けながら言う。


「骨の匂いが立ってきやがった。しかも多い……」


 ハイネスの言葉からすると、魔力の正体はスケルトンが多いようだ。


「兄貴、先行して蹴散らすぞ」

「ああ。マッパ殿も周囲を囲まれては速度も落ちよう。追いつく絶好の機会だ。ヒール殿、ご許可を」


 アシュトンも俺に顔を向ける。


 タランたちケイブスパイダーは決して遅くはないが、コボルトのそれには流石に敵わない。


 さっきの平野と違い、ここは待ち伏せされやすい。マッパがスケルトンたちに襲われる危険もある。二人に頼むのがいいだろう。


「分かった。だが、俺の目のぎりぎり届く距離からは離れないでくれ。シールドをかけながら進みたい」

「ヒール殿……かしこまりました。では!」


 アシュトンとハイネスは一気に加速した。


 もともと結構な速度で疲れているようにも見えたが、マッパのためか全力で走っているようだ。


 俺はそんな二人にシールドをかけながら進む。


 だが、危険は俺たちも一緒だ。


「うわっ!? 矢が降ってきた!?」


 フーレは上空から落ちてくる矢に、すぐにシールドを展開する。


 どうやら建物の屋上から射かけてきているようだ。屋上だけじゃない、窓からもびゅんびゅんと矢や石弾が飛んできた。


 進むアシュトンとハイネスにもその攻撃が浴びせられ、またその前方に立ちふさがるように武装したスケルトンが現れる。


 だがアシュトンとハイネスは曲刀を抜くと、全く速度を落とすことになく、スケルトンたちを切り倒していった。

 俺がシールドをかけていることもあり大胆に攻撃できるのかもしれないが、それでもやはりこの二人の俊足と武技は大したものだ。


 しかし、建物の中の敵はどうにもできない。


「こ、こんなに攻撃が! 以前はここまでではなかったのに!」


 守り人のオーガスは四方の攻撃に盾を構えながら進んでいく。一方のヴァネッサは魔法でスケルトンに反撃しているようだ。


 フーレも俺もシールドを展開しているので、なかなか反撃が難しい。

 ここを早めに切り抜ける必要がある。


「マッパのやつは……ってあれは……」


 マッパの金属製の馬は全く速度が落ちていない。そればかりか、金属製の馬から何か光線のようなものが出て、行く先や上空の敵を攻撃しているようだった。


 フーレは目を丸くする。


「あ、あれ、魔法?」

「魔力の反応はあったからそうだろうが、魔導石か何かを使っているのかもな……」


 それでも未知の魔法だが。


 と思っている内に、次第に攻撃が緩やかになってきた。

 どうやら一番敵の密集していた地区は突破できたようだ。


 それから少しして、マッパの魔力の反応がついに止まる。

 マッパは金属製の馬を降りたようだ。


「よし! 今だ! 待て、マッパの兄貴!」


 ハイネスは声を響かせると、更に加速してマッパを追いかける。


 だがこんな時だけマッパの足も速い。


 マッパは都市の中でも一際大きなドーム状の建物に駆け込んでいった。


「あそこはなんだ……」


 都市の中央にあり、他の建物より大きい。

 柱とアーチで彩られた壁には、ドワーフのようなずんぐりとした体格の者たちの像があった。それらの像は例外なく、王冠のようなものを被っている。

 宮殿かドワーフの王族に関連する場所というのは、間違いなさそうだ。

 

 オーガスがそれを見て呟く。


「大神殿……このゼンランバラで一番大きな神殿です」


 しかし、とオーガスは続ける。


「あの中には、中央に金色の玉座のような椅子があるだけ。あのマッパ殿とやらは、何故あのような場所に」


 魔力の反応もない。

 スケルトンもいないだろう。


 だがあのマッパが一目散に目指した場所だ。

 何もないわけがない。


 俺たちは神殿の前に到着すると、マッパ、そしてそれに続くように大神殿に入ったアシュトンとハイネスを追うのだった。

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