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百六十一話 駆けつけました!

「うわああああああ!!」


 扉の守り人だったカルラは、空中を飛ぶタランの背中で叫んでいた。


「ちょ、ちょっと、大丈夫?」


 翻訳石を持ったフーレがカルナに声をかけるが、カルラは抑揚のない声で「大丈夫」と返した。


 カルラの気持ちは俺もよくわかる。怖い。

 

 俺も下を見たら同じことになるだろうな……


 何とか俺は前だけを見続けた。

 すると城壁がもう目の前に飛び込んでくる。


「もう着きますね。皆さん、戦闘の準備を!」


 リエナの声に俺たちはおうと返した。


 タランが城壁に着地すると、俺はすぐに飛び降りた。

 

 城壁ではすでに兵士と思しき人々が弓や投石器で防戦に当たっていたが、いきなり現れた俺たちに皆気が付く。


「な、何者だ!?」


 兵士たちは俺たちに槍を向けた。

 

「あ、私たちは! えっと、カルラさん説明を……あれ、ちょっと!! カルラさーん!?」

 

 フーレはその場で伸びてしまったカルラの体を揺らす。


 しかしカルラは起きない。


 兵士たちは俺たちを見てざわつく。


「ま、守り人のカルラか? し、しかしこれは一体……というか、なんか蜘蛛もいるし……って、裸のおっさんも来たぞ!?」

「え? マッパ?」


 振り返ると、そこには蜘蛛糸を索道に、鉄の輪を滑車にしたマッパが塔から降りてきていた。


 いや、こんな不思議な場所なんだ。来るとは思ったが……


 皆、城壁に着地する上半身裸のマッパに困惑する。俺も困惑しているが。


 そんな中、遠くから声が聞こえた。


「そこ! 前方に集中しろ!! ドラゴンが!!」


 叫んだのは、長い黒髪を後ろで結わいた若い女性だった。

 

 司令官にしては、軽装だ。


 だが、それは他の兵士も同じ。この城壁の兵は、皆あまりいい装備を身に着けていない。


 叫んだ女性はそのまま剣を抜いて、こちらに走ってくる。


 俺たちのいる場所に、黒い竜が迫ってきたことを危険に思ったのだろう。


「下がっていろ! 私が斬る!!」


 しかしすでにドラゴンの本体は皮膚がただれ、不死の存在になっているようだった。とても刀で痛みを感じるとは思えない。


 案の定、刀を振り下ろした女性はドラゴンによって薙ぎ払われてしまう。俺はシールドによって、吹き飛ぶ女性を保護した。


「ちっ? え? な、何ともない?」


 受け身を取る女性は、自身に傷一つついてないことに驚きを隠せないようだ。


 俺はそんな女性と兵士たちに叫んだ。


「俺たちは加勢に来ただけだ! リエナ、フーレも行くぞ!」


 俺はそう言うと、ドラゴンに手をかざし炎の魔法を放った。


 すると、ドラゴンも口から黒い瘴気を発する。


 俺の炎と押し合いになる瘴気だが、先ほどの大型と比べればあまりに小さい。ついには瘴気をもみ消す。

 ドラゴンは炎を喰らうと、空の向こうへ吹き飛ばされていった。


「い、今のは魔法!?」


 女性や兵士たちが目を丸くする中、リエナたちも違う方向からやってくるドラゴンを攻撃し始める。


 タランは城壁の下から飛んでくる矢や石を、見事に蜘蛛糸で叩き落していった。


 俺たちはその後、城壁の下に炎魔法を放って、火の壁を形成していく。


 すると黒い瘴気を纏った者たちは、続々と引き返していくのだった。


「おお、波が返っていくぞ! 追い払ったんだ!」


 兵士たちはわあわあと歓声を上げた。


 俺もリエナたちと手を合わせ、勝利を喜ぶ。


「あれ、そういえばマッパはどこに……あっ」


 いつの間にか消えたマッパを探していると、指揮官と思しき女性が俺たちのもとにやってくる。


「あ、俺は……」

「何者だ?」


 女性は鋭い視線と剣先を俺に向けるのだった。

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