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百五十五話 お茶会を開きました!

「甘い……」


 世界樹の下に置かれたテーブルにカップを置くと、自然とそんな言葉が漏れた。


 口いっぱいに広がる茶と蜂蜜の風味……最高だ。

 もっと甘ったるいかと思ったが全然そんなことない。全くしつこくなく、大人も飲める上品な味わいだ。


 同じように茶を飲む皆も、至福そうな顔をする。


「ふむ。甘いのは好きではなかったが、これは上品ですな」


 バリスの声にエレヴァンも頷く。


「ああ……俺も子供っぽいのはどうかと思ったが、案外いけるものだな」

「お父さん、もともと甘い物好きだったでしょ? 素直じゃないなあ」

「う、うるせえ! ともかく美味しいって言いたいだけだ!」


 エレヴァンは、にやにやとした顔をするフーレにそう返した。


 フーレはそんな父を無視し、感心した様子で呟く。


「いやあ、でも本当に美味しいよ。見事に調和しているというか……」

「世界樹の葉の茶と、ヒースさんが樹液から集めた蜜ですからね。合わないわけがありません」


 リエナが言うと、ヒースは照れるように頭を下げた。


 面映おもはゆいというのもあるだろうが、自分がおかしくなったことや巨大蜂のガルダの件で騒がせたことも恥ずかしく思っているのだろう。

 ガルダは間違いなく、ヒースの知己……いや、親しい間柄だ。


 ヒースは必死に手振りで何かを伝えている。


「これからも蜜を作る……ってことかな。ありがとう、ヒース」


 俺が言うと、ヒースはコクリと頷いた。


「でも、ちょっとでいいからな。さっきみたいに調子がおかしくなっても心配だ」


 ヒースは水を指して、大丈夫とでも言いたげだ。


 子供の蜂やガルダも呼び寄せているし、皆で集めるということだろうか。それならヒースも樹液を吸いすぎなくて済む。


「まあ、本当にほどほどにな……しかし、いい一品ができた。きっとこの島を訪れる商人も気に入るはずだ。だが……」


 もう一つ気になるのは、ガルダの腹に蠢いていたあの触手だ。


 その切れ端のようなものは、今洞窟の一室で保管されている。


「バリス。ガルダの話を聞いてくれたんだったな」

「ええ。どうやらガルダ殿は、もともと幼馴染であるヒース殿を探していたようでして……」


 そう言った瞬間、ヒースは翅で顔を隠す。

 ガルダは照れるような顔を見せた。


「だがここからずっと北の青空を駆けていると、突如夜と見紛うような真っ暗な空が現れ、その中で意識を失い……我らが触手を取り除いた時、ようやく意識が戻ったようです」


 バリスの声に、ガルダはうんうんと頷く。


「なるほど。触手に操られていたのか」

「ええ。しかし、そんな中でもヒース殿のことは夢に見たようで……求愛のダンスをするヒース殿を……」

「へ、へえ」


 ヒースは恥ずかしさからか、ガルダをつんつんと突いた。


 そうか……あの奇妙な踊りは求愛のダンスだったと。

 ガルダは本能から、ヒースの場所まで向かったというわけか。よく、わかったもんだな……


「しかし、真っ暗な空か……」


 飛んでいたら触手に襲われる──そんな話も魔物も、全く聞いたことがない。


 だが、先ほどのガルダからは膨大な魔力を感じたし、その源だった触手が危険な存在であることは確かだろう。


 それに昼なのに真っ暗な空とは……

 この前のデビルホッパーの仲間とかじゃないよな?


「……バリス。触手については、厳重に管理してくれ。それと異変があったら、すぐに知らせてくれると助かる」

「かしこまりました。部屋もマッパ殿に頼み、頑丈にしましょう。見張りのゴーレムも付けます」

「任せたぞ。なんだか嫌な予感がする……」


 考えすぎかもしれない……


 だが、父の話した予言が俺の頭によぎる。


 世界が終わるという予言……いや、まさかな。


 俺は大陸のある北のほうを見て、胸騒ぎを感じるのだった。

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