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百四十七話 地下都市で探りました!

 地下都市まで鉄道で降りると、そこには警備の魔物たちがいた。


 警備隊は、ゴーレムを中心とした多様な魔物で構成されている。


 地上までキメラが来ないよう、交代で見張ってくれているのだ。


 そのため、皆、ミスリル製の武具を身に着け、ゴーレムにはシールドの魔法を使えるようにしてある。

 島内でももっとも厳重に警備されている場所と言っていい。


 俺はそんな警備隊のゴブリンに声を掛ける。


「お疲れ。聞きたいんだが、アシュトンとハイネスはどこにいるか分かるか?」

「これは陛下! お二人は先ほど簡単な食事を済ませ、地下都市中央にある大通りまで向かわれました」

「そうか。大通りだな」


 俺は警備の者と別れ、大通りへと向かう。


 地下都市にはいくらか通りがあるが、その中でも一番大きな道を俺たちは大通りと呼んでいた。

 都市の南北を縦断する道で、道沿いには地下都市でも大きな建物が建っている。


 入り口から大通りには、西に五分ほど歩けば入れる。


 最初、大通りにはキメラが多く、俺たちはこの道を通ることはなかった。


 しかし今は、ここで仲間になったマンティコアのコッパのおかげでキメラも減り、比較的安全に通行できるようになっている。


「ここもだいぶ平和になったもんだ……うお!?」


 目の前に、おっさんの顔をしたコッパが現れた。


 口にはキメラを咥え、大通り側から帰ってきたようだ。


「お、おつかれ、コッパ」


 コッパは俺ににこやかな顔を向けると、そのまま去っていった。


 だ、だいぶ打ち解けてきたな。

 でも暗闇から現れるのを見ると、マッパ同様少しびっくりするな……


 警備の者はコッパが捕えたキメラにアリエスの毒を飲ませ、大人しくさせているようだ。


「まあ順調にキメラも減っているな……おう!?」


 俺が突如目の前に現れた黒い蜘蛛に驚く。

 タランだ。


「今度はタランか。いきなり現れたからびっくりしたぞ。お、シエルもいるのか」


 タランの上にシエルも乗っていた。


 どうやらタランたちは、アシュトンとハイネスを探すのを手伝ってくれるらしい。


「いつも悪いな、二人とも。それじゃあよろしく頼むよ……え!?」


 俺が上に跨ると、タランは突如蜘蛛糸を天井に向け放った。


 そして大きく跳ね上がると、糸を頼りに天井のほうへと飛んだ。


 俺は落ちないようタランに掴まるが、シエルが俺の脚とタランの足をまとめて縛ってくれているので問題ない。


「な、なるほど……上から見たほうが早いってことか。そりゃまあ、そうだろうけど……」


 ……俺は高い場所が苦手なんだ。


 まあでも、シエルとタランがせっかく来てくれたんだし、わがままは言えない。


 またタランは、天井の蜘蛛の巣にいる他のケイブスパイダーと、脚を使って何か連絡を取り合っている。


 アシュトンとハイネスの居場所を聞いてくれているのだろう。


 タランはあるケイブスパイダーが前脚で北を指すのを見て、蜘蛛糸を北に向け放った。


 するとブランコの要領で、タランは北へと跳んでいく。

 前進したらまた北側に新しく蜘蛛糸を吐いて、跳んでを繰り返して。


 すると、大通りに二人のコボルトの姿が見えてきた。


「いたな。よし、降りようか」


 タランは俺の言葉通り、蜘蛛糸を伸ばしながら、地上へと着地した。


「お。これはヒールの旦那。こんなところに、何か用ですか?」


 ハイネスが言うと、アシュトンがそれに返す。


「ヒール殿……いや、陛下は我らを心配してくださって来てくれたのだろう。陛下、心配をおかけして申し訳ない」

「アシュトン、ヒールで大丈夫だ。それより、話はバリスから聞いた。スライム……見つからない帝国の人を探してるんだって?」

「ええ。ですが、一人を除いてはもう見つかったのです。総勢で三十名程。シエル殿が見つからない家族の者の部屋を全て書き出してくれましてな、その部屋の周囲を探索するだけで割とすんなり見つかりました」


 アシュトンはそう言うと、シエルに頭を下げた。


 シエルはとんでもないとでも言わんばかりに、体を縦に振る。


 しかし、ハイネスが暗い顔をして続けた。


「ですが最後の一人が見つからないんでさあ。ボレンっていう男の子らしいんですが、住居とその周辺を調べてもいなくて」

「うむ。なのでしらみつぶしに、地下都市の部屋を全て回っているのですがな……」


 アシュトンは周囲を見て言った。


 地下都市の住居は、高いところで二十階建てのような場所もある。

 そういう場所だと、一つの建物に百部屋近くもあったりする。

 相当骨が折れるだろう。


「まあ、今はスライムたちやゴーレムの力を借りて、住居を整備しているところ。いずれは見つかるとは思いますが……」


 アシュトンは諦めきれないような顔で言った。


 まだ小さい男の子だ。

 何とかして早く見つけてあげたいのだろう。


 そんな時だった。

 後ろからキャンキャンと声が響く。

 

 振り返るとそこには、コボルトのリルと、白い鳥のメルがいた。


 二人とも、なんだか自信ありげな顔でこちらを見ている。

 自分たちも捜査に協力するということだろうか。


「二人とも……嬉しいが、子供はもう寝る時間だぞ?」


 すると二人は、人間のような姿に変身する。


 リルは犬耳としっぽを生やした白いショートヘア―の女の子。

 メルは長い銀髪の子で、もふもふとした翼を生やしている。


「やだ! リルたちもお父さんと捜査する! リルも皆の役に立ちたい!」

「する! メルもリルちゃんと一緒に!」


 その声を聞いたハイネスは、突如泣き出す。


「うう、若……本当に立派になって……メルちゃんも本当にいい子に育ったなあ」


 ハイネスはそう言って、二人を撫でる。


 二人は嬉しそうにハイネスの毛にもふもふと体を擦り寄らせた。


 俺から言わせると育つのが早すぎだが……それよりも、俺もハイネスの毛触ってみたい……アシュトンのしっぽも気持ちよさそうだよな。


 いかんいかん……大の大人が何を言ってるんだか。今はそれどころじゃない。


「……まあ分かった。ともかく、あと一時間、皆で頑張って探そう。それで駄目だったら今日のところは一旦引き返す。いいな?」


 俺の声に、皆うんと頷く。


「よし、それじゃあ……うん?」


 俺は何か、魔力が猛スピードで移動したのに気が付く。

 住居から住居の上を渡っていったような……


 俺がその方向に目を向けると、リルが言った。


「お父さん! リルも今、何か通り過ぎたのに気が付いた!」

「俺もです! 北のほうに匂いが飛んでいくのがわかりました!」


 ハイネスもリルと同じように何かを感じ取ったようだ。


 北……宮殿のあるほうだ。


「そうか。俺もすごい速度で通り過ぎる魔力を感じた。あれはケイブスパイダーじゃない……かといってスライムやキメラの大きさでもなかった」


 アシュトンが俺に言う。


「では、その方向へ向かいましょう。何か手掛かりがあるかもしれません!」

「ああ、行こう!」


 俺たちは北へと……地下都市の宮殿のあるほうへ向かうのだった。

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