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百四十二話 シェオールの街を見学しました!

 宮殿を見た日から数日の間、俺は七曜石が掘れた洞窟を拡張していた。


 なんていうこともない日が続く中、昼に地上へと戻ると、リエナから声が掛かった。


「ヒール様! ついに、商業区と行政区の方が完成いたしました」

「おお、それじゃあ見に行ってみるか」

「ぜひ。公国の方やシエル殿らの意見も聞いて、随分と立派なものになりましたよ!」

「それは楽しみだな」


 俺は早速、リエナと共にシェオールの”街”にあたる部分へと繰り出した。


 まずはこの前の宮殿を通り抜ける。

 宮殿内部を通り抜けるための道が、中央にある階段の両脇にあるので、この前のように迂回する必要もない。


 宮殿を抜け、広場に出ると、この前とは明らかに異なる光景が広がっていた。


「おお、これは!」


 そこにはもう立派な街と呼べるものが広がっていた。

 王都に負けない四、五階建ての建物が並んでいる。


 建物は全て石造りだ。

 大理石、灰色の岩が見える他、色のある岩を塗料にしたのか、白やベージュの壁も見えた。

 屋根は全体として、オレンジ色の瓦が使われているらしい。


「もう、こんなに……というか、よくこんなカラフルにできたな」

「前までは、白や灰色ばかりでしたからね。シエルさんによれば地下都市に塗料の備蓄があったようで、それを使ったんですよ。塗料は腐ってなかったようで」

「なるほど……それでここは」

「ここらへんは行政区ですね。皆、それぞれ担当する仕事によって、建物が分かれています」

「省庁ってことだな。いやあ、数日でここまでとは……」


 建物の壁には、それぞれ立派な彫刻が飾られていた。

 碇のマークは船や海軍を担当するカミュの部署、剣と盾は軍事担当のエレヴァンの……と、各建物がどういう部署なのか分かるようになっている。


「シエルさんたち、帝国の方が加わってくれたのが大きいですね……建築に携わっていた方もいるみたいなので。マッパさんと協力して、上下水道なんてのも整備されてます。下水は、焼却処分されるとかなんとか……よく分かりませんが」

「へえ、水道までか……至れり尽くせりだ」

「建物の中は見ていかれますか?」

「いや、皆まだ慣れてないだろうし、用があったら見に行く感じにするよ」

「では、次は住宅区を通って、城壁の向こうの商業区に行きましょう!」

「ああ」


 俺たちは行政区の次に、北の住宅区を通る。

 大通りを歩いて気づいたのは、街灯だけでなく、街路樹や花壇なども道に飾られていること。

 また所々に噴水や水路があって、水の流れる音も綺麗だ。


 住宅区もなかなか立派なものだった。ここも行政区同様、三階建て以上の建物が多い。


 リエナは住宅区を見ながら言った。


「公国の方や、地下の帝国の方はやはり洞窟よりも、こちらのほうに暮らしたいみたいですね」

「人間は陽の光が欲しくなるからな」


 まあ、俺はどちらかといえば、地下のほうがすきだけど……


「一区画ごとに中庭を四角く囲むように家が並んでいます。庭で植物を育てたりするみたいですよ!」

「そこらへんは王都も同じつくりだったな。憩いの場所になるといいが」


 住宅区を進むと、なんだか立派な城門が見えてきた。

 屋根付きの塔を二つ兼ね揃え、立派な彫像と柱を兼ね揃えた大理石の門だ。


「おお、城門も偉く立派にしたな……ここを抜けると、商業区か」

「はい! そして目の前に広がるのは……」


 城門をくぐると、そこには大きな広場があった。中央に巨大な噴水があり、海を見渡せる広場だ。もちろん、巨大マッパ像の尻まで、しっかり見える。


「すごいな……」

「シェオールの玄関口ですからね! シェオールに来た商人の方々は、ここで主に過ごすことになるので」


 リエナの言うように、基本的に領民以外が過ごせるのはこの商業区だけになる。


 そういえば、バリスはここを豪華にすることで、島の豊かさを示したいなんて言ってた。


 そのためか、特に広場に面した建物が豪華になっている。


 一際大きな鐘楼とか、時計塔のようなものも見えた。


「ここには商店の他、宿などもあります。ただ……」


 リエナの言わんとすることは何となくわかった。


「何を売るか、だよな……」

「はい。魚と岩は売ることは決まったのですが、それ以外は以前ヒール様の仰っていたこともあるので」


 シェオールの持つ金銀宝石を売ろうとすれば、大陸での価格、経済に大きな影響が出る可能性がある。


 また、転移石など効果のすごい石も、悪用される可能性があるため売れない。


 となると、魚か岩ぐらいになってしまう。

 世界樹の枝も良さそうだが、あれはあれで大陸の木材の価格が心配だ。


「皆さん、色々考えてくれているのですが……マッパさんはあれを売ろうとしているみたいですね」


 リエナは商業区の一角、煙突の付いた建物を指さした。


 あそこはマッパの鍛冶場かな。

 って、あれは……


 置かれていたのは、マッパを模した像だった。

 主に石像のようだが、あれを売ろうとしているらしい……


 いや、前も言ったが非常に精巧である。

 しかし、誰が買うと言うんだ……


 まあ巨大マッパ像を見たら、この街の象徴を模した土産として買う者もいるかもしれない。


「……ああ、でも工芸品はいいかもな。世界樹の枝の工芸品とか」

「それ、いいですね! 木の腕輪とか、私たちゴブリンの間では流行ってましたので」

「王国人も気に入ると思うぞ。でも、もう少し何か欲しいよな……」


 魚と岩、工芸品……商人としては少し魅力が薄いかもしれない。

 ワインを作るためのブドウを育てるため畑を拡張しているが、成長まで時間がかかる。

 他に、何か島の特産といえるようなものが欲しい。


「そうだ……なあ、リエナ。世界樹の葉って、茶にできたよな?」

「はい。そのまま火にかけたり、あとは発酵させて紅茶にすることもできます」

「世界樹の葉はいつも落ちてくる。それを茶葉にしたらどうかな? なんなら、お茶を出すお店を作ったりして。あまり王国の人間は茶を飲まないが、味が良ければ普及するかもしれない」

「良いお考えかと! 食べ物や飲み物なら、王国の方々の生活にあまり影響しないでしょうし」

「よし、それじゃあそうしよう。入れ物とかも工夫してみよう」


 こうして俺たちは、シェオールの特産づくりに取り組むことになった。


 だがその時、地下ではある男が、島を再訪していた。

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