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百八話 間一髪でした!!

「お、お見事!!」


 アリエスは顔を青ざめさせながら、続々と降りてくるケイブスパイダーたちに、ぺちぺちと拍手を送った。


 そんなアリエスにフーレがいう。


「アリエス、今の内に毒!」

「そ、そうだ!」


 アリエスは十五号の助けを借りて、キメラの口へ毒を噴射しにいった。


 そんな中、タランはケイブスパイダーたちと脚を合わせる。


 再会を喜んでいるのかな?


 ケイブスパイダーは三十体ぐらいいるようだ。

 でも、天井にもまだまだいるみたいなので、全部は把握できない。


 微笑ましく見てると、タランは気が付いたように俺を見ると、また何か会話するような仕草をみせた。


 まるで皆に、俺を紹介しているようだ。


 ケイブスパイダーたちはぎょろりと、赤い目を俺に向ける。


 なんというか、やっぱり怖いな……


 だが、彼らは俺たちを助けてくれた恩人だ。

 笑顔で手を振り返す。


「やあ。俺はヒールだ。助けてくれて、ありがとう」


 すると、ケイブスパイダーたちは後ろ脚だけで立ち上がる。


「お、怒った!?」


 フーレは身構えるが、すぐにケイブスパイダーたちは姿勢を戻す。

 

 どうやら挨拶のつもりだったらしい。


 タランは俺に脚を使って、なにかを伝えようとする。


「ケイブスパイダーたちが……上に。なるほど、地上に行きたがっているのか」


 俺が訊ねると、タランは体を縦に振る。


「こっちは大歓迎だ。今から行くか?」


 そういうと、タランは体を横に振った。


 そしてシエルのほうに指さすように脚を向ける。


「まずは、やることを済ませてからってことか」


 タランはもう一度体を縦に振ると、他のケイブスパイダーたちに振り返る。


 すると、ケイブスパイダーたちは脚を一本あげて応じた。


「もしかして、協力してくれるのか?」


 俺の質問に、ケイブスパイダーたちはうんと頷いた。


「そうか。それは心強い。よろしくたのむ」

「陛下!! キメラたちに毒を飲ませ終わりました!!」

「そうか。それじゃあテイムしよう」


 俺はアリエスに答え、キメラたちをテイムしていく。


 全部で五体。

 地上にいる最初のキメラと合わせれば、これで六体になった。


 まるで犬のようにお座りするキメラたちに俺は告げる。


「お前たちはそうだな……とりあえず、入り口の警護にあたってくれるか?」


 そういうとキメラたちはこくりと頷き、入り口へと駆けていった。


 フーレはそんな彼らを見て呟く。


「なんだかこれで必勝法編み出せちゃった感じだね。タランたちに頼んで拘束からの、アリエスの毒。最強じゃん」

「……僕を干物にするつもりか? これ、結構体力使うんだよ……うっ、もう一週間は休まないと」


 アリエスは見ると、しわしわとなっていた。そんなアリエスに、フーレは水筒の水を飲ませる。


 しばらく、アリエスの毒は使えそうもないな。

 まあ、ケイブスパイダーたちが支援してくれるのなら、無理にキメラを仲間にする必要もないだろう。


 なにより、今回は偵察なのだから。


 俺たちは、再びシエルの後に続き、貯蔵庫を目指す。


 すると、巨大な箱型の建物の前でシエルは立ち止まる。


 どうやら、ここが貯蔵庫らしい。窓が少なく扉は多く大きい。いかにも倉庫らしい見た目だ。


「ここか」


 シエルはうんと体を揺らすと、扉の横にある取っ手を降ろす。


 すると、中には巨大なガラスの容器がいくつも貯蔵されていた。


 中には金色の液体、琉金が入っている。


 量は……ちょっと把握できない。

 ちょっとした湖を満たすぐらいにはあるんじゃないだろうか。


「すごっ……何も明りがないのに、めっちゃ明るい……」


 フーレのいうとおり、琉金は金色なので、部屋はとてもピカピカしている。


 しかしその時だった。


 後ろから、何かが走ってくるような音が響く。


 それは次第に大きくなり、かつ複数の足音のように変わっていった。


「キメラか? 皆、気を付けろ」


 俺の声にフーレと十五号は身構える。


 同時に、シエルもすぐに扉が閉められるように取っ手の近くへ向かった。


「扉を閉めてもらったほうがいいかもな……うん? あれは……」


 次第に、足音の正体が見えてきた。


 走ってきたのは、真っ裸のおっさん……マッパだった。


「マッパのおっさん!? 来ちゃったの!?」


 驚くフーレだが、俺は特に驚きもない。


 どうせ、ここの琉金を嗅ぎつげてきたのだろう。


 金属の匂いを嗅ぎ分けるなんて、普通じゃ難しい気もするが……まあ、マッパだし。


 だが、状況はよろしくない。


 マッパの後ろにはキメラの大群がいる。


 皆、舌を出して牙をむき、マッパを食そうとしているようだ。


 俺たちを見ていた時とは、キメラの様子が違うような。

 よだれをたらして、目の色を変えている。

 マッパが何かやったか……あるいはマッパが美味しそうにみえたのか。


「仕方ない、魔法でなんとかするか……あっ」


 だが、俺たちの意図を汲むかのように、天井から蜘蛛糸が降ってくる。


 流石にキメラの数が多いこともあり拘束しきれないが、キメラは足を取られてしまった。


「おお、ありがたい」


 そんな間に、マッパは頭から滑り込むようにこの貯蔵庫に入ってきた。


 同時にシエルが貯蔵庫の扉を閉める。


「間一髪だったな……って、マッパ!?」


 貯蔵庫の床はつるつるとしていた。


 だから、マッパはそのまま止まれず貯蔵庫の奥へ突っ込んでいく。


「まずい!! マッパぁあああ!!」


 遅かった。


 マッパはガラス容器のひとつに突っ込み、琉金まみれとなってしまうのであった。

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