我が家に鶏がやってきた!
いらっしゃいませ~
「お茶にしましょう。先生どうします?表にも診療所だします?」
「そうさね~。出したいとこだが…機具も道具も無くなっちゃったからねぇ。それに、少々こたえたよ…今回の件。ずーっと気張ってたのに、気が抜けちまった。ありがとうね。解決してくれて。我がままだけど、少々休ませて欲しいんだ。あの子たちを診ながら。早く目覚めるといいんだけど。親を亡くしてるから…酷だねぇ。」
「ええ。ゆっくり英気を養ってください。そちらの方も動いてます。」
「あんまり無理はいけないよ。このお茶美味しいね。癒されるわ」
「わかってますって。おチビ達もいますし。死人は戻りませんが…彼らには、何不自由ない生活をさせてあげたい。そうそう、不思議空間なのですぐ建築できるんですが、今、街並みを考えてる者が出ておりまして。帰り次第、町ができるので家も用意しますね。ブラウンさんたちもそれでいいかな?店舗転用可の家を用意するよ。」
「何から何まで…」
「礼を言う。被服については任せてほしい。」
「ん?かえってきたか?」…
「おっさ~ん帰ったぞ~」
「父さんただいま!」
「おう!おかえり!鶏は…って、そのちみっこは?」
トワ君の後ろには、この子のほかにも獣人の子が…
「ああ、盗賊のアジトで保護した…ってか、おっさんの方もいろいろあったようだな?」
「ああ、ありすぎだ。」
「トワ兄、協力してほしいんだけど」
と、雹がさっそくトワ君に相談を持ち掛ける。もちろん、悪魔退治だ。
その時。
「ん?なんだ雹? 「ママ!ママだ。」 うん?」
「「え?」」
熊耳のちみっ子、おチビちゃんがマーレさんに抱き着く。
「えぇと…」
「うぁ~んママだぁ!わーん」
泣きじゃくる、熊っ子。
「実母…じゃないよね」
頭を撫でながら頷く、マーレさん。
「まだ小さいからねぇ。恋しいんだろうさ。近しい支族のようだしねぇ。」
「ええ…」
「他の子たちは…まぁ、大丈夫そうだね…ようこそ。ここはおいらの家さ。ゆっくりして。今ご飯の用意をするよ。」
「はい、ありがとうございます。しかし」
チーターかな?涙目みたいな模様があるのよね。雹よりちょい上か。
「警戒するのは判るよ。」
「いえ、そうではなく。臭いでわかります。ここには獣人が多くいることは。ただ、代価が…」
ああ、涙もろいな…ぎゆっと抱く
「心配すんな!飯ぐらい気にせず食え!”ずびぃ”こんなに痩せて…ビルック大盛りだ!トワ君在庫放出!”ずびびぃ”食わせ殺せ!」
「うん!」
「まったく、おっさんは…」
「干し肉あったな!だせ。すぐだせ。飲み物も!」
「落ち着けっておっさん」
「ああ!じゃ、おいらは料理してくる!まかせた!お!雹も手伝え!」
「いいよ」…
「さて。何を作るまいか。」
ビルックと、雹とで調理場に立つ!
「父さん猪サンドが良いと思う。簡単だし早いし。」
「うん、僕も賛成!」
「じゃ、野菜はビルック頼む。雹はパンのカットと焼きな。盛り付けはみんなでやろう。肉多め、少な目でいいな。草食系の子もいるし。にしても、雹好きだなこれ。」
「父さん…雹だけじゃないよ僕たち、皆好きなんだ…初めて沢山の肉だったから…ルル達も」
「そ、そうか、そうかぁ~たくさん作っておいら達も食うべ!」
うぐうぐうぐぅ…そ、そうかぁ、そうかぁ。沢山食え!
…ちゃっちゃと大量につくる。牛乳とジュースをもってリビングへ。
「まだあるから、一個ずつゆっくり食べるんだぞ。さぁ、食え!」
大きく口を開けてパクつく子供達。泣きながら頬張る子も…
おじさん弱いのよ”ずびびぃ~”
「先生たちもどうぞ。まだありますんで。どうぞ。」
「ママ食べていいの?」
「いいわよ。頂きなさい。ゆっくりね。」”ずびぃ”
「何時もこうか?あの旦那は…」
「ああ、養子と問題が増える。あんたもそれでここにいるんだろ?」
「…ああ…そうだったな。」
「それで熊のおじさんはどうすんだ?」
「ん?」
「覚悟きめねえとなぁ」
「…」
「姉貴が可愛がってたからなぁ。俺の姉貴、しつこくて………強いぞ。」
「…生まれてすぐに亡くしてな…」
「しっかり覚悟決めないと勝てないぞ。」
「ああ。」
そうだな。ナイス。トワ君。”ずびびびぃぃぃい!”
「ほら。君も食え、ホントに何にもいらない。雹の友にでもなってくれ。」
「…しかし」
「とりあえずは、孤児院にはなるが…ここに住むことになる。帰る場所がある子。住むとこがある子が居たら言ってくれ。できることはしたい。何をするにも先ずは飯だ!食え!!」
「はい。」
収納からさらにだす。
「ほらな。まだあるぞ~食え!食え!」
「はい。」
「ここには大人がいる。子供に戻って良いんだぞ。」
親の代わりであったであろう、年長者、チーター君の頭を撫でり
「…うん。」
「しっかり食えよ。ん?」
{父ちゃん飯~}
「「おお!知らない子がいる!」」
「ほんとだ!わたしルルよろしく!」
乳しぼりから帰って来たか?
「おう。自己紹介しておけよ~手洗ったのかぁ~ほらファムこっちこい。カイ…尻破れてんぞ!はずぅ!替えの履いておいで。」
「マジ!」「はずいな!お前!」
子供達も、見れば食うだろう。
さらに、”収納”から出す…足りるかな?屋台飯もあるし、大丈夫だろ。
「あらあら。大家族だったんだねぇ。」
ファムの頭を撫でてる先生。
「ええ。まぁ。」
おいら…独身だけどぉ…
「おねえちゃんもいたの。」
「…そうかい。」
「私と合う前にすでに。でも不思議な縁がありまして。会うことが叶いました。その時に娘に。今も見守ってくれてるでしょう。」
「…そうだねぇ~よかったねぇ」
「うん。」
ファル。今日もファムは元気だぞ!
食後にちみっこ軍団が鶏の運搬?まぁ遊びだね。雹が連れて行った。…
「ただいまー…ぁああ?」
お!帰ってきたな!
「お帰りセツナっち」
彼女の視線が、大熊親分から、熊耳っ子にそして、マーレさんに視線が、ジろり。いきなりかい!
「セツナっち落ち着いて。慣れてんのはビルックに聞いてる。それも含めた話だ。」
さぁ、プラス面が多い縁談だ。がんばんべ!
「まぁ、一服。それからだね。」
とりあえずは落ち着いて話す環境をね。殺気が漏れちゃうから。もう!
「まず、この方はブラウンさん見ての通り、マッチョな熊獣人だ。で、こちらが奥方のマーレさん。」ぺこり。
「こちらがトワ君の姉のセツナさん。」ペコリ。
「最もきついときに雹たちがお世話になったそうだここにいる経緯は…」
…今までの流れを説明する。先生の紹介も忘れずにね。
「ふぅ。本当に、おじさまも大変ね…次から次へと…スルガ隊長が言ってたことね…それで、その子を引き取りたいと…。ふぅん…収入も無いのに?アホですか?」
…一理はあるが…
「こら、セツナっち。小熊ちゃんがマーレさんを見た瞬間、離れなくてね…それで情がってわけさ。」
「関係ないわよそんなの。幸せにできないじゃない。ここじゃ力仕事なんていらないわよ?農家でも始める気?」
わかってるって。殺気!
「…ぐぅ」
ビビんな!大熊!まだまだ、こんなもんじゃないぞ!
「そう、つっかかるなって姉貴」
いけぇぃ!トワ号!
「あんたは黙ってて。そうだ、エルザさんから紅茶の依頼よ。この茶葉で淹れて持ってってあげて。ほら」…バッサリかい。
「あ、姉貴」
轟沈…早いよ!早いよぉトワ君!
「で、熊さんはどうするの?腕力?はっきり言って私のが強いわよ。ドラゴンだって握りつぶせるし。」この子の未来を思ってる事は解ってるよ…
「…セツナっちの心配も判かった。それで、セツナっちのブランドにも関わるんだ…」
「はぁ?この筋肉ダルマが?」
「もう、落ち着けって…ブラウンさんこう見えて…お針子さんなんだ…」聞いて驚け!
「はぁ、寝言は…マジ?」
「うんマジのマジ。しかも裁縫匠、裁縫師の最上級職だ。子供たちにも講師として迎え入れることは決定だ。おいら達の服も作ってもらうつもりだ。’ここあ’達じゃ、複雑なのは無理だろ。奥様も裁縫師。これで服関係は安泰ってわけ。」
どうよ?
「…」
「ブランドも服までいくんだろ?」
「…ええ。将来的にね。」
「セツナさん突然の申し入れごめんなさい。まだお世話になっていますがちゃんと働いて育てます。」
「セツナ嬢、俺の肉体は裁縫のためにある。ドラゴンでも、ベへモスでも、ギガントタートルの甲殻でも縫ってみせる!使ってくれ!」
どん!と胸を叩く大熊。
…なんか違うぞ?ブラウン氏
”むぎゅう”そこでサイドチェストかよ!
…良いノリだが…おいら的には…暑苦しいから…マイナスか?
「…ふぅ…キレてるな!」
ん?
「わかったわ。かわいがってくださいな。その子幸せにしてね。」
「はい…」
難関突破?一件落着!
「で、キレキレのブラウンさん?お仕事の話をしましょうか?お手並みもみたいですし。」
「ああ!お嬢、任せてくれ!」
”むぎゅぃい”
またサイドチェストかい…それしかないのか?
「…そこは、フロント・ダブル・バイセップスでしょ!」
…なんじゃそれ?ふろばぶるせぷすぅ?
「ふむ。他にもポーズが?」
「こうよ、こう」…
「お嬢、こうか?」
”ぐぎゅむぅ”
「ここに力を…おお!キレてるー!キレてる!」
…あれ?…ぺたぺたと大熊ボディを触るセツナっち。今度はマーレさんの視線がきつい!
それは、マーレさんのだからね!セツナっち!
「ここも鍛えねばならんな!」
「つ、つぎは、バック・ダブル・バイセップスね!ポーズはこう。ここに力を…」
セツナっち…鼻血でそうだぞ!だからそれは、マーレさんのだって!
「姉貴!興奮しすぎ!」
”ぐぐぎゅむむぅ”
「ぬん!」
…もう”ぬん”じゃねーよ…どうなってんだ?カオスだわ…
「ぬおおーーーー顔だ顔!キレてる!キレてる!」
顔?何かの漫画であったな…
「セツナっち…筋肉好きなの?」
「姉貴ってビ女子だったの?」
びじょし?
「びじょし?知らんけど、筋肉も正義よ?トワも鍛えれば?細マッチョよりゴリゴリよ」
ゴリゴリ?トワ君は今のままが良いよ…トワ君に視線を向ける。あれは幻の”やれやれ”ポーズか?
その後、裁縫の腕前をみるんだ!ってブラウンさんドナドナされていった…
「…セツナっち…筋肉マニアだったんだな…」
「俺も初めて知ったよ…ポーズの名前?サイドチェストくらいしか知らんて」
「うん。おいらも…風呂場の何とかって…まぁ、相性は良さそうだからいいか。セツナっちもああいうノリ好きだから。」
「お!似たもの同士だもんな。おっさん。」
「そう?」
「うん。父さんと良く似てるよ。セツナ姉。」
ビルックまで…
「というわけで…おめでとうございます。この子もつらい人生だったでしょう。幸せにしてあげてくださいね。」
「…はい。ありがとうございます。きっと。」
あとは、税金とかか。
「事務的な話なのですが…縁組申請とか必要?」
「そりゃ、しといたほうが良いわさ。あんたら身分証はあるのかい?」
「一応は前の村の物を持っています。」
「更新して縁組。旦那に立会人になってもらって。折角だし心機一転!ってやつさね。」
「先生の言う通り。おいらが立会人ってのが”いいのか?”だけど。マシューさんに丸投げだな!」
「実際に立ち会ったんだ。適任さぁ」
ばむばむと叩かれる…痛い。
「とにかく、おめでとう。当分セツナっちに振り回されると思うけど…悪いヤツじゃないんで。よろしくね」…
後で聞いたら、”素晴らしい肉体だ!”って、そんなこと聞いてないって…。
前世界に遜色のないジーパンを渡されて、ブラウンさんは所謂”生体ミシン”だそうな。ファスナーは無いけどね。久し振りのボタン式も悪くないな。
本日もお立ち寄り、ありがとうございます。




