閑話5 鶏を買ったわよ!~ねぇねぇ聞いてよ!~
鶏購入組
「どうなってるのよ!トワ!」
「知らねーよ」
…数キロ先の道に横たわる木。古典的な足止めだ…つまりは…
「また、銀行。」
…そう。またもや盗賊銀行との会敵。
「姉貴、盗賊。」
「姉貴、姉貴って…お姉ちゃんよ!何度言ったら…まぁいいわ。二人残して殲滅!一応口上聞く?」
「おう。結構おもしろいんだよ?バカ丸出しで、ははは」もぅ。
「じゃ、回り込むわ」…
…。
足元に転がる汚いおっさん。
規模としては中くらいかしら。ま、この程度、即、壊滅だけどね。
「碌なの無いわね?どうせ死んじゃうんだから教えなさいよ。アジト。隠し場所。」
「…」
何その目は。生意気ねぇ。抜き手で突いてあげようかしら。
「死ぬ前に痛い思いをするだけ損よ?今なら一発で首切ったあげるわ。」
「姉貴…」
だんまり?ふふん。
「じゃ、貴方から聞きますね。どこ?」
そっと、肩に手を置く。
”びききぃきぎぃ”
「…いぶいぃぶぐぐぐ…」
鎖骨やら、周りの発達した筋肉事握りつぶす。
なかなかの筋量ね。掴み心地が良いわ
”ぶちぶちゅぶち!”
「ほら、損でしょ。次は足ね。どこが良い?要望は?」
「ぎう、言うから…もう…」
「どこ?」にっこり♡
「…全然、可愛くねぇぞ…。」
うっさい。
…
「トワ、一応、そこに転がってる頭の頭は持って行ってね。あと、これ!何かあるわ。貴族…かな?頭と一緒にしておいて。」
”ぼん”トワに向かって、蹴り飛ばす。何をって?首よ、首。
「蹴るなよ…。ほんとかよ?」
「女の勘」
うっそ。良い装飾品もあるし。立ち居振る舞いがね。
ここは”女”が居なくてよかったわ。めんどくさいから。情?介錯ならするわよ?その情とやらで、何回死にかけたことやら…。そう言う世界なのよ。
日本人なら…って?ふん。私は、異世界人よ。なにか?…
また襲撃。
「ちょっと、トワどういうことよ!そんなに(盗賊に)遭わないって言ってたじゃない!今まで飛び歩いて数える位って!」
「おっさんの力で高速ダッシュで移動してたからかな?それに…おっさんいないから、馬車や馬、強化できないし。」
「じゃあ、何?今まではガンガン強化して突っ切って来たってこと。」
「たぶん…伝令や見張りも追い付けなかったんじゃない?」
「おじさまらしい。のかしら?」
「姉貴、今は前!」
「もち二人残して」
「「殲滅!」」
「こわい。」
ビルック君…慣れよ慣れ。
…戦闘も特筆することない。にぎにぎ。すぱすぱだ。
「さぁ!やってまいりました!本日3件目のアジトです!どんな宝が隠されているのでしょーか!」
「何そのノリ。」
「こうでもしないと心が折れるわよ。ほら案内しなさいな。」
生かしておいた、賊の首に縄をかけ、案内させる。お宝を回収したら、縄を一気に引けば成敗出来て楽でいいわ。”ひゅ!””ごきん!”てな具合よ。
留守番をぶった斬ってアジト内に押し入る。
「宝物庫はどこか~いなぁ~♪…ってあんたら、こんな小さな子集めてどうすんのよ?」
宝物庫に隣接された檻。その中には更に鎖で拘束された獣人族の子供達が。中には、本当に小さな子も…
”どぅげすぅ”
案内の屑の腹に膝を叩き込む。
「”ごぁふぅ!”う、売るんだよぉ~。獣人のガキをまとめて買ってくれる貴族様がいるんだよぉ~。」
嗚咽を漏らしながら暴露する屑野郎!泣きたいのはこっちよ!この子達の親御さんはどうしたのよ!この!
「誰よ。そんな奴は?」
「…」
「握るわよ?あんた。股間の」
伏せていた顔をバッ!と上げる屑。効果大。ま、死ぬ前に激痛味わわなくともいいわよね。私には解んないけど♡
「は、はい!エキドレア、ヴァネス、パールラスの領主様だ…俺が知ってるのは…」
「証拠ある?…帳簿とか?」
「ある訳ねぇだろ、バカ野郎が”がきぐぅぎぃ”がきくぅ…」
あいあんくろー!
「バカはあんたよ。あら、もう聞こえないかしら。ほほほ。」
「頭潰れてんじゃん…」
「一応もっていって。それ。」
「ええ~やだよ、姉貴もってけよ」
「こんな可憐な少女に?」
”にぎにぎ”。
「…解かったよ…ゴリラ女 ”びし!” あたぁ…痛てえな!ババァ!」
「はぁ?この可憐な少女を捕まえてババァだぁ?目ぇ腐ってんな!ほら、さっさとしまう。とっととお宝頂いて帰るわよ。あなた達もおいで…」
「はい! 「うん。ゴリラの姉ちゃん!」」
「ゴリラ人?」
「違います。ゴリラじゃありません。セツナお姉ちゃんです、解かりましたか?」
{う、うん!は、はい!}
オイ!愚弟!笑ってないで動けやぁ!
モフモフ…じゃなくて獣人の子が6人か…孤児院だね。そろそろ世話する人、募集しなきゃ。
…お宝をいただいて、お外で休憩。
お子たちにご飯を食べさせなくちゃ。
膝の上に一番小さい、熊耳の女の子を乗せてご飯を食べさせる…癒されるわ~荒んだ心に癒し成分を補填しないとね。
「ねぇ、ビルック、馬車にお子たち乗れる?」
「う~ん…厳しいかな。僕もいざって時のために乗ってないとだし。落ちたら…ねぇ」
「トワ。空間、屋根の上に鶏置けない?」
「やってみるよ。」
なんとか置けた。てか、この鶏…生きてんの?…これ…結界に入ってるが、万が一吹っ飛んだら私が回収することになった。それくらいわね。お子が飛ぶよりましだわ。早く…ってまたかい!
前方の茂みから、街道を塞ぐように横たわる…丸太。
「トワ…この辺たり、まとめて吹き飛ばそうか…山も森も…」
「気持ちは解るよ。俺はかまわないけど?」
「冗談よ。さぁ、行きましょうか!汚物は消毒じゃ!」
…。
結局、アヌヴィアトに着いたのは翌日。お貴族と、盗賊団を6個壊滅させた。
懐は戦利品で大いにホットだが、心は、さめざめ。とってもクールさぁ…。早く帰って癒されよう。
お子たち?慣れてないのにモフって嫌われたら嫌だから我慢してんのよ。
ビルックのお耳だけじゃ全然足らんわい!気分的に今日はワンコsだなぁ。ガッツリじゃれてくれる♡。
反面、こういう時ってニャンコsは決まって逃げるんだよ。雹君なんて気配まで消しくさる!ホントの猫みたいだ。
門に到着。わお!今日はスルガの小父様がいるわ。小父様なら話が早くてほんと、助かる。
「こんにちは。ご苦労様です!ちょっと報告事項があるんですが場所、変えます?」
「…ほぉ。」
「…なにか?」
「すげぇなぁ。お嬢、養鶏所でも始めんのか?」
「いいえ?自分の家で消費する分ですよ。増えたら卵の販売もいいかもね!」
「で、お嬢。その子たちは?」
「この、お子たちは途中の盗賊のアジトで鹵獲じゃない、保護してきましたの。移動は?」
「このままで良いよ。鹵獲って…養子に?」
「いえ、この街の孤児院で。」
「…わかった。何か策があんだろ。身分証は無い…わな。お嬢のは?」
「これでいいです?」
金の証をみせる
「…お嬢、いつのまに”理事”に?」
「今度、ブランドを立ち上げますの。そのまとめ役ということで。」
「スルガ隊長、姉貴はドワーフのおっさん達と火鳥の燻製で一杯やってんだぞ。ギルドの信用はあるぞ。たぶん人族で一番。あ、ゴリラ ”ごん” ぁ痛えな!」
「…お嬢、あれ齧れるのか?」
「?美味しいわよ?人を化け物みたいに…うちの子たちも食べるわよ?」
「お嬢のとこ獣人だろうに。あれは罰ゲームだ。」
「失礼ね!」
「スルガ隊長、一応盗賊のカシラの首持ってきたけど。確認する?」
「おう。指名手配犯いるかも知れねえし。おい!盗賊の首がでる。鑑定士呼んどけ!」
「はっ!」
「で、トワ。今回は何処行ってたんだ?」
「場所はゴルディア南西の鶏の村。で、盗賊はそこからここまでの第二街道でしたっけ?細い方。」
「鶏の村?あそこか?ああ。そんなに出ないって話だったが…片道でこんだけ襲われるって…才能あるな、お嬢…」
「美少女だからかしら?いやぁん。」
「「…」」(トワ、隊長)
{…。}(門衛諸君)「いい♡」(若干一名?)
「なによ?」
その目は。
「っと、準備できたようだ。こっちに…」
「なんか言いなさいよ。」
失礼だわね!…
「この台にお願いします。」
「じゃぁ、順番に…」トン。トン…
「お、こいつは…ジグート?…こんなとこに居たのか…バカなヤツだ…」
「うん?スルガさん、知り合いか?」
「ああ、元部下だ。少々素行が悪くてな。国に帰ったと思ったが…首になっちまって。」
「隊長!こいつもリストにありますね。」
「潰れてるな。確認はできないな…鑑定頼む!」
「こいつも。」
「ここらは、ディフェンの奴らか…。かなり、出張ってきてんな。国境警備に一報だ。」
「そうそう、スルガ小父様、こいつと一緒にいたやつなんだけど…ちょっと気になって。これを持ってたの。渡しておくね。」
「ああ。調べてみるよ。…貴族っぽいな。内務、外務に照会してね。」
「特に特徴のある鹵獲品は無かったから、返却には応じないけどいい?」
「ああ。構わんよ。結構稼いだな?」
「いい迷惑よ。鶏死んじゃったら、おじさまに何いわれるか。そんなお使いもできないの?って」
「はははは、大丈夫だよ。旦那は。心配してうろうろ…ってそれ何処じゃないか。こっちもいろいろあったからなぁ。旦那んとこはいつも何かがおこるなぁ。悪いことしてないのに…なぁ?」
「こっちが聞きたいわよ!もう。あ、馬一頭増えたの。あの子ね。入場税払うわね。」
「ああ。懸賞金は、後日まとめて。誰かしらに渡すわ。」
「ええ。それで結構ですわ。では、また。」
ふぅう。お使いやっとおわりね。あ!エルザさんとこ寄るか…
「私、エルザさんとこ寄るわ。トワたちは先帰って、ええと、外套出して。返しておくわ。」
…。
”からんからんから♪”
「こんにちはエルザさん。」
「あら?セツナ様お久しぶり。」
「セツナで良いわよ。此度の鶏の件、お世話になりまして。今日戻ってきましたの。これ、お返ししますね。」
「…あら、父もご一緒するかと思ったのだけれど…。耄碌したかしら?」
「お父様?あの街にいらしたの?」
「?…ううん?会ってすら…?…話が見えませんわ。あの書状を見て貴女に会わないなんて…お時間があれば、お話を聞いても?」
「ええ。いいわよ。」
「ミツゥーヤ、お茶の用意を。」…。
「では、街には入ってないと?」
「ええ。領主の息子、名前忘れましたけど…彼曰く、”馬を献上しないと入れない”そうでして。門前でひと悶着。」
「なんという…おバカ、ったく、だから 「お嬢様」 …ほ、ほほほ。失礼、」
同じ匂いがするわ…私と…
「それで、門前でドレンさんと打ち合わせを。収納にテーブルや椅子、ティーセットもありますので。ちょっと冷えましたが。熱めのお茶を淹れて、なかなかの風情でしたの。」
「門前で?それは、それは。…楽しそうですね… 「お嬢様」 …いいじゃない。もう、セツナさんも解ってるわ」
「そこで紹介状を頂いて、買い付けに行ったって事。ドレンさんも紅茶気に入ってくれてお代わりしてくれたわ。」
”がたり”
「あ、あのドレンが!」
「いやはや…」
「?なにか?」
確かに、紅茶好き…って感じでしたけど。ドレンさんも。
「ここにいるミツゥーヤは元ワイン担当、で、ドレンは元茶葉担当。で、淹れ方にも拘りがあってね。とにかくうるさいのよ…。
私の入れた紅茶何回捨てられたか… 『商会のご令嬢ともあろうお方が、紅茶一つ淹れられぬとは嘆かわしい!』 って。
まぁ、花嫁修業の一環ですのでしょうがないんですが…」
「うちの男たち、特におじさまって、凝り性で。元の世界ってここより豊かでしょ?その差がまだ受け入れられないのよ。私なんかとっくに諦めたけどね。それにおじさま、もともと料理がお上手だし。日夜、ビルック、家のコック見習いだけど。彼と一緒に料理の研究してるわ。」
「それは…」
「で、紅茶も、トワの”勇者パワー”まで使ってるのよ。笑っちゃうでしょ?美味しいものに妥協しないのよね。まぁ、私は美味しいもの食べられるからいいけどね。」
「勇者パワー?」
「結界魔法で紅茶入れるのよ?ほんと、アホでしょ。」
「…でも、ドレンが認めたのでしょ?」
「最高茶葉で淹れてもらってお嬢様に飲ませたい。って言ってくれたわね。」
「…お願いしても 「お嬢様」 …だって、ドレンよ。」
「高いわよ…」
「っく。おいくらで」
「茶葉提供、貸し一つでどう?」
「っく」
「今回の外套も思ったより効果なかったし?」
「っ!分かりました。お願いします」
「契約成立で」
右手を出して握手。
「茶葉購入できるのであれば私も欲しいわ。お金はたんまりあるわ。盗賊6件よ6件、ねぇねぇ!聞いてよ!」…。
急遽女子会となった。
すまん!ミツゥーヤさん。
またのご来店お待ちしております




