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魔術師

 パック殿の後をついていく子供達を見送る。喧嘩買ってこい?おいおい。

 「いいのかい?レスト殿。」

 「大丈夫ですよ。この”場所”なら怪我だってなし。それにパック、彼もそこそこ強いですし。腕っぷしも。心配ご無用!どうです?一杯。」

 「…。」

 そうは言っても…

  「ふふふ。ミッツ様は心配でそれどころじゃないようですぞ。レスト殿に任されなされ。」

 「わかってるよ…。でも、ウィスキーみたいなもんは無いんだなぁ。この店構えならバーボンやら、ラムが出て来そうなもんだが…」

 やっぱりワイン…ま、魔女の儀式なんかじゃ定番だわなぁ…(偏見)

 

 暫くすると、大きな串焼きを持って子供達が到着。何事も無かったようだわ。うん?串焼きなんかあるんだな…てか、デカくね?太い鉄串に肉塊じゃん。…ああ、本来なら、シュラスコのように削いで切り分けて食べる物をそのまま持ってきたんだな。まぁ、幸せそうな顔して…。嬉しそうにしてるから良いけど…君達、ホントにそれ食べるつもりかい?

 「あれまぁ。誰も釣れなかったかぁ。パックなら丁度いいと思ったのになぁ。」

  「はぁ?…まぁいいやぁ。で、さっき雇い主と言ったが…レスト?」

 「ええ。そうですよ。魔法の講師としてミッツ様に雇われたんですよ。」

  「とうとうお前さんも首輪…になんねえぇなぁ!勇者様の方がスゲェものなぁ!ゴルディアやら、ディフェン吹っ飛ばしてるし…。エキドレアの魔法障壁だってそうだろ?」

 エキドレア?はて?心当たりはないが…。 

 「そうそう。楽しそうだろう?パック、貴殿もこない?君の珍妙な”植物育成魔法”ミッツ様ならきっと高く買い上げてくれるぞ?”緑芽吹く新緑の魔術師”殿。くくく。」

  「珍妙言うな!この破壊魔が!」

 …破壊魔?…なるほど…

 「ふ~ん。芽吹く?植物の育成やらに影響が?」

 おっさんだが、奇麗な通り名だなぁ。優しそうだし…

  「は、はいぃ!こう、植物の気の巡りをよくすると言いますかぁ。私、農家の出でして…趣味で交配、”品種改良”というものも。」

 「おお!良いね!マジでうち来ない?イネやら麦の品種改良をお願いしたい。トマトもいいなぁ!メロンもさらに!」

 目指せ!ひび割れ、甘々赤肉メロン!

  「…品種改良…ところで、ミッツ様の知識に”ばいおてくのろじー”と言うモノは?」

 「う~ん。あんまり詳しくないけど…。勇者様の方が詳しいかも?どのみちあの技術は、禁忌になるんじゃなかろうか…植物の範囲ならいいのかな…」

 倫理の問題だわなぁ。

  「禁忌?」

 「ザっというとなぁ、人やら、野菜…まぁ、生きてるものは細胞って小さいもので…」…。

 本当にザックリ。手法なんかはちんぷんかんぷんだが、触りの辺りを聞かせる。

 多少の改良…交配や、百歩譲って、クローンまでは良いと思うが、最近は利益のために植物に”自死”遺伝子を組み込んで『種』を取れないようにするとか…ここまで来るとやりすぎだよなぁ。


 「ちんぷんかんぷんですねぇ…深淵の秘め事でしょうか…シャン?そろそろ眠くなりました?」

 レスト殿は早々と理解しようとすることを放棄したらしい。彼もヴァンも興味ないことには、とことん、関心0だからなぁ。その辺はよく似てるわ…。

  「な、なるほど…神の御業…そういった”知恵”が…。面白そうですね!是非とも連れて行ってください!ミッツ様!」

 「おお!決心してくれた?期待してますよ!パック殿!では支度金で、とりあえず金貨1000枚…」

  「「多すぎます!」」

 

 「あ…明日出発なんだが…後日、迎えをよこすわ。」

  「心配ご無用!荷物はすべてここに。…只、植物が少々…ミッツ様の”収納”に入れて頂ければ…」

 そういいながら、腰のポーチを叩く。魔術師って結構実入りが良いのだなぁ。

 「了解した。明日、出発前に。」

 

 「聞かせてもらったわ。私も講師として雇ってくれません?”勇者”さま。」

 おっほぉ♡

  「…でた!おっぱい!」「おお!でっかい!」「…。ぐぅ…”こっくり”(睡魔に抵抗中…)」

 「あなた…ですかぁ…」

  「なんで嫌な顔すんのよ!」

 何とも鼻っ柱が強そうな、ムチムチのお嬢さんだこと…。なかなかに可愛いな!

  「…お父ちゃん…」「…おっぱい星人!」「…。むにゃぁ」

 ラグの呆れた眼差しが…そんな目もできるようになったのね…。成長?いや、おいらのせいか?シャンちゃんは轟沈か。串焼きの肉、大量に喰って…からの長話だったものなぁ。

  「私、これでもそこそこ名の通った魔術師ですわよ?」

 「…う~ん。約束できますぅ?勇者様達に余計なちょっかい出さないって。ま、出したら、出したで即、死んじゃいますよ?媚薬とかもなしで。」

  「しないわよ…断られたらしようと思ったけどぉ…!じょ、冗談でっす!」

 鬼神降臨…貫く殺気!沸きあがる魔力!そして、覇気!…よっぽど、おいらより”勇者”だわなぁ。

 酒や談笑を楽しんでいた人々も何事かと、一斉にこちらに目を向ける。その辺りは流石、魔術師たちというべきか。

  「我が主に害を及ぼすのならば…」

  「お、お許しください!し、しません!しませんて!」

 「大丈夫だろ、カイエンどん。で、貴女はどんな魔法を?媚薬?なら調合系かい?」

 怪しいツボにいろんなものぶち込んで…妙な呪文と共に?エコエコなんとかって?

  「カイエン?…まさか…あり得ない…でも、この気…覇気?…いえ…」

 うん?カイエンどんの正体に気づいたか?マジモードになるとスゲェからなぁカイエンどんは。色んなのが漏れてくる。

 おいらも背中からどん!といきなり食らうから、危うくしっこ漏れそうになる…

 「あらら、彼女は香り…香水やらの魔法調合。媚薬もその一種で。二つ名は”媚薬使いの淫乱魔術師”って 「ちがうわよ!”春風香る朝焼けの魔術師”ですわ!」 …だそうです。」

 「うん?最初の方がしっくり… 「でしょ。」 「違います!」 …で、なんで?貴女なら十分食っていけるだろうに?」

  「ミッツ様は男性ですから。奥様や、女性であれば、私の魔法、きっと高値で買ってくださいますわ!」

 「…おいら、独身だし……。(涙)」

  「え…」

 「そうなんですかぁ?僕もですよぉ。ミッツ様!あ、パック、そういえば婚約者の彼女いたな。大丈夫か?勝手に決めて?」

 なにぃ!

  「…俺…捨てられちまった。…独身だ…くぅ!」

 …おぅ。

 「…パック殿ぉ…おお!ならば飲もうではないか!諸君!独身万歳!」

  「「おう!独身万歳!」」

 ”かこん!””ぷふぅ!”

  「あ、あのぉ…全然話進まないんですが…」

  「…うん?もしや金に困ってるのか?」「…貧乏?」

 「お嬢ちゃん…そう、ズバッと…ま、そんなところ。大きな依頼、失敗こいちゃって…ね。」

  「…ふむ…調香か…。であれば、私が雇おう。準備にいくらいるのだ?借金は?」「お姉?」

 「はぁ?お嬢ちゃん…ふふふ。そうねぇ。金貨、800枚…。ねぇ、どう?凄いでしょう!あはははは…はぁ…。返済期限が…」”がっくし”

 800かぁ。なかなかの大金だな…。返済期限?…借金奴隷?…じゃ、おいらが身受けして…。うん?安全だよ?セツナっちも居るしぃ…。ヘタレ言うな!

  「…うむ。ではこれで補填するがいい。その”香りの魔法”私が買い上げよう!」

 そういうと、彼女に小ぶりの袋を渡す…ラグ。うん?足りんぞ?それじゃぁ。

  「ふふふ。ありがとう。お嬢ちゃん。でもこれじゃ…ねぇ。」

  「…侮るな!大人の悪い癖。中を見てから言え!機会を逃す…ぞ?」

  「言うわねぇ。お子ちゃまのくせに。…”じゃら”…!…はぁ?は、白貨ぁああ!?」

  「…足りるであろうが。」

 

 誰だ…あんなに渡したのは…。ジャムやらの売り上げ?か?他にも何かやってるのだろうか…。

 

 後で調べたら…商会への出荷分のメロンにラグのシール(髑髏の意匠が…毒物っぽいぞ…ラグよ…)が…どうやら、ブランド化して一枚かんでいたらしい…”甘さ保証”…って…。しっかり収穫日、食べごろ迄記載されていた…。

 生ものから、加工品まで一括管理…金持ってるはずだわ…他にも、パンの販売、髪用石鹸の改良、販売…こういった香料に彼女の魔法と調香技術が要るそうだ。…益々お金持ちだな…ラグよ…。


 「ははぁ~お嬢様ぁ!ラグ様ぁ!助かります!ヴァニラとお呼びくださいませぇ!」

  「…うむ。よろしく頼む。先ずは清々しいのと、甘い香りだな…媚薬も追々…」

 「こら!はぁ、了解したよ…家で雇うから…」

  「ダメ!私が雇う!セツナ姉に取られる!」

 取られる?…ははは…おいらが思ってる以上にこのヴァニラさんには価値があるようだ…

  「ミッツ様…ここは引いた方がよろしいかと。」

 「そうね…じゃ、ヴァニラさん、よろしくね。」

  「はいぃ~。お任せくださいまし!では早速…」

 そういうと麻袋を引っ掴みカウンターの方に。ここでの”依頼”のようだ。

 「ラグも散財しちゃったねぇ。」

  「…大丈夫。何十、何百倍になって返って来る。それに…」

 「うん?」

  「…まだある。」

 ”じゃらじゃら”

 「…そうなんだ…」

 「こ、これは…思った以上にお金持ちですねぇ。ラグ…お師さんびっくり。」

  「…すげぇな…嬢ちゃん…」

 レスト殿もパック殿も唖然だわ。帰ったら会頭に釘…いや、彼女が己の力でやってるんだ…横槍はいかんな…見守ろう。しっかし、子供達、皆、何気に金持ちだな…お父ちゃん貧乏よ。

  「うん?心配?お父ちゃん?」

 「うん…ちょっとね。で一番のお金持ちってラグ?」

  「ミッツ様…」

 だってぇ。知りたいじゃぁん!

 「…ううん。私は利益の分配してるし。このお金だって次の商売、投資金。独り占めのライオット兄。雹兄が超お金持ちだよ。雹兄は直ぐにナイフ買っちゃうけど…。盗賊とかの撃破数も多いし。」

 「なるほど…ライオットは肉の販売益、凄いもんな…雹だって危険な任務だしなぁ…」

 ふんふん…設備投資か、やるなぁ。確かに香水、石鹸の付加価値アップ…。それに、分配せずに一人締め…なるほどなぁ…っていくら持ってるんだ?

  「…後はルカ姉も何気にお金持ち。マリウス様のへそくりのお金もルカ姉の物だし。」

  おふぅ…共同ストックにすりゃそうなるわなぁ…へそくりまでか!…南無。

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