晩餐
家族で風呂を頂き、食事へ。今日もお隣のライル殿の”美食倶楽部”に招待された。
建物に入るとそのまま、食堂に案内される。
美食倶楽部の広いアイランドキッチン。そには正面にビルック…。
ミディさんも、もちろんいるが今日は補助に回るようだ…。ビルック…
これはミディさんの粋な計らいだろう。修業の成果、そしておいらに作ってるところを見せようと。それにさっぱり会えていなかったもの…。
おうぅ…凛凛しいな。
食前酒に特級ワインか。惜しげもないな…まぁうちの頭領はラッパ飲みだけど…
見事な手際で焼かれる肉。塩だけで食わすのか?味付け等はされていないように見えるが…こらこら。ラグ、ハル。立食パーティじゃないから。並んじゃダメ。ちゃんと座ってなさい。
期待でぴょんぴょん飛び跳ねるハルちゃん。ま、仕方なしか…奥方たちも温かい目で見てくれてるし…
切り分けられた肉が配膳される。何もしない…のか。どれ。ほう…濃いな。余分な水分を抜いたのか…香りのよい熟成肉だな。程よい塩味もいい。魔猪かな?。
同じ切り身にソースのかかったものが運ばれる。食べ比べろってか。うむ…濃く香りの強いソース…トンコツの臭みだけを完全に取ったような?よくわからんが美味い。
そしてグラスにワインが注がれる…合うなぁ。長期熟成の甘い感じがまた…。ラグたちには多めにソースなしの物が配膳されている。美味しそうに頬張る娘達。
あら?いつの間にかにルカちゃんも居たのね。ナイフ、フォークで奇麗に食べておられる…って、認知の方は大丈夫かよ?ライル殿は知ってるだろうけど…
次に、山鳥とキノコのロースト?かな?うん?ワイングラスが換えられる?もしや…
違うワイン…期間か産地かどうかは知らないけど…おいおい。ここまでやるかね。
ルー殿の仕業だな…もちろん合わせてるのはミディさんやビルックだろうが…この世界、これ以上の贅沢はないぞ。
皮パリパリ…しっとりとした肉にキノコの香りが乗る。ソースもキノコの香りと鳥の骨髄?いや脂か?上品な甘みのある脂もだが、何せキノコの香りがすごい…あの魔猪の後に出ても負けない旨さだ。
それに器が良いな…ビルックの手のものか?同じものはない。が、それぞれの器に合せて綺麗に盛り付けられている。ミディさん。ありがとう。流石です!
参加してるお貴族様も無言でフォークとナイフを動かす。…目が真剣だ…ははは。
レスト殿は…相変わらず…。マナーについてルカちゃんに怒られてら…あれ?紹介したっけ?
次は…白身の魚か…どんなワインを合わせてくるやら…
うん?此処で蒸留酒の水割りか…期待を裏切ってくれる…ここらの日本酒よりはいいだろう。エルフの物でも雑味が多いからな…。
ここまで少量づつだがメインを続けるとは!修業の成果かい?うんうん。美味しいよ…。
「いやぁ、素晴らしい!ビルック君!ほんとうに素晴らしい料理を堪能したよ!」
ライル殿が立ち上がり拍手を。お貴族様もみな続く。賛辞の嵐だ。
「ワインとの取り合わせも素晴らしい…しかもこのワインに負けぬとは!」
「うむ!蒸留酒が出て来た時は驚いたが…いやはや。感動しましたぞ!」
「本当に。それにこの器、料理が映える。紅茶などは絵皿でも良いが…うむ。うちも導入したいですな」
「ありがとうございます。総指揮は我が師であるミディ、本日のメインは私ビルックが務めさせていただきました。別室に軽いデザートとルージュ様より、ワインの提供を受けております。歓談をお楽しみください。」
拍手喝采!…うんうん。凄いよ…ビルック…うん。ぐすり。
「うん?どうされた?ミッツ殿。」
「い、いえ。何でもありません。お見苦しいところを。はぁ。美味かった…なぁ」
「うむうむ。大陸一であろう!しかもすべての料理が計算尽くされておる。ワインまでの。」
「…そうですね。」
「おじさまはどうする?残る?」
「…そうだね。ラグたち連れて寝るわ。」
「…うん。寝る!」「ハル…お腹一杯!」
「俺も明日の準備してから寝ますよ。」
「そう。なら、こっちは私が出るわ。どうせ飲みながらチェスが始まるでしょう」
<うむ。任されよ>
「レスト殿も参加して良いぞ?カイエンどんも。」
「…いやぁ~美食…。本当にあったんですねぇ…私はこの満たされた感情を抱いたまま…夢の世界に…寝ます!」
「…なんのこっちゃ…」
ようわからんぞ…レスト殿…
「私も同じ気分ですな。今日の料理は今までの一歩進んだもの…そう感じました。」
「なるほどねぇ…。了解。で、ルカちゃんは参加?」
「ええ。勿論。久々のチェスですもの。」
「…魂、…betすんなよ…」
「わかってるわよ。じゃ!」
「本当に”悪魔”なんですねぇ。」
「まぁね。何時会ったの?」
「昨晩でしょうか?ただならぬ気配がしたので…びっくりして心の臓が飛び出るかと思いましたよ」
「そいつは悪かったな。後、二…三柱いる。」
「はい。大丈夫ですよ。良く考えれば、彼らもミッツ様達と同じ…利用するために呼ばれた者達。この世界が滅びたら自業自得ってなもんですよ。てか、よく大人しくしてますねぇ。教会なんかに屯ってるのと全然格が違うのに」
「だから…というのもある。交渉ができるからね。より格上、強大な力を持つ者はそれだけ思慮深く慎重ってなもんだ。もちろん、腹の中までは見えないけどなぁ。ま、付き合えるのなら…ね。それに彼らも楽しむ権利位あるだろう?」
「悪魔の腹の中…それこそ闇の中でしょうが…。それに”悪魔”と御付き合いとは…勇者様なりの考えでしょうか?…しかし、聖王国の召喚騒ぎには本当にうんざりですねぇ。」
「まぁなぁ。おいらみたいな老骨ならまだいいが…若いものばかりだものなぁ。やるせないわ」
「そうでございますね。」
「…私は嬉しい。お父ちゃんに会えた。そうでなければ…奴隷。」「…ハルも!」
「そう…そうだね。悪いことばかりじゃないよね。父ちゃんも沢山娘や息子ができて幸せだよ。うん。」
もっとも、バスに轢かれる直前だったしぃ!寂しい独身中年だったしぃ!!
大魔導士だしぃ!!!それは、今もか!残念!
…。
「それじゃ、遊びに行ってきますね。ライル様!お手数おかけしますね。」
そう、魚村に向けて出立だ。予定を一日延期したが、なぁに、今回は遊びで来てるし、日程なんかあってないようなものさ。
「なんの。なんの。こっちはこっちで”美食倶楽部”の営業じゃ!サロンでのチェスもよいの。」
「ライルさん、遊んでると王様に怒られるわよ。」
「なぁに。ほぼ隠居のジジィですし、セツナ様のご案内…動向把握できれば問題ないです。何かありましたら、剣の前にわしの書付を。それを渡せた時点で仕事もほぼ終わりですからの。」
そう、黄門さまの印籠と同等の王様とライル様の書簡を預かっている。所謂、”御免状”だ。
「言うわねぇライルさん。ま、使わせてもらうわ。」
「ええ。そうしてくだされ。お帰りになる迄、チェスの腕も上げておきますぞ!」
「期待してるわよ。」
<うむ。ライル殿、世話を掛けるな。では我らは征くぞ>
「はい。ルージュ様、皆様もお気をつけて」
「では、またお会いしましょう。ライル様。では失礼します。じゃ、行こうか」…。
「ライル様と随分仲良くなったじゃない。」
「まぁねぇ。あのお爺ちゃん頭いいし。バカは嫌いだけど、曲者は好きよ。貴族全部ライルさんや、ゴテインさんだったらいいのにね。」
おいおい…曲者と脳筋か?…対極にある人種に思えるけど…
「ま、その…なんだ。ライル様とつき合ってくれるとおいらも嬉しいよ。」
「そうそう。なんでライルさんてハセル君の義兄なのよ?お爺なのに。」…。
「…その内ね…」
ちん〇ん比べの仲の義兄弟って…なぁ。




