閑話1 鶏を買いに行くよ!~僕はビルック~
鶏購入組のお話。
「っとに、お尻痛いわね!どこの世界でも馬車はお尻が痛いものなのかしら!トワ何かない?」
「なにか?って、走ればいいじゃ ”げし!” 痛てぇな!ブス!」
「馬車の旅を楽しみたいのよ!わ・た・しは!」
「ちっ、めんどくせーな!」
「なによ!もう一発 「セツナ姉、これでも全然いいよ。早いし。」 …もう、子豚ちゃんたら。」
耳を触られる…そう今、僕は馬車に乗ってる。セツナ姉とトワ兄と一緒にゴルディア方面に”卵を産む鳥”を買いに行くところ。
初めて(だと思う)のアヌヴィアト以外の町だ。雹が父さんとあちこち行ってるの羨ましいかったんだよなぁ。
”ぎぎぃぃぃぎぃぎぎぎぎぃ”
「ねぇ、トワ兄、馬車、すごい音してるけど。」
「ああ。”疾風”に合わせて走ってるから、そのうち空中分解するかもな。」
!ええぇ?
「破壊耐性かけてんでしょ?」
「限度ってのがあるわ。流石に」
「何とかしなさいよ?トワ!あんた!”勇者”でしょうが。ほらビルックがびっくる!なんて。ぷくすす」
セツナ姉…笑えないよ…
「はぁ?…へいへい。ったく。」
”どごぉごどごぉどごぉごどごぉどごぉごどごぉ!”
おおよそ、馬とは思えない蹄の音が響く。街道には大きな足跡が続く。土煙をあげながら。
「う~んやっぱり走るか?」
「い・や・よ。」
「ビルックと姉貴は”疾風”に乗っていいから。もう、やばいかも。」
「…マジで?」
「うん。まじ。もう限界だわ。」
「…解かったわ。いったん止めて。」
”どごぉごどごぉぉぉ…”
”ぶるるるるるぅぅぅ…”
「ふぅう。”疾風”おつかれ。」
トワ兄が収納から水の入った木桶を出してる。
「トワ兄、飼い葉も上げるの?」
「いや、次の休憩だな。なぁ。」
会話してるの?
「トワ兄、しゃべれるの馬語?」
「…馬語って。なんとなく感じるっていうか?」
「ふ~ん」
「あ~お尻痛い…ビルック、割れてない?」
きょははは。お尻を向けて笑ってる…お姉ぇ…
「トワ兄?セツナ姉壊れた?」
「ほっとけ。めんど ”がん” 痛って~な!ブス」
「文句あんの」
セツナ姉とトワ兄は本当の兄妹で”勇者”なんだ。
セツナ姉はなんかわからないけど、小さい女の子にさせられちゃったとか?でもうちの”家族”で一番強いんだ。
この前も熊、殴り殺してたし…毛皮が欲しいとか…パンチ一発だ!トワ兄も普段はあんまり喋らないけど、セツナ姉といると良く喋る。僕たちで言う”じゃれてる”みたいなもんなんだろうな。
姉弟かぁ。ちょっと羨ましい…
「どうしたの、ビルック。」
「ううん、何でもない。」
「そう?」
”こりこり”セツナ姉は僕の耳を触るのが好きみたいだ。優しく触ってくれる。くすぐり気持ちいいけど、なんか嬉しい。
「さぁ、そろそろ行こうか。」
「うん」
「ええぇ~もちょい休憩しよ。」
僕の耳を触りながらセツナ姉。ぎゅうっと抱きしめられる。セツナ姉は良く抱き着いてくる。僕だけじゃなく他の子も。安心できる…
「もうちょい、ねぇビルック」
「…うん。」
「ビルックから離れろ。ブス」
「いいじゃない、あんたみたいに捻くれてない素直な弟よ~スキンシップ。スキンシップ」
「うん。」
「はぁ、イヤなら、イヤって言うんだぞ。しつこいゾそれ」
「うん」
「うっさい!」
…姉弟旅。楽しみだ。
またのご来店をお待ちしております。




