お貴族様いらっしゃ~い!
只今、フィリキを出て、海岸線に向かい移動中。子供達にも自分たちの”国土”を見てもらおうとゆっくりと移動。知識として持ってれば、いずれは役立つだろう。
途中、野営一泊。海岸線が見えて来た。さていよいよコホーネ村だね。ここで最後の仕入れをしたら、後は海岸線に沿って北上予定だ。
子供達が居るが漁はするよ。なにせマッドクラブが獲れていない。
花咲ガニが獲れたから良いだろうって?マッドクラブは別。なにせミソが美味い!花咲ガニは量も少なく味も…微妙。身は美味いがね。
総合力でいうと、マッドクラブ>花咲>グソクムシ>サワガニ…>タカアシガニだな。
タカアシガニはブレス吐くし、身もべしゃべしゃで水っぽい。狩るのに危なくてそれじゃね。しかもまだ一匹しか出会っていないし。…という訳でおいら達はマッドクラブを欲しているのさ!
「ミッツ様…僕も海岸に…」
う~ん。安全ならねぇ。
「…何を子供みたいに。ミッツ様がお困リよ。お兄様なんかすぐにサメの餌よ。一口でぱっくり。大人になって自分の責任でお行きなさいな。」
「おふぅ…」「あぐぅ」
思わずおいらも声が出ちゃったよ…ははは。まぁ、正論だわな。
「アーサー君。漁村なんかはいいけどね。本当に危険なんだよ。君の方が理解していると思うけど?」
「はい。皆さんが楽に見えて…そうじゃないことも解っています!けど…」
「そうだね。海に対する憧れは分かるけどこればかりはね。君だってこの国の”宝”、預かり物だしね。」
「ミッツ様。兄がすいません。まだまだ子供ですから。」
…君も十分子供だよ。チェルシーちゃん…
『おっさ~~~~ん!始めんぞ~~~!』
「お?呼んでるな。了解---!。じゃ、雹、お師さん、子供達をお願い。」
「わかった。アーサーこっちに。お師様、周辺お願いします。」…。
まぁ、こればかりはねぇ…
今日は幸先が良い。鹿の血に誘われてマッドクラブが上がって来た!
「よっしゃぁ!本命だ!皆油断しないようになぁ!」
{応!}
此方の人数も多い。エレン達も海でのエビ、カニ狩りに慣れてきたので手際も良い。効率的に狩られていく。”収納”に入れるのも一苦労だ。
合間合間にグソクムシを”ぱきょ”って、マッドクラブを30匹くらい狩れた。一ヶ所でこれだけ狩ればいいだろう。海から離れ、野営にしようか。
…。
こんな調子でプラプラと狩り、漂着物拾いをしながらをしながら北上。
さすがに子供達は海岸に下せないけど、遠くで跳ねる怪獣…サメの群れの中から伸びる、タコ足と、十分に海の恐ろしさについては学べただろう。
お子達も遊ばせておくのも何だから、九九表を書いて暗唱させる。チェルシーちゃんには早いとも思ったけど…ま、どのみち覚えるものだからと。
トワ先生がアーサー君の勉強を見てあげたり、チェルシーちゃんはおいらにべったり。一緒に料理をしたりね。
本当にこの子、謎の圧があるんだよな…。見上げられるくりくりお目目、奇麗な金髪の縦ロールの女の子…なのにだ。まだ8歳だったよな…”統治者”や、”女帝”の気とでもいうのかねぇ。おいら、その圧で少々ビビってしまう。
包丁の扱いもだいぶ様になって来た。硬くない野菜、葉物なんかのカットは任せられるね。”トントン”と楽し気に料理をしている。まぁ、良い経験になるだろうさ。
そろそろ海洋国も終わりかぁ。トラヴィス抜けてさっさと帰ろうか。
…。
海岸漁りも終わり、海洋国を発つ日。最後の最後でケチが付いた。のんびり狩猟してたのが裏目に出たか?
お貴族様と冒険者ギルドの幹部に追いつかれたようだ。ご丁寧に私兵20人と冒険者…だろうな。小汚い(偏見…)のが10人ほど混ざる。
「止まれぇ!止まれぇえ!」
「そこの者、抵抗するな!」
抵抗するなって…何かしたか?おいら達。
「うん?奇麗な服着た盗賊か?」
「無礼な!こちらの方は 「よい」 …はっ」
「で、其の方ら、最近、我が国を騒がせておる不届き者達であろう?」
いきなり不届き者…って…。無礼な奴だな!
「さて。人違いでは?こちらには一切思い当たる点はありませんが?」
「チタノタ子爵、ここは私が…。貴公らの持つ結界石、もしくは海の魔物を退ける魔道具があれば供出願おうか。国が接収し、我が冒険者ギルドで運用することになる。」
冒険者ギルド…のお偉いさんか。とことん相性が悪いな。
「はぁ?馬鹿かお前。この国の王の命令か?」
「…もちろんだ。抵抗するなよ!」
そんな訳あるまい。この前会ったが、何も言っていなかったぞ?
「ほう…。」
「トワ君タンマ。良いでしょう。その書類なり命令書があれば、協力、引き渡しましょう。」
「は?おっさん?何言ってんだ?」
「その時は…ね。」
魔道具なんかねえよ。うちの武力全部引き渡しましょう。代価は…そちらの首で。余程悪い顔が出たのだろうか。アーサー君が前に出ようとするも引き寄せる。
「み、ミッツ様!お許しください!」
「アーサー君は下がっていて。まだ危ないから。で、その書類は?」
「いいでしょう。これになります。」
伝令?小間使い?ギルド職員だろうか、男が書付を持ってくる。
「…お気を付けてください…。大人しく帰るとは到底…」
「…?…貴殿はなぜ?こいつ等に?」
「…ははは。ギルド職員と言えど、奴隷のような物ですよ。上の意向には。しかも、子爵様ですから…」
「そうか…災難だね。どれどれ…」
渡された書付を確認。内容は無いよう…、杜撰な物だ。宛先も無きゃ、発行人(王)の名も無し。代理人のチタノタ子爵とある。本当か嘘か知らんが目の前の初老のお貴族様のようだ。
「全く話になりませんね。王のサインも無けりゃ、印も無い。おっと、これは私が預かりますね。公文書偽造、執行、王の名を騙るんだ。反逆罪になるだろう?」
「な、何ぃ!生意気な。」
「うちの商会から大々的に公表させていただきますよ。ヴァートリー商会からね。」
「な?なに?おい!マサイ!ヴァートリーとは一体なんじゃ!どういう事か!」
「は?はいぃぃ?私は…ヴァートリー?」
「おいおい。俺らヴァートリーの特務輸送隊の”蒼”だぞ。ほれ…」
トワ君、そう言って馬車を指さすも…
「ありゃ、この馬車には旗ついてねぇな…じゃ、これで。」
”収納”から大きな青い商会旗を出して掲げるトワ君。うん。後だしジャンケンだな。
てか、襲うのなら少しは調べて来いよ…
「ヴァートリーじゃぁとぉ!不味い!不味いぞぉ!その書類取り上げよ!早よぉ、早よ!」
は?馬鹿丸出しだな。お貴族様!偽造だって認めるようなものだぞ?
わいわい騒ぎだすお貴族様と、ギルド長?他の連中は置いて行けぼり。なにが起きてるのか理解に及ばないようだ。
「おっさん…もういいだろ…こいつら、アホすぎ。…面倒くせぇ。」
「まぁなぁ…」
付き合ってやる時間も勿体ないわ…そろそろ…
「お、おい!お前たちは『迷宮の光』のパテンスとスタックだろう!い、依頼だ!強制依頼だ!そいつから、書類を取り返せ!」
はぁ?何を言ってんだ?こいつは。焦り過ぎて支離滅裂だぞ…
「お断り申す。”盗賊”の片棒は担がぬ。そこの冒険者諸君。こんなバカなことにつき合う事は無い。同じ罪に問われるぞ。」
「そうそう、エレンの言う通りだぞ?誰が聞いてもバカはどっちか分かるだろう?」
「…。」
「短慮で武器を抜いてくれるなよ?斬らにゃならねぇ。そのマサラだっけ?そいつは俺らで訴えるからもう気にすんな。どうせ死罪だろ?王の名を騙ったんだ。ほれ。逃げるが勝ちだぞ。罪人なっちまうぞぉ。」
「あ、ああ。あいつらの言う通りだ。おい!マサラ!話が違うじゃねぇか!」
「何が、”王命”だ!我ら、『クラーケンの槍』は離脱する。」
「そうだな、うちは元々運送護衛隊だ。無理な戦いはしねぇ『海色の手綱』も離脱する。マサイ!ギルドに違約金請求するからなぁ!」
「ああ。写しもある!覚悟しておけ!」
「だな。兵隊さん方も良く考えるんだなぁ。おっと、こっちに剣は向けるなよぉ。これでも対人戦には自信があるし。衛兵ごときに負ける気も…ねぇ!」
「煽るなって。じゃ、俺らは離脱する。後は勝手にやってくれ。ヴァートリーさんなら助け要らねぇだろう?」
「ああ。大丈夫だ。」
「き、貴様らっ!組合員の資格を凍結するぞ!預けた金貨だって!」
「マサイ副ギルド長!そんな権限は!」
「俺らは構わねぇぞ?預け入れはほとんどねぇし?そろそろ潮時か…じゃ、”生きて”たら、また会おう。行くぞ!」
冒険者連中はぞろぞろと、はなれて行った。勝手に瓦解しちまったな。
『海色の手綱』と名乗ったパーティの方は最後まで見て行くつもりか?一定の距離を取りつつ動かない。
・冒険者『海色の手綱』サイド
「おい。パレアセア良いのかよ」
剣士風の男が、優男風の細剣使いに声をかける。
「ん?コンコロ-ル?何が?」
「なにがって…おめぇ。」
そもそも事の始まりは、二つのチームに出された”王命”という、指名依頼。『海色の手綱』、『クラーケンの槍』共に、海洋国、国中では名が通っており、それぞれのチームも”王命”と、彼らと同じ依頼ならと参加した。
それが全て嘘。貴族とギルドが手を組んで。強盗紛いの事を。しかも反逆罪に問われかねん状況だ。
「ま、問題ないだろうさ。あそこに残ったら殺されちまうぞ。どのみち、早々におさらばしようとは思ったがね。相手が悪いわ。」
「…まぁなぁ…それは納得だが…。それに『迷宮の光』の連中…あんなに凄味があったか?」
「だよな…まえにチラリとだが観たときに比べるとな。まるっきり別人だ。」
大人しく話を聞いていた巨漢も話に加わる。それに合わせて、他の、事の成り行きを見ていたメンバーも話にと加わる。
「だろ?ドゥラティもそう思うだろう?それにあの熊人って、ドネリーだろ?引退したって聞いていたが…」
「だよなぁ。キアネア、フックシーはどう思う?」
「ああ。手を引いて正解だな。」
腕を組み、周りに気を張り巡らしているであろう。斥候職が答える。
「兄者の言う通り。あそこだけじゃねぇ。周りにもぐるりと囲まれてる…恐ろしいほどの手練れ連中だ。俺たち20人程度じゃ合図一つであの世往きだわな。」
「な?か、囲まれてる?」
「そ、そこまでか…」
「ふむ。そいつは想定外だが…変な動きすんなよ。でだ、話し戻すぞ。”凄味”もそうだが、エレン殿たちの装備見たか?」
「そういえば…どっかで見たか?」
「ん?あ、ああ…ありゃ、ダンジョン産…か?以前、”産出品”の展示即売会で似たようなの見た気がするな…」
「だろう?だが、それだけじゃねぇぞ。汚して偽装してるようだが、アダマンタイト…製の装備も多数。剣帯なんかも極上もんだな。」
「はぁ?アダマンタイトって…魔剣か?」
「それとな、あの馬…ありゃ、おそらくバトルホースか魔馬の類だな…」
「おいおい…マジか…パレアセア、お前さんの恩恵だ。信用するが…」
「ひょーすげぇな!お宝の山だ。」
「おいおい。フックシー。手ぇ出したら死んじまうぞ。」
「だな…兄者…海の富が漁れればあれくらいどうにかなるのか?」
「…いやそれだけじゃねぇだろうな…」
「で、パレアセア。ここに残って何しようってんだ?手助けだって要らねぇだろう?あの連中なら。」
「そうだなぁ。で、提案なんだが、うちも彼らの下に降らねぇか?『迷宮の光』みたいに。傘下にしてもらうってのはどうだ?」
「はぁ?」
「ふむ…一考の価値があるな…」
「なんでだよ。兄者?」
「考えてもみろ。マサイの野郎も大概だがアレでも一応、副ギルドマスターだ。冒険者ギルド内にしられりゃ、とばっちりで俺たちの活動にも影響が出るだろうさ。」
「そうだな…干される…な。」
「ああ。それに最近、碌な仕事しか無ぇしな。割が良いかと思えば、こんな仕事ばかりだ。ったく」
「…。」
「ガキも食わせて行かにゃならんからなあ。」
「切実だな!おい!」
「という訳さ、まぁ、無理に…とは言わないがな。それに俺ら、護衛業が主だろう?ヴァートリー商会にも関わってるようだし、仕事もありそうじゃん。それに傘下にはいりゃ、装備くらいは安く卸してくれるだろうさ。そうすりゃ安全性もぐっと増すってなもんだ。」
「なるほどな…ふむ。」
「…でもそれだけじゃないだろう?パレアセア?」
「うん?…ああ。おそらくあの若いの。”勇者”様だ。」
「やはりな…」
「おいおい。ドゥラティ、信じるのかよ?」
「ま、”勇者”云々は置いておいてもバケモノぞろいだ。後ろのデカいのも獣人じゃねぇ”魔族”だろうな。気配がまるきり違う…」
「…あんな相手に碌に調査もしねぇで手出すなんてな。子爵殿もどのみち終わりだろうな。」
「ああ。エレン殿のおかげだな。命拾い出来たわ…」
「ははははは。まぁなぁ。(…そうなる前に逃げるがね…。うん?向こうも話はついたのか?さてと売り込みに行こうかね。)」 <完>




