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”蒼”のワイン輸送隊 6

 起床。昨日は肉を多く摂りすぎたが、胸焼け等はないな。まさに快調だ。隊員達にはもう一泊の予定を告げ、自由とした。

 「カイア殿も自由にしたいでしょうが…」

  「いや、俺は副官だからな。気になさるな。それにすぐに終わるだろう?」

 「あら、私にはお声がけがありませんの?」

 「ご苦労様です。」

 「あら。」

 「「…」」

 「冗談ですわ。わかっていますよ。」

 …女性は何処に爆弾があるかわからないものな…ミツル殿の常套句、さわらぬ神になんとやらだ。


 商会の荷下ろしを終え、再び商業ギルドへ。今朝方、ギルド長からナディア殿に面会の申し入れがあったからだ。

 死んだと思われていた商人。いろいろ話もあろうと。俺たちは挨拶のみとした。決して長い話が苦手とか、ちんぷんかんぷんな商売の話しが嫌なわけではない…少々眠くなる程度だ。

 

 暇つぶしに掲示板を見ていく。此処も護衛が不足してるようだな。獣人のパーティも目に付くがまだまだ不足というところか。…それと、結構な数の”ザルバック村”への買い付け依頼なんかもある。バジリスクの革?直売はしていないのだが…刀剣類の購入もあるな…ドワーフたちが撤収した影響だろう…ゴルディア公…貴公の残した影響決して小さいものではないぞ。

 

 長いな…受付嬢も気を利かせてくれて茶を振舞ってくれた。うむ。見事な御手前で。美味い。

 「隊長、お待たせ!ごめんねぇ!爺様、話しが長くて長くて。長命種故の?油断すると二周目に。」

 「エルフ族だったな…お疲れ様。それじゃ行こうか。」

 「はい。じゃ、市でも覗き…あら。ヤルルちゃん?お久しぶり。良い子にしてる?」

 カウンターの中をチョロチョロ動いていた少女…ん?少女にしてはこんなところでと思ったが…エルフ族か?

  「いらっしゃいませ?お客様?失礼ですが私と面識在りましたでしょうか?」

 「あら!びっくり!ちゃんとしてるのねぇ。脱走犯はもうやめたの?」

  「し、失礼ですが…!…あ!アメリアさん?…うそ…」

 「やっと気が付いた?まぁ、ちょこっと変わっちゃったけどぉ?」

  「はぁ?ちょっとぉ~?そんなにおっぱい大きくなかったでしょ!髪の色だって…でも…良かったぁ…生きてたんだね…」

 「ええ。色々あったけどねぇ。」

  「私、絶対生きてると思ってたんだ!G並みにしつこいからねぇアメリアさんって!」

 「失礼ねぇ…あ、この子、ギルマスの…孫?…子孫ね。」

 すげぇな…長命種!子孫…ね。

  「ヤルルですよろしくお願いします。」

 「ザックだ。よろしく。」

  「カイアだ」

 「じゃ、ナディア殿そろそろ。」

 「ええ。また寄らせてもらうわ。元気でね。」

  「うん…あれ?ヴァートリー?」

 「ええ。関連企業みたいな。”蒼”隊よ。ヨロシクね。」

  「はい。じゃ!今度来たら、連れて行ってよ。爺ちゃん説得しておくから!」

 「…説得できたらね。」

  「大丈夫。私より小さい…孫?出来たから。」

 「あらまぁ。じゃあがんばってね。」


 「いやはや…長命種故のといったところでしょうか。」

 「ふふふ。普通はハーフ、クォーターとどんどん薄まっていくのだけれども、あそこは有名な前宰相ウィン様だから、エルフ族の嫁婿にも事欠かないらしいわ。」

 「はぁ?絵本に出てくる、大宰相閣下か?そのお孫さんか何かかい?」

 「あれ、本人よ。」

 「マジか…俺なんかより見掛け全然若いぞ…恐るべし」

 「ハイエルフ?まぁ、一個上の存在よ。1000年以上生きてるっていうし…」

  「すごいな…」

 「ああ…」

 ディフェンじゃ見かけないものな…しかし1000年…かぁ。


 その夜はゼル殿と合流。ゼル殿お勧めの少々怪しい飲み屋になど行かず…直接!…ミツル殿…すまん!

 

 翌朝、屋台で朝食を摂り、集合場所へ。

  「隊長お楽しみで。」

  「”使徒”様に言いつけようぜ!くくく」

  「そりゃ、不味いだろう…隊長、呪殺されるぞ…」

 「おいおい…まぁ、なんだ…こほん。出立!」

 「男ってねぇ」

 「こっそり萎える薬でも盛りますぅ?」

 ひぃ!ま!待ってくれ!まだ独身なんだぁ!

 …。

 

 街道も順調。盗賊団の影も無し。無事にザルバック村へと到着。

 翌日には、アヌヴィアトのギルド、商会へと納品し、依頼達成となった。引き続き小口配送の依頼を請ける。周辺の町や村に。

 勇者様なしでのワイン輸送。その試験運用も上々の結果に。製品の質、もちろん、ロスなどは一切ない。勇者便と何ら遜色ない、十分な検証もできただろう。今はエキドレアからの輸送だが、後はこの国からの発信へとスライドしていくだろう。ますます需要が増えるというものだ。

 今後もこの輸送方法はうちの目玉として受け継がれていくことだろう。    <完>



 

 おまけ。とんと、劇中に登場しなかったローランディアさん。何をしていたかといえば…

 

 「動くな…」

 此方も一本入った裏通り。しかも深夜。人の通りも無い。もっともこんな時間に出歩くのなんざ、襲ってくれと言ってるようなものだ。しかも女一人であればなおのこと…

 

 ”ちくり”女の右の脇腹にナイフを当てる大柄な男。

 「ひぃ!」

  「そそられるぜぇ。くくく…こんなところを一人で出歩くなんてなぁ…」 

 「こ、こんなことをして!衛兵に!訴え”ちく!”…ひっ!」

  「殺しても良いんだぜぇ~。俺はなぁ、これでももう、一人やってんだ。」

 「た…助けてください…助けて…」

  「あんたみたいな別嬪がこんなところにいるのがいけねぇんだよぉ~ほぅ!いい乳してんなぁ~、た、たまんねぇ!」

 空いた左手は大忙しだ…

  「こっちこい!」

 「い、いや…」

 …深夜の裏通り…そんな危険な場所で見られる風景…


 三日後、近所の者が異臭に気づき、変死体が発見される。

 「なんだこれは…」

 人の仕業…だろうな。遺体の特異性により、診療所の医師達に協力を仰ぐ。医者の仕業と。

 その遺体…いや、残骸は、腹は一旦、裂かれ臓器の一切合切を抜かれ、それから綺麗に縫い合わされていた。

 頭部に至っては、頭蓋骨が奇麗に分解され、脳も取り出され近くに置いてあり、眼球、舌、歯の一本に至るまで持ち去られていた。そして口には、この男の物と思われる男根がねじ込んであった。更に体内には血の一滴すら。その後の調べで手足の腱も奇麗さっぱり抜き取られていたという。

 立ち会った診療所の医師達も首を傾げる…素材として持って行ったのか?と?まさか、食う?想像の域を出ない。その時、一人の老医師の

  「こりゃ、解剖じゃぁ。”血濡の手術刀メス蜘蛛”がご帰還されたか…の」

 「ん?老師なんと?」

  「なんでもないわぃ…なんでも…のぉ。」

 妙に引っかかる老医師の言葉。”血濡の雌蜘蛛”…?

 

  

 薄暗く、酔いつぶれたものが道端に転がり、その懐を漁る者。街灯の下にはやけに露出の多い女が屯っている、そう、繁華街の一本入った裏通り。その一角。

  「ひゅ~スゲェいい乳してんなぁ!」

  「良いケツしてんなぁ!」

  「ひゅ~~~♪」

 「あらぁ、ありがとうぅ。お兄さんたちもぉ血の気が多くて素敵だわぁ。」

 ギュッ♡と双丘を寄せる女…

  「ふぅ、ふぅ、た…たまんねぇ…ごきゅり」

  「うはぁ!良いねぇ!おねぇちゃん!痺れるぅ~」

 「ちょっと…だけどぉ。いいかしらぁ。貴方達のぉ~体液♡」

 そう言いながら女の視線は膨らんだ男たちの股間に。

  「うっひょぉ~!いっくらでも!」

  「た、たまんねぇ…この香り…ねぇちゃん良い匂いだなぁ」

  「ああ!…頭の芯が痺れ…れ?れれれ?(あれ?あれれ?)」

  「あぶ?あぶしびび…ほびぃびびひびへびほ!(あれ?本当に、本当にし、痺れるぞ!)」

  「あぐ?びび?びひれへ?なひひたんふぁ!ほぉひぃ!(おい!おま、お前!何した!おい!)」

 崩れ落ちる3人の男たち。

 「あらぁ、やっと効いたの?本当に元気で良いわぁ。あなた達、強姦やら強盗なんかで手配されてるわよぉ。私のお小遣いになってもらうわぁ。ちょっと使い過ぎちゃって♡」

  「はぅ…ひほび!」

  「びひびぃ…」

 「じゃ、お役人さん来る前にぃ。研究材料頂こうかしらぁ。」

 マジックバッグから腕くらい太いガラス製のシリンダーをだし、台の上にこれ見よがしに並べる。

  {…。}…ひっほぉ!」

 「じゃぁ、貴方から…あらまぁ。まだ萎え無いのぉ。ふふふ。なら、3本は逝けるかなぁっと!」

 男の腕に…”ぷす””ちゅぅぅぅぅうう~~~”    <完>

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