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プロスに到着

 朝早くに町を出発。国境目指して走り抜ける。

 「で、頭領?馬車やら馬は?」

 「ん?先に出てるはずだぞ。式の時くらいに出てるから十分到着してると思うよ。今回無理なら馬だけでも預けて来ようと思ってる。そうすりゃ次は楽で良いだろう?」

 「そうだな。楽しみだなぁ。」

 「もう歩けるくらいまで回復してると思う?」

 「どうだろうなぁ。ただ、芯の強い子だからね。大丈夫だと思うよ。」

 「そうだな。」

  「トワ様。ご苦労様です。」

 「お!ジュセアかお前の小隊が付くのか?いやそいつは俺のセリフだ。俺の我がままだからな。すまないな。ご苦労!」

 「この前の…世話になったね。よろしく」

  「いえ…”使徒”様よろしくお願いします。この先に盗賊団を確認しています。少々森に入ったところで我々のルートには干渉しませんが…いかがしましょう。」

 「…折角落ち着いたのにここら荒らされるのも気分が悪い。復路で襲ってくるかもしれんし。今、狩ってしまおう。いいかい?頭領?」

 「ああ、賛成だ。盗賊は駆逐だ!よし!ジュセア先導頼む!」

  「はっ!」

 

 「こいつ等か…冒険者崩れなんだろうな。」

 Y字分岐の片方。おいら達の本来ルートじゃない方に来ている。スタンダードに木を倒して道をふさぐ。ちらほらと姿も見えるが一応確認の為に倒木付近まで歩を進める。

 ”ひゅん!”

 矢!敵認定!

 カイエンが飛来する矢を”はし”と捕える。そんなヒョロ矢はカイエンには届かない。

 「よし!殲滅しろ!敵だ!」

 トワ君の合図とともに「うぎゃあ!」「ぎぃ」「うがぁ!」林の中から呻き声が。

  「ふん!」

 カイエンどんの投石が木の上にいた賊を地面に落とす…頭に当てんなよ…ザクロのように…。

 ”がさり”とハゲ=ボス?と二人の賊が躍り出てきた。

  「何しやがる!」

 …アホだこいつら…

 「はぁ?バカか?こいつ。お前ら賊だろう?話すのも面倒だ。やれ!」

  {応!}”びゅしゅ””ぎゅしゅ”

  「ぎげ」”どっしゅ”「がは!」

  「ちょ!ちょっと待てよぉ!待ってくれぇ!話を!」

 足下に転がった二つの部下の首が恨めし気にハゲを見つめる…

 「待ってやる。で?なんだ?」

  「た、助けて…」

 おいおい。矢を放った時点でお終いだよ。足元の部下も浮かばれまい…

 「無理だな。お前にできることは自棄になってかかってきて死ぬか、アジトまで案内して死ぬか…どっちかじゃね?」

  「ん、なぁ、なめやがって!」

 「おっと。かかってきても殺さない…手足を切ってでも案内させる。どちらにしろ死ぬんだ、痛い目に遭わなくても良いだろう?」

  「…。」

 「どうすんだ?その剣?ああ~なんだ、右手、手首から先、飛ばしてほしいのか?」

  ”がらん”

  「あ、案内します…」

 「トワ君、マフィアのボスみたいだのぉ。」

 「こいつ等には一切遠慮はしない。一匹残らず皆殺しだな。生きる価値も無い。」

  「そ、そんなぁ。」

 「盗賊だろう?さて、剥いてくか。身分証があればまとめておいてくれ。死体はおっさんヨロ~」

 「よろ~じゃないわ!じゃんけん!…最初はグー!じゃんけん…」…。

 

 ちっ。皆、容赦なく首を飛ばしよる。首が繋がったままのは…カイエンどんが投石で割った奴だけだ。中身無いけど…うぇえ。ぱっぱと”収納”へ。

 じゃんけん?負けたけど。なにか?

 そうそう、ルカちゃん、ルカちゃん。ここに導いてほしい魂が…。

 

 移動式アジトといいましょうか…幌馬車だ。その車輪に寄り掛かり居眠り中の見張り一人。その周りには女ものの服?が散乱している。娼婦でも来てるのか…まぁいい。

 「おい。」

  「ん?あ?お頭ぁ?そいつ”びゅゅ”…”ごとと”」

 速攻ジュセアに首を飛ばされる。しかしナイフ一丁で…ナイフの出来と獣人の膂力がなせる業か?

 「ここがアジトねぇ。検めさせてもらうか。」

  「っひ…ひでぇ…」

  「あら。貴方のお相手は私よ?」

 ルカちゃんの右手が肘までハゲの胸に吸い込まれる。

  「へ?へぐごごごごくごくごごおおおぉ!おぐおぐ」

 抵抗らしい抵抗なく大粒の涙を落しされるがままのハゲ…何時も不思議に思う…抵抗する奴はいない…己の”罪”にでも向き合ってるのだろうか…そのことを知るモノはそこの少女だけ…

 「…中に女居るかもしれん。注意な。」

  「いないみたいよ。呼んで楽しんだ後殺したっぽい。正真正銘の屑ね。こいつら。」

 ちっ。

 「”収納”。屑だな。じゃ先を急ごうか。おっさん?」

 「ああ…」

 言葉もないな。

 

 Y字路まで戻り正規の街道を走る。グロソは飛ばして国境に。まだあの辺りは混沌としてるだろう。

 「おっさん、今の所、避難してくる人達は見ないな。」

 「落ち着いたか、国境で止められているか…ジュセア、斥候隊は何処まで?」

  「はい。ディフェンとの国境の向こう側、獣人達には声をかけそのまま北上、魔の森へ案内しております。トラヴィスからの難民はおりません。」

 「すごいな。皆にちゃんと休暇を取るようにな。」

  「ありがたいですが…同胞の命。落ち着くまでは…我らの働きで救える数も変わりましょう。」

 「…そうだな。頑張れと…皆に伝えてくれ!」

  「はっ!トワ様!」

 さすがだよ…”勇者”様。

  

 その後野営を2日、国境も無事通過。盗賊連中も先の一件のみ。順調にブロスへと到着した。

 到着と同時に先行部隊と連絡を取り、情報交換、伯爵家には明日診察に行くと伺いを立てておく。流石に今日の今日って訳にゃ行かないものなぁ。

 バトルホースたちは伯爵家の牧場にいるそうだ。あとで肉でも食わすか。

 日程としては、明日診断。ガラクタの買い付けに王都フルミに4~5日。出られるようならその間に準備をしてもらおうか。

 

 まだ飲むには時間もあるし、もう一軒の診察を先にしておこう。

 こじんまりした店舗。ダンジョン便利グッズ専門店だ。

 ”がらんからんから”

 「よっと!スタッキーさん、ご無沙汰。」

  「これはミッツ様!お待ちしていました。」

  「これは、ミッツ様…」

 人懐こい顔と…顔面凶器の強面がお出迎え。

 「元気そうだな。ドネリー殿も。じゃ、早速、足の様子を診ようかね。そこに座ってくれ。」

  「へぇ?もう問題ないかと思いますが?」

 その場で屈伸、ぴょんぴょん跳ねるスタッキー殿…可愛くないぞ!おっさんだからな!

 「念のためにね。どれ、”鑑定”…ふむ。大丈夫そうだな…もう片方の足にも負担は無し…か。流石だな…ちと触るぞ…」

 魔力流しじゃ!”びくびくびくん!”

  「おふぅんおふ!おふ!おふぅ!」

 うむ…いい反応だ。クスリ。何時もよか多めに…

 「おっさん…遊んでるべ…」

 んなぁ!

 「…うん。問題なし。完全に取り戻したようだね。」

  「ふぅ、あ、ありがとうございます。おい!お~い!」

  「なにさぁ?アンタ?」

 奥からスレンダーな…豹人族かな?気の強そうなご婦人が出てきた。

  「ミッツ様、女房のフランでさ。後、息子が一人。」

  「あなた様がスタッキーに新しい足をくださったのですね…感謝を…」

 そういって、足の甲に額を付ける。獣人族最上の礼。本当は途中で止めて立たせたいのだが、アルスやリオン…いや、獣人達に”受ける”ように言われている…。どうしても受けたくなけりゃ別だと言われちゃうとなぁ。落ち着かないわい。…足臭くない?

 「さぁ、顔を上げて。これも何かの縁。っと、家族そろっての移住…で良いんだよな?」

  「ええ。勿論で。フランの兄弟の者、それと、小さな食堂をやってる一家がついて来たいと言っているんですが…どうでしょう。」

 「う~ん。鑑定受けてもらって、問題無けりゃ良いけど。なぁ?頭領?」

 「ああ。構わないぞ。だけど、移動は別になるなぁ。俺たち、急ぎだからなぁ。マールにも無理はさせられないしなぁ」

  「マール…マールディアお嬢様の事でしょうか?最近噂で床から起きられるようになったと…そうですか…ミッツ様が…」

  「フラン?お嬢様?」

  「なんだい、知らないのかい?寝たきりだったお嬢様が最近出歩いてらっしゃられると。最初は亡くなって、ゴーストにおなりになったのかと騒がれたんだよ。」

 「…ゴースト…なるほどな…ぱっと見、痩せてるし…白いもんな…」

 「おいおい…トワ君…。でも面白いな…マールちゃんに教えてやるか。ええ、私たちが治しました。ちゃんと本人ですよ。私たちの町に留学に来る事になっています。」

  「それはめでたいね!あの立派な伯爵さまも不幸が続いたからね。」

 「そんなわけで、病み上がりのお嬢様は負担の無いように急いで、ということになっていますので。」

 「新たに来る連中はこれから荷造りだろう?一週間後くらいか?迎えによこすよ。先に鑑定しちまおうか。」

 スタッキー夫妻に案内され、お宅訪問。どのご家族も問題は無し。小さな食堂はすでに店じまいしていた。なんでも多くの冒険者が居なくなったことで資金繰りが上手く回らなくなったという。幸い、貯蓄があったのですぐにどうこうという訳ではなかったが、先行きに目途が付いていなかったそうだ。その時にフランさんから誘われたという。渡りに船ってわけだ。お味?まぁまぁの繁盛店だったそうだよ。うち、まだまだ食堂が少ないからなぁ助かるよ。独身連中も多いしね!


  店に戻ると、ドネリーさんが二人?増えた?

  「み、ミッツ様…この者も連れていきたいのだが…」

 よく見ると同種のご婦人?ドネリーさん比較で一回り小さいくらいだが…おっかねぇ!

  「あら、リリュウ。ドネリー、ちゃんと伝えたのかい?」

  「う、うむ…」

 顔を赤くしてうつむく強面の巨人…ぷくす。なるほどねぇ

 「お嬢さん?鑑定しても?」

  「はい…ミッツ様、お願いします。」

 あらら!凄いギャップ!見た目は一撃でバジの首すら落とせそうなのに!可愛い御声だこと。グリズリー系のお顔でちょいと損してるなぁ。中身は乙女かもしれない!

 「鑑定…問題ないね。構わないよ。」

  {ありがとうございます}

 う~ん…ドネリー殿も結構シャイなのかもわからん…。

 迎えをよこす約束をしてその日は別れた。夜は【土竜亭】で先行隊の労をねぎらう。勿論丸焼きで一杯だ。あまり派手にならぬようにな。美味い物を食い、旅の疲れを癒す。明日に備えてね。


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